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第十四章 未来へ向かって
7 風の噂
しおりを挟む子どもたちはすくすく育っていったが、これまた不思議なことに、色目の同じ《レンジャー》たちと性格的な部分も似ていることが多いようだった。
第三子、黄金色のドラゴンとして生まれたゴールティは、人型になると女の子であることがわかり、正式名もそのままとされたが、《イエロー》サクヤを彷彿とさせるような非常に活発かつ気の強い少女へと成長した。武術に関する様々な技が得意で、ドラゴンへの変身も魔法の活用も比較的簡単に習得した。
第四子、桃色ドラゴンのロージーは、人型になるとおっとりした男の子になった。名前は正式にロジアスとされたが、兄弟のなかで最も穏やかで控えめな子だった。《ピンク》のハルトのように、控えめながらも頭の回転が速く、物事を冷静に見つめる観察眼を持ち、様々な分野の学問に興味を示して、しょっちゅう図書館にこもっているような少年となった。
そして第五子、黒色ドラゴンのオブシーは男児だった。正式名はオブシディオ。真面目で寡黙な少年で、慎重かつ優しさと誠意にあふれた子となった。武術全般を得意とし、特に《ブラック》コジロウを師範として、剣術には非常な興味と才能を示した。
「いやいやいや。ちょっと待ってよ……」
近頃は、これがリョウマの口癖になって久しい。
「もっともっと、みんなと野原で花をつんだり木登りして遊んだり、海辺で海水浴とかしたかったのに……」
なにしろ魔王の子どもたちの成長は早すぎるのだ。
自分はまだ二十代の前半であるにも係わらず、子どもたちはすくすく育ちまくって、長子ローティアスなどとっくに成人男子の風貌になってしまっているし、長女サファイラも絶世の美女かつ文武両道の才能あふれる淑女になっている。
ほかの子たちも同様で、あっというまに十代の見た目を備えるようになってしまった。
「みんなの成長が早すぎる! ほんと待って。俺、今にも置いてかれそう……!」
「なるほど。可愛らしい幼少のドラゴンの子がまだ欲しいと見える。それでは──」
「ストップストーップ! また『次の子を』とか言い出すつもりだろてめえ! そうは問屋が卸さねえんだぞクソ魔王っ」
「ははは。そなたはいつまでも口汚いなあ。いまや国母となったというのに」
「いや別に『母』じゃねーしっ。ってか、あんまり王子と王女を増やしすぎたら、国庫のほうが心配だっつの。こないだ、ちょっとガガノフにも言われたんだぜ? それぞれの子に結構な金がかかるんだろ? あんまり増やしちゃマズいじゃん」
「ほう?」
長椅子に寝そべって、腕に抱いたリョウマの髪を撫でていた魔王が、ふと手を止めた。
「これは感慨深い。かつて《レンジャー》として我が国と敵対していたそなたが、今や我が国の国庫のことまで心配してくれるとは」
「っておいっ。茶化してんじゃねーぞっっ」
「いやいや。これは本心だ。まことに感慨深いものがある」
それはまあ、確かにそうだが。
「それよりも。近頃、小耳に挟んだのだがな」
「ん?」
「その《レンジャー》にいた青二才。そなたに懸想していた坊主がいたであろう。あれがどうやら、近頃個人的にローティアスと仲良くなっていると聞くのだが。そなたの耳には入っておるか」
「えっ。ローティが、ケントと……?」
そういえば、教育機関の仕事で《保護区》に出向く際、ローティはしばしばリョウマに同行するのを望んだ。ほかの子どもたちも折に触れて《保護区》に伴い、人間たちと交流させることは多かったけれども、特にローティは好んでついてきたがっていたような気がする。単純に仕事そのものに興味があるからだと思っていたが、まさか別の意図があったのだろうか……?
「えっと……。まさか、だよな?」
「わからぬが、まあ恋愛は個人の自由ではある。ほかならぬ私自身がここまで勝手をさせてもらったわけだ。子らになにかを禁じられる立場ではないのだがな。だからこれは、単なる親としての心配よ」
「いやいやいや! 心配するのは当たり前だろ。ローティはまだ子どもじゃんっ!」
「……何度も言うが。我ら魔族、特に私の血をひくものたちは成長が非常に速い。ローティはすでに成人の年齢に達しておるぞ」
「ええっ? マジで……?」
「ああ。そろそろ成人の儀をおこなわねばと思っていたところだ」
「ええ~っ。じゃあ他の子も、また次々にバタバタ成人していくのか?」
「まあ、そうなるな」
「いやだあ~っ。もっともっと、みんなと遊びたいし可愛がりたいのにいいっ」
思わず髪をかきむしったら、ぎゅうっと抱きしめられ、額に口づけを落とされた。
「そなたが遊んで可愛がるのは、私だけにしてもらいたいものよ」
「はああ? なんでお前になるんだようっ」
「そうだな。そなたで遊んでそなたを可愛がるのは私の役目だったな、すまぬ」
「ちょっと待てい! 今、『で』っつったな『で』って! 俺で遊ぶだとう? てめこの、許さねえぞクソボケエ!」
ぽかぽかと魔王の胸板をゲンコツで殴っていたら、扉の外から護衛兵の声がした。
「両陛下に申し上げます。第一王子殿下、ローティアス殿下のお越しです」
「……お、おお?」
まさに「噂をすれば影」だった。
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