設計士 建山

如月 睦月

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箱 4

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バールを手に取って壁を覆っている板を剥がす建山。

その仕事は丁寧かつ慎重だ。

外された板を礒志田が一ヶ所に集める。



『礒志田さん、釘に気を付けてくださいね、踏まないように』



『クビ!?』『クギです』



一枚剥がすとマスクをしているのに顔を背けたくなるような埃が舞う。



正面から見て左の壁、正面の壁、右の壁を数枚ずつ剥がすと、コンクリートで塗り固められた壁面が顔を覗かせている。

その壁面に建山はマイナスドライバーを当ててハンマーでコンコンと小気味よく叩き、削り出す作業を開始した。



『礒志田さん、この削りだしたクズを左と書いた袋に入れてください』



『了解です、あ、痛い、降ってきた』



『真下に居るからですよ』



『わざとですよね?』『もちろんです』



『骨とかでてきませんよねぇ建山さん』



『可能性はあります、むしろ疑ってますよ私は』



『神林さん…ですか』



『単純に考えると疑わしくは家族ってのが無難なところですよね』



『両親と妹を殺したのが…息子…ならなぜ私に探せと依頼を?』



『そこだよねぇ…』



-------------------------------------------------------



ジップロックにランダムに削りだしたコンクリートの破片を詰め込み終わると外に出てマスクを外し、一服することにした。虫が嫌いな建山は草を避けて道まで出ると、縁石に腰かけてマルボロメンソールに火をつける。くわえたばこで歩きながら建山に近づき、隣に座ると口を開いた。



『建山さん、あの削り出しって…』



『ええ、鑑識に回してもらえますか?警察に顔きくでしょう?』



『成分調査ですね』



『ええ、火葬場の臭いが気になるんで』



『埋め込まれている…ってことでしゅか』



『可能性の話ですが、遺体を燃やして骨も粉にしてコンクリートに混ぜて壁にして蓋をしたのではないかと』



『なななんのためにでしゅかね』



『それは私にはわからないですよ、宗教的なモノかもしれませんし、家族間のいざこざって言うのか怨恨とかそう言うモノなのか知る由もないってところですね』



『またとんでもない事件になりそうでしゅね』



『礒志田さん、神林家が入信していた宗教を少し調べる事は可能ですか?』



『えー!怖いから振れないで居たのにしらべなきゃだめれしゅか!』



『興奮しないで下さいよ、ちょっと調べるだけですよ、総本山に行かなくても警察関係の資料とか色々手段はあるじゃないですか』



『あ、そうですよね、えへ、そう言う事なら、ふへへ』



『わかりやすいですね礒志田さん』



-------------------------------------------------------



【数日後】



朝のルーティンを事務所のチャイムで壊される建山。

一気に気分が悪くなる、なぜならチャイムが2回鳴ったからである。

2回鳴らすのは9割以上の確率で礒志田だ。



『どうぞ』



どうぞの「ぞ」で既にドアを開けて入って来た礒志田。



『おはようございます建山さん』



『あぁ』



『そんな態度取らないで下さいよ~色々情報があるんですよ』



『あーそうでしたね、どうぞ』



『なんだか盛り上がらないなー!もうちょっとこう…まぁいいか、まず宗教の件ですけど、宗教名は「達磨様」だそうです』



『達磨?告様とリンクしますね』



『達磨様は手足がない、だからこそ心が豊かだと言うのが信念らしくてですね』



『で、何か話は聞けましたか神林さんの』



『それがですね、達磨様の上層部6人が行方不明になったとかで、任意解散してるんですよ、それを表には出してないんですけどね、なのでもと信者から聞き出しました』



『やりますね礒志田さん、やればできるじゃないですか』



『いつもやってないみたいに言わないで下さい、それでですね、神林亭の倉庫の壁の成分調査結果なんですけど、驚いて下さいね』



『いや、驚くの限定かよ!』



『少なくとも8人のDNAが検出されたそうで、流石に事件性があるって事でもう警察の捜査が入るそうです。神林さんの息子さんの所にも警察行きますねきっと。』



『ってことは終わりですか?』



『そうなりますね、前金で貰ってるので良いんですけど。』



『いやお金の問題ではなく、釈然としないですねぇ真実が知りたいです』



-------------------------------------------------------



【それから数週間後】



モーニングルーティンが終わり、テレビを見ながら珈琲を飲む建山の目に、その情報が飛び込んでくるのは早かった。



『殺害した8名を燃やし、骨も灰も粉末にして倉庫の壁に練り込んだ事件、通称「人柱事件」についての続報が入りました、任意同行を求められていた神林 誠二27歳が8名の殺害を認め、状況は一転、逮捕となりました』



『あ、やっぱりか』



そのタイミングで礒志田から着信があった。



『テレビ見てましたか?ワイドショーであの事件やってますね』



『ええ、見てました、ワイドショーでは語られない部分を詳しく知りたいですね』



『だと思ってましたよ建山さん!私の依頼人の神林誠二ですけどね、妹を溺愛していたそうなんですよ、まぁ恋愛感情じゃなくって、妹として本当に可愛がっていたそうなんです、いいお兄ちゃんだったみたいで、近所でも兄妹で遊ぶ姿がよく目撃されてたみたいです、10歳違いなのでそれはそれは可愛い妹だったみたいです。』



『あぁ、まぁ兄弟愛ってやつですね、無しじゃないですよね』



『はい、で、妹の15歳の誕生日の日、達磨様の教祖と側近5人が神林家にやってきて、あの倉庫で告様を作ったそうなんですよ、達磨様に入信していない兄の誠二は部屋にいたんですが、気になって倉庫を覗いて儀式を見てしまったそうなんです。』



『あーそれでか…ショックだっただろうなぁ』



『はい、激怒超えて激昂した誠二がその場にあった工具で8人を殺したってわけです、多分バールか何かだと思いますけどね。』



『で、多分バラバラにして、燃やして灰にして、残った骨を粉にして…何度か山奥にでも運んでやったんですかね、凄い労力だったでしょうね、憎しみとか復讐とかそう言う思いも後押ししたのでしょうかね』



『そうですね、それから2年後が今というわけです』



『でも礒志田さん、妹さんはどうしたんでしょうか、何か情報ありますか?』



『それが誠二の部屋にもその形跡がなかったらしくてですね…残念ながら情報はないんですよ』



『倉庫に確かに引きずった痕跡があったんですけどね』



【ピンポーン♪】『あ、ちょっと待ってくださいね…』



手に持った礒志田のスマホに礒志田の音声が聞こえて来た、スピーカーに当てる方の耳に全神経を集中する建山。




『ぼそぼそ…え?あ、はい…はい、ええ、え?荷物?…えーっと誰からですか?神林誠二!?え?かんばやしせいじ!?何が届いてるんですか?』



『えーっと伝票にはダルマと書いてますよ、箱に入ってると思います』



『え!?ダルマ!?箱?え?…』



【ガチャガチャ】【ゴトっ】



『建山さん!に!荷物が届きました!だ、だ、だ、ダルマって書いてます!箱に入ってるみたいです、これってまさか…』



『・・・・・・』
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