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第十二章 新たな命
5 仲間
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「お、オヨツギって、そりゃ……」
つまりそれは、自分とエルケニヒの子ということか?
(話が飛躍しすぎじゃね……?)
しかもつい最近結婚したばかりだというのに。
頭の中が混乱していて、リョウマは二の句が継げなくなった。
そうするうちにも、ケントはどんどん機嫌が悪くなっている。眉間に深い皺を刻んで、じっとこちらを睨み据えているのだ。
「大体っ、おかしいだろ? 男のお前を王配にしといて、なにが『お世継ぎ』だって言うんだよ。男じゃ子どもは産めないんだから、どうせ次は女を入れるってんだろ? だったら最初からリョウマを王配になんかするなよ! 変なんだよっ、この国は!」
「あ。いや、そーじゃないんだよケント」
これは説明が必要そうだ。
「俺も最初はそう思ってたよ。でもどうやらこっちじゃ、すんげえ医療が発達してるとかでさー。なんか知んねーけど、男同士でも女同士でも子どもが作れるんだってよ。びっくりだろ?」
「なんだって? 本当か」ケントは心底驚いた顔になった。
「マジマジ。俺もはじめて聞いたときゃあ驚いたっつーの。なんか、男同士なら男の子も女の子もできるけど、女同士だと女の子だけになる~とかは聞いたけど」
「へえ……」
ケントはわかったようなわからないような難しい顔になって考え込んだ。
「ということはつまり、今後、子どもを作ることになったとしても、魔王はお前以外のだれかを後宮に入れたりしないってことなのか?」
「さ、さあ? そりゃわかんねーけど。第一、子どものことなんてあいつと話したことねーし。別に子ども欲しいとか言ってるのも聞いたことねえからわかんねーわ」
「そ、そうか」
「そもそも、世襲制? とかいうのに興味なさそーなんだよな、アイツ」
「そうなのか?」
「別に自分の子どもに王位を継がせたいとか、考えてねーんじゃね? だから長年、子どもなんて作らなかったんじゃねえかなあ……わかんねーけど」
「ふーむ……」
ケントがまた後頭部をばりばり掻いた。どことなく、少し安心した表情にも見える。
「えっと。もしかして心配してくれたのか? 俺のこと」
「えっ。そりゃ……っていうかそんなの、当たり前だろうっ!」
「あ、うん。そうだよな」
言いながら、だんだん嬉しくなってきた。
ケントは今でも、リョウマのことを大事に思ってくれているのだろう。魔王との結婚のことは認めたうえで、それでもいつかリョウマが不幸になったり悲しい思いをしたりすることがないかと気にかけてくれているのだ。それはきっとケントだけでなく、ほかの《レンジャー》たちも同じだろう。
(ありがたいよな……。仲間って)
しみじみ思って、リョウマはにっこり笑った。
それを見たケントが「うっ」と少し身を引く。なぜ引くんだ、失礼な。
「な、なんだよっ」
「いや、うれしいなーと思って。ありがとな、ケント。心配してくれて」
「だからっ。そんなの、当たり前なんだよっ」
「うん。そーだな」
自分だって、《レンジャー》のみんなのことや村のみんなのことはずっと心配している。せっかくお互いの国で戦争みたいなこともおさまったのだし、これからは争いごともなく、みんなで幸せに生きていって欲しいと、心からそう願っている。
そのためにも、《第一保護区》に住む人間たちとの平和的な関係は大切だ。
「とりあえず、子どものことはまたあの野郎に訊いてみるわ。そんでいいか?」
「あ、ああ。とにかく、魔王の家臣たちに勝手なことばかり言わせとくんじゃないぞ。あいつら、人間の、しかも《レンジャー》のお前の子が王位を継ぐなんて~とかなんとか、かなり文句言ってやがったからな」
「あー……。なるほど」
そういうことを言いそうな人物の顔には、いくつか心当たりがある。
「でも、お前は王配。この国で魔王の次に高い位についたんだ。お前がイヤだって思ったことは、家臣どもがなんと言おうが絶対にやることなんかないんだからな? あんまりひどけりゃ反逆罪でとっつかまえちまえ」
「あははは!」
思わず声を立てて笑ってしまった。
「うん、わかってるよ。……ほんと、あんがとな。ケント」
「ふんっ」
ケントがぷいと向こうを向いた。その耳がちょっと赤くなっているのを、リョウマは見逃さなかった。
と、そのときちょうど小屋から出てきたサクヤがこちらに気づいて大きな声を出した。
「あんたたち! いつまでも、ふたりでコソコソなにやってんのよ。リョウマはもうそろそろ帰んなきゃ、あの魔王がまた嫉妬丸出しで、ドカスカやって来ちゃうでしょうが!」
「あっ、うん。今いく」
確かにあいつならやりかねない。
リョウマは苦笑しつつそっちへ手を振り返すと、ぽんとケントの肩を叩いた。
「んじゃ、またな。ケント」
「……ああ」
ケントはまだまだ説教し足りなさそうな顔だったが、ともあれリョウマはそのままダンパたちと飛行艇に乗り、魔王宮へ戻った。
つまりそれは、自分とエルケニヒの子ということか?
(話が飛躍しすぎじゃね……?)
しかもつい最近結婚したばかりだというのに。
頭の中が混乱していて、リョウマは二の句が継げなくなった。
そうするうちにも、ケントはどんどん機嫌が悪くなっている。眉間に深い皺を刻んで、じっとこちらを睨み据えているのだ。
「大体っ、おかしいだろ? 男のお前を王配にしといて、なにが『お世継ぎ』だって言うんだよ。男じゃ子どもは産めないんだから、どうせ次は女を入れるってんだろ? だったら最初からリョウマを王配になんかするなよ! 変なんだよっ、この国は!」
「あ。いや、そーじゃないんだよケント」
これは説明が必要そうだ。
「俺も最初はそう思ってたよ。でもどうやらこっちじゃ、すんげえ医療が発達してるとかでさー。なんか知んねーけど、男同士でも女同士でも子どもが作れるんだってよ。びっくりだろ?」
「なんだって? 本当か」ケントは心底驚いた顔になった。
「マジマジ。俺もはじめて聞いたときゃあ驚いたっつーの。なんか、男同士なら男の子も女の子もできるけど、女同士だと女の子だけになる~とかは聞いたけど」
「へえ……」
ケントはわかったようなわからないような難しい顔になって考え込んだ。
「ということはつまり、今後、子どもを作ることになったとしても、魔王はお前以外のだれかを後宮に入れたりしないってことなのか?」
「さ、さあ? そりゃわかんねーけど。第一、子どものことなんてあいつと話したことねーし。別に子ども欲しいとか言ってるのも聞いたことねえからわかんねーわ」
「そ、そうか」
「そもそも、世襲制? とかいうのに興味なさそーなんだよな、アイツ」
「そうなのか?」
「別に自分の子どもに王位を継がせたいとか、考えてねーんじゃね? だから長年、子どもなんて作らなかったんじゃねえかなあ……わかんねーけど」
「ふーむ……」
ケントがまた後頭部をばりばり掻いた。どことなく、少し安心した表情にも見える。
「えっと。もしかして心配してくれたのか? 俺のこと」
「えっ。そりゃ……っていうかそんなの、当たり前だろうっ!」
「あ、うん。そうだよな」
言いながら、だんだん嬉しくなってきた。
ケントは今でも、リョウマのことを大事に思ってくれているのだろう。魔王との結婚のことは認めたうえで、それでもいつかリョウマが不幸になったり悲しい思いをしたりすることがないかと気にかけてくれているのだ。それはきっとケントだけでなく、ほかの《レンジャー》たちも同じだろう。
(ありがたいよな……。仲間って)
しみじみ思って、リョウマはにっこり笑った。
それを見たケントが「うっ」と少し身を引く。なぜ引くんだ、失礼な。
「な、なんだよっ」
「いや、うれしいなーと思って。ありがとな、ケント。心配してくれて」
「だからっ。そんなの、当たり前なんだよっ」
「うん。そーだな」
自分だって、《レンジャー》のみんなのことや村のみんなのことはずっと心配している。せっかくお互いの国で戦争みたいなこともおさまったのだし、これからは争いごともなく、みんなで幸せに生きていって欲しいと、心からそう願っている。
そのためにも、《第一保護区》に住む人間たちとの平和的な関係は大切だ。
「とりあえず、子どものことはまたあの野郎に訊いてみるわ。そんでいいか?」
「あ、ああ。とにかく、魔王の家臣たちに勝手なことばかり言わせとくんじゃないぞ。あいつら、人間の、しかも《レンジャー》のお前の子が王位を継ぐなんて~とかなんとか、かなり文句言ってやがったからな」
「あー……。なるほど」
そういうことを言いそうな人物の顔には、いくつか心当たりがある。
「でも、お前は王配。この国で魔王の次に高い位についたんだ。お前がイヤだって思ったことは、家臣どもがなんと言おうが絶対にやることなんかないんだからな? あんまりひどけりゃ反逆罪でとっつかまえちまえ」
「あははは!」
思わず声を立てて笑ってしまった。
「うん、わかってるよ。……ほんと、あんがとな。ケント」
「ふんっ」
ケントがぷいと向こうを向いた。その耳がちょっと赤くなっているのを、リョウマは見逃さなかった。
と、そのときちょうど小屋から出てきたサクヤがこちらに気づいて大きな声を出した。
「あんたたち! いつまでも、ふたりでコソコソなにやってんのよ。リョウマはもうそろそろ帰んなきゃ、あの魔王がまた嫉妬丸出しで、ドカスカやって来ちゃうでしょうが!」
「あっ、うん。今いく」
確かにあいつならやりかねない。
リョウマは苦笑しつつそっちへ手を振り返すと、ぽんとケントの肩を叩いた。
「んじゃ、またな。ケント」
「……ああ」
ケントはまだまだ説教し足りなさそうな顔だったが、ともあれリョウマはそのままダンパたちと飛行艇に乗り、魔王宮へ戻った。
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