ゼロから千まで

三旨加泉

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「ゼロから千まで」47話

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「ゼロから千まで」47話


「千歳ちゃん。どこ触られたの?ここ?」
 百合愛は千歳の太ももを静かに撫で始める。その生温かさに千歳は身を捩る。さっきの口づけに動揺してるからか上手く身体を動かせなかった。
「可哀想に。汚されて。」
「汚れてないよ?」
 千歳の言葉など耳に入っていないかのように百合愛は口を開いた。
「あのね。あの雨の日、千歳ちゃんが私を助けてくれて本当に嬉しかったの。」
 黙り込んだ千歳の顔を百合愛は覗き込む。
「毎日のようにお母さんがお金の為に男の人を連れて来てね。相手するのが嫌だったの。だからあの日は逃げたんだ。そうしたら、千歳ちゃんに会えた。」
 パアッと明るくなった百合愛の顔はまるで目の前に女神でもいるかのような表情だった。
「私、千歳ちゃんには、千歳ちゃんだけは、酷い目に合わないように私が守らなくちゃって、そう思ったの。」
「百合愛。」
 千歳が名前を呼ぶと百合愛は嬉しそうに千歳の胸に顔を埋めた。
「だから、あの時、私を利用してた男を利用してやろうと思ったの。男の処理は男にやらせれば良いのよ。」
「お、男の処理って?」
 恐る恐る訊ねた千歳の顔を見て百合愛は微笑む。いつもの微笑みとは違い、彼女の唇は綺麗に弧を描いていた。
「だって、このままだと千歳ちゃんが霧崎零一に汚されちゃうでしょ?だから、止めないと。」
「れ、れいちゃんを?」
 百合愛は千歳の声が震えているのに気づいているのか気づいていないのか、そっと千歳の背中に手を回し摩る。
「私ずっと気づいていたの。あの男がずっと千歳ちゃんを見ていたことを。このままだと千歳ちゃんが危ないって。」
「れいちゃん、悪い人じゃないよ。」
「そんなことないわ。」
 はっきり百合愛は千歳の言葉を否定すると、千歳のお尻から太ももにかけて自分の手を滑らせた。擽ったいのと恐怖で触られた箇所が粟立つ。
「ベタベタ触られたんでしょう?あぁ、ごめんなさい。もっと早く助けることができたら」
 まるで零一を悪者扱いする百合愛に次第に千歳は苛立ちを覚え始めた。
「うち、れいちゃんと手を握ったりするの嫌いじゃないよ。」
 そう言った途端、徐々に掴まれていた千歳の背中に百合愛の爪が食い込む。驚きと痛みで声を上げると、百合愛は必死に声を張り上げた。
「ダメだよ、千歳ちゃん!そっちにいっちゃダメ!!千歳ちゃんはこのままでいいの!ずっと!このまま!」
 あまりにも強い力で千歳が百合愛の腕を振り解けないまま、どんどん後ろに押されていく。百合愛の華奢な腕からは想像もつかない力が勢い良く千歳にのしかかる。
 このまま押し倒されそうだと思ったその時、馴染みのある声が上から注がれた。

「そうはいかないよ。」


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