墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

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第十二章 新たな命

6 夕餉の席で

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「どうした、リョウマ。保護区で何かあったか」

 別に顔に出していたつもりはなかったのに、魔王はリョウマの顔を見るが早いかそう言った。
 お互いにあれこれあって、ようやく顔を合わせることができた夕餉の席である。
 テーブルそのものはごく大きなものだが、魔王が離れて食事をすることを嫌い、リョウマはいつも上座にいる魔王のすぐ隣の席に座っている。

「えーと。いや、別に……」

 大問題が持ち上がったとかいう話ではないのだから、これは本当だ。ただ、個人的に気になる案件だというだけで。
 そう思ってへらりと微妙な笑みを浮かべたリョウマと、その手許に残っているステーキの量をちらりと見て、魔王は目を細めた。

「結婚早々に隠し事か? それは悲しいな」
「かっ? 隠し事なんて、してねーよ!」
「ふむ」

 それには取り合わず、魔王は軽く自分の口元をナフキンで拭うと、リョウマの皿を自分の方へ引き寄せ、勝手にステーキをサイコロ状に切り分けはじめた。ごく手慣れたナイフさばきだ。一連の動きがあまりにもスムーズで、リョウマは阻止するタイミングを完全に失った。

「んなっ、なにすっ、もぐ、もぐ……」
「美味いか?」
「もっ、もも……」

 こくこくこく、と首の上下運動だけで「応」を表現する。実際ここの肉は、必死になって噛み切るまでもなく口の中でとろけていくほどの上物なのだ。味はもちろん最上級。

「よいからしっかり食せ。いつもならこのぐらいの肉、『うまい、うまい』と三皿はぺろりと平らげるそなたが一体どうした」
「も、もご、もごもごっ」

 失礼なことを言うなばっきゃろーと言いたかったが、口にいっぱいの肉を詰め込まれてろくに言葉にならない。仕方なく目だけで「ふざけんな!」と睨みつけたが、意外にも魔王は心からこちらを心配する目をしていたので、すぐにやめてしまった。

「顔色がよくないぞ。侍従長!」
「はっ」

 魔王が指を鳴らすと同時にガガノフが現れて、折り目正しい一礼をする。瞬間移動の魔法を使ったわけでもないのに、いつ見ても見事な早業だ。ほとんど芸術の域だと思う。

「シュルレを呼べ。その前に、料理長に言ってもう少し消化によいものを用意させよ」
「ははっ」
「いや、まっ……待ってよ! ほんとになんでもねーよっっ」

 この程度のことで、使用人の皆さんに要らぬ仕事を増やさないで欲しい。そうでなくても侍医のシュルレもかなり多忙な人──いやヘビだが。真っ白で巨大なヘビだが──だと聞いている。
 魔王はフォークを置くと、立ち上がってリョウマのすぐそばに片膝をついた。リョウマの膝に片手を乗せ、もう片方の手でリョウマの手をとり、甲に口づける。

「ひょえっ……?」
「気にかかることがあるならば、なんなりと申せ。いや、どうか話して聞かせてくれ。そなたの悩みは私の悩みぞ」
「え、えええっとお……」

 いきなりそんな甘々光線を発するな! まわりの使用人がみんな、期待に満ちた目で見つめてるじゃないか! いや、さすがにガガノフだけはいつも通りのしれっとした顔のままだが!

「あ、あとでいいか? ふ、二人きりのときが……いいし」
「もちろんだ」

 よかった、と吐息をついたら、巨体にも係わらず下からじっと見上げられる形になり「必ずだぞ」と念押しされた。

「わ、わ~ったよ……」

 周囲の人々が、あからさまでない程度に「がっかり」した《気》を放つのを感じて、リョウマはがくりと肩を落とした。
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