墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

文字の大きさ
179 / 227
第十二章 新たな命

7 寝室で

しおりを挟む

 というわけで。
 あらためてその夜の寝室にところは移る。

「それで。今度こそ聞かせてもらえるのだろうな? そなたの悩みを」
「う、う~んと……」

 寝台の上で、べつに強制されたわけではないが正座をした状態のリョウマ。その前に胡坐をかいて座っている魔王である。もちろん人払いはとっくに済ませ、ふたりきりの状態だ。カーテンも引かれ、さらに魔王がご丁寧にも、《防音》の防御魔法まで掛けるという念の入れようである。
 ここまでお膳立てが調ってしまうと、もう逃げ場がない。
 リョウマは観念した。

「えー……と。聞いたんだよ。だれからとは言わねーが。それは訊くなよ」
「承知した。それで」
「なんかさ、魔王国側のヨウジン? とか偉い家来のみなさん? とかが、噂してんのを聞いたんだってよ、結婚式のとき」
「なにをだ」
「だから……その」リョウマは組んだ手の人差し指同士を、なんとなくちょんちょんさせつつ言った。「俺たちの子どもが生まれるのか、とか、なんとか……」
「……なるほど」

 魔王はあっさりと事態を察してくれたらしい。腕組みをし、眉をひそめる。

「そうやってすぐに要らぬ詮索をする者にはいくらか心当たりがあるな。いずれ自分の立場を左右するかもしれぬ事案なのだから無理もないが」
「そーなの?」
「それはそうだ。前にも言ったかもしれぬが、私自身は魔王の立場を世襲制にする気はさらさらない。すでにダイダロスやトリーフォンなど、人望と実力のある者も育っている。わざわざそこへ、幼子を参入させる意味がない。むしろ幼いゆえに悪どい者どもに利用されぬとも限らぬしな」
「あ~……なるほど」

 子ども自身の幸せを考えれば、確かにそれは可哀想に思う。

「それともリョウマは、我らの子に後を継がせたいのか?」
「えっ? いいや! それはねーよ、別に」
「ふむ?」
 首と両手をぶんぶん振るリョウマを見返して、魔王は片眉をあげた。
「というかそれ以前に、われらの間の子を望んでくれているのか? そなたは」
「え、えーっと……」

 それは正直、具体的に考えてみたことがない。なにしろまだ結婚したばかりで、今の生活に慣れるだけでも精一杯なのだ。
 正直にそう言ったら、魔王は微笑んだ。

「そうか。……だが、子を作ることには嫌悪感はないということか?」
「あ。それは別に? だって結婚したんだし……こ、子どもがいるのって楽しいじゃん。俺には物心ついたころから親はいなかったけど、村じゃ、小さい子の世話なんかふつーにしてたし。子どもは嫌いじゃねーよ。むしろ好きだし」
「そうか」
「……あ、あとさ」

 と言いかけて、リョウマは目線を落とした。
 こういうことは、わざわざ言わないとわからないことだろうか。いや、こんなに幸せな時にわざわざ言わなくてもいいことかもしれない。そう思ったから、ずっと黙っていたことなのだが。
 逡巡しているリョウマをしばらく黙って待っていた魔王は、腕を伸ばしてリョウマの肩に手を置いた。昔はそんなこと思ったこともないのに、大きくて温かな手だと今は思う。この手があって自分に触れてくれることに、とんでもない安心感さえ覚えるようになってしまった。

「なんだ? 遠慮せず申してみよ」
「うん……。ええと。つ、作るならさ……子ども。早い方がいいのかな、って、思って」
「なぜだ?」
「だってさ──」

 言いかけて、ぐっと喉が詰まった。
 唇を噛みしめ、膝の上で拳をにぎる。

「……お、お前は長生きするんだろうけど。俺は……そこまでじゃないんだし」
「リョウマ」
 肩に置かれた手にぐっと力が入ったが、リョウマは言い続けた。
「そりゃ、俺だってなるべく頑張って長生きするけど。でも……子どもには、親がなるべく、長く一緒にいてやれる時間があったほうが……いいと、思う」
「…………」

 恐る恐る見上げると、夜用の暗い灯りの光に照らされて、魔王がなんとも言えない表情で自分を見つめているのが見えた。

「だからっ。言いたくなかったんだよ。結婚したばっかなのに、こんな……。でも」
 でも、これはきちんと言っておかねば。
「俺はさ。親の顔もしらねーじゃん。生まれてすぐに死んじまってさ。……だから、もしこれから先、親になることがあるんだったら、なるべく長くその子とは一緒にいてやりてえって、ずっと思ってたんだ」
「リョウマ……」
「お前は一緒にいてやれてもさ。俺は……そこまでは無理なんだからさ。だ、だったら……」
「少しでも早いほうがよい、と」

 魔王があとを引き取ってくれたので、リョウマはこくんとうなずいた。
 魔王は「うーん」としばらく考える様子だったが、両腕でリョウマを抱きしめてから言った。

「子のことは、またおいおい考えよう。その子がくだらぬ政争に巻き込まれぬよう、あれこれと準備も必要であろうしな。それに、早い方がよいとは申せ、それでも今は新婚の時期ではないか。私はできれば、もう少しそなたとのふたりきりの時間を楽しみたいと思うのだが」
「う、うん……」

 それはリョウマとて否やはない。
 魔王の広い背中におずおずと手を回すと、リョウマも男を抱きしめた。

「それは、俺もそうだから」
「まことに?」
「うん」
「それならよかった」

 魔王は嬉しそうににこっと笑うと、「では」とばかりにリョウマを押し倒した。軽い口づけが何度か落ちてきて、リョウマが少し唇を開いたタイミングで深いものに変わる。

「ん、……んく」

 前袷の夜着の下に手が忍び込んできて、太腿に這わされると、びくんと体が跳ねた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...