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第十四章 未来へ向かって
6 王女サファイラ
しおりを挟むそうして。
ローティの下に生まれてきたその子は、晴れて正式に「サファイラ」の名を与えられ、魔王の初めての王女として国民に広く知らしめられることになった。
リョウマにとってサファイラは、半分自分の遺伝子を受け継いでいるということがちょっと信じられないぐらいには美しい子だった。比較的おとなしく、生まれ持った品のようなものを備えていて、どこかきりりとした芯を感じる性格をしている。
でもやっぱり子どもは子ども。
もちろん彼女づきの専任の侍女たちがつけられているのだが、基本的に魔王やリョウマ、兄のローティがいる場所にいるのを好み、特に仕事中の魔王の膝の上に座っているのが大好きな少女になっていった。
一方のローティは、この美少女の妹にひたすらメロメロの状態で、親としてちょっと心配になるぐらいだった。
「サフィー、サフィー? あまり長くここにいても、お父様のお仕事のお邪魔になるだろう? もうそろそろ、お兄様と遊んでくれてもいいんじゃない?」
そう言いながら魔王の執務室にやってきては、彼女の気を引けそうな本だのおもちゃだの、お菓子だのをあれこれと見せている。
が、サフィーはさらさらの紺色の髪をぱっとひるがえして首を横に振るのだった。
「いやっ。えるぱぱのおひざがいいの」
「そんなあ~! もっとぼくと遊んでよう……」
「まあまあ。サフィーがエルのとこにいる間は、俺と遊ぼうぜ。なっ、ローティ」
「はあい……」
しぶしぶローティがリョウマと一緒に執務室の外へ出ていこうとすると、なぜかサフィーが急にばたばたと魔王の膝から下りてこちらへ突進してくる。
「だめっ。りょーぱぱは、サフィーとあしょぶの!」
「ええっ。リョーパパもエルパパもサフィーのなの? 独り占めなの? そんなのズルいよ~」
なんて言いながらも、ローティの顔はすっかり雪崩状態を起こしている。本当に、この妹が可愛くて可愛くてたまらないらしい。
「えっと、ローティ。もうちょっと顔、ひきしめよっか? 一応お前、王子様なんだからさー。一応、威厳っつーかなんつーか、そーゆーもんが必要っつーかさー」
「えー。無理ですよう父上。サフィーが可愛すぎて、そんなのムリ! ぼく、もうダメですよ、とにかくサフィーが可愛すぎるううう!」
「あ~……うん。そこはまあ、俺も完全同意なんだけどさー」
ある程度成長したローティは、そろそろ勉強だの武術だのを本腰を入れて学ばねばならないはずなのだが。魔王は「別に慌てることはない」と笑っているが、「そういうわけにはいかねえだろ」とリョウマは思う。
なにしろ、リョウマが魔王と結婚したこと自体、よく思っていない者たちがまだいるのだ。それでもしも「あんな奴が相手だから、ろくな王子、王女が生まれない」なんて言われたら──。
(そんなの、ダメだ。絶対ダメだ! だって、そうなって一番可哀想なのは子どもたちじゃねえか!)
と、そんなリョウマの心配をよそに、実はこのふたり、相当優秀な子どもであることがすぐにみんなに知られるようになっていった。
魔王が執務をする膝の上にいることが多かったサフィーは、あっという間に文字を覚えて凄まじい読書量と理解力、洞察力を誇るようになっていったし、ローティはローティで師範である武官たちが舌を巻くほどの速度で武術を習得し、その道での存在感を示すようになっていったのだ。
◇
「二人ともだいぶ落ち着いてきたな。ではそろそろ」
「え? そろそろって……まさか」
と思った、そのまさかだった。
魔王はその後は同じぐらいの期間を空けて、ふたりの間につぎつぎと子を儲けていった。まさに、リョウマが望んだ通りにだ。
第三子は黄金色のドラゴンの子。幼名をゴールディ。女の子。
第四子、桃色のドラゴンの子。幼名ロージー。男の子。
そして第五子、黒色のドラゴンの子。幼名オブシー。男の子。
べつにリョウマも魔王もそのように意図したわけではなかったのに、なんとちょうど《レンジャー》たちの色目とぴたりと揃って生まれてきたのが、なにか運命的なものに感じられた。
子どもたちはそれぞれに性格は異なるものの、みな健康でローティのようにすくすくと育っていった。長子であるローティはサファイラ以外の子に対してもとても面倒見のいいタイプで、弟妹の面倒をよく見てくれたので、子どもたちはみな非常にこの長兄を慕ってくれているようだった。
サファイラはおしとやかで品のある美少女に成長したが、やはり芯は非常にしっかりした子で、これまたみんなの長姉として、下の子たちからの信頼を得られる姫になっていった。
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