91 / 97
第四章 真理
遺言書と手紙
しおりを挟む
そうか、確かに私は婚約者だったけど、家族ではない。実家のご両親は、家族同様に扱ってくれているが、結局、家族になれなかった私は、法律上の相続人ではない。まだファイルの中を見たわけではないが、いっちゃんの遺品を受け継ぐのは、法定の相続人のはずだ。
だとすると、家族とトラブルにならないように、いっちゃんはこうして遺言書を書いておいてくれたのかなと推察した。ご丁寧に貸金庫を開ける権利まで記載してくれている。もし、貸金庫のサービスをしている会社からどうして私が金庫を開けたのかと追求されたときに、この遺言書は有効かも知れない。さすが、どこまでもリスク管理が徹底している。
これは後で確認したことだが、本人の死後、その財産を誰かに引き渡す方法には、相続の他に遺贈という方法があって、相続人以外の人にも財産を譲りたい場合にはこの遺贈、つまり遺言書によって他人に無償で財産を譲る方法を使うらしい。譲渡とは違って、相手の同意は不要らしい。確かに、彼から私は何も聞いていない。今回は、これらのファイルを彼の死後に私に譲る手法として、この遺贈の方法を使っていることが、後日わかった。こんなとこまで検討しているなんて、彼は弁護士にでも相談したのだろうか。
遺言書を確認した後は手紙だ。一体、何が書いてあるのだろう。少しドキドキした。
意を決して、手紙を手に取ってみる。
冒頭の一行は、私に大事なことを伝えるときの呼びかけの文章だ。
『Dear my sweet better half, Uta-chan,』
二人揃って始めて完全な人間になれるという人間球体説。その意味を込めたmy sweet better half。完全数の要素をパスワードにした理由は、この文章からも理解できる。私にしかわからない暗証番号というのは、今更ながらこういうことかと納得した。
その次の行には、驚くべきことが書かれていた。
『ついに、僕は来世もずっと詩ちゃんと一緒にいることができる方法を発見しました。』
え!
いきなり何を言っているのだろうと、詩は思った。と同時に、プロポーズのときの『来世もずっと一緒にいようね。』という言葉を想い出した…
いっちゃんは、もしかして来世も一緒にいることが出来ると、あのとき確信したので、私にプロポーズしたのだろうか。そういえば、彼は出来ないことは約束しないとよく言っていた。出来ないことを約束すると、他人に対して無責任になるからだからだと。
その彼が、私に見たことのない世界を見せると約束したんだ。そして、その約束を果たすために、ベテルギウスをパスワードにして私へのメッセージを記録し、貸金庫に導いたんだ。私との約束を果たすために、こんなにも手の込んだ方法を使って。
そう思うと、彼が遺言書を書いていた気持ちも理解できる。ついさっき、不信な気持ちを感じた自分が恥ずかしくなった。
さらに、便箋には更に文章が続いていた。
『それは、この世界の真理を知ったものだけが使える方法です。
その方法を使うと、もはや死でさえも二人を引き離すことは
出来ないことがわかりました。』
だとすると、家族とトラブルにならないように、いっちゃんはこうして遺言書を書いておいてくれたのかなと推察した。ご丁寧に貸金庫を開ける権利まで記載してくれている。もし、貸金庫のサービスをしている会社からどうして私が金庫を開けたのかと追求されたときに、この遺言書は有効かも知れない。さすが、どこまでもリスク管理が徹底している。
これは後で確認したことだが、本人の死後、その財産を誰かに引き渡す方法には、相続の他に遺贈という方法があって、相続人以外の人にも財産を譲りたい場合にはこの遺贈、つまり遺言書によって他人に無償で財産を譲る方法を使うらしい。譲渡とは違って、相手の同意は不要らしい。確かに、彼から私は何も聞いていない。今回は、これらのファイルを彼の死後に私に譲る手法として、この遺贈の方法を使っていることが、後日わかった。こんなとこまで検討しているなんて、彼は弁護士にでも相談したのだろうか。
遺言書を確認した後は手紙だ。一体、何が書いてあるのだろう。少しドキドキした。
意を決して、手紙を手に取ってみる。
冒頭の一行は、私に大事なことを伝えるときの呼びかけの文章だ。
『Dear my sweet better half, Uta-chan,』
二人揃って始めて完全な人間になれるという人間球体説。その意味を込めたmy sweet better half。完全数の要素をパスワードにした理由は、この文章からも理解できる。私にしかわからない暗証番号というのは、今更ながらこういうことかと納得した。
その次の行には、驚くべきことが書かれていた。
『ついに、僕は来世もずっと詩ちゃんと一緒にいることができる方法を発見しました。』
え!
いきなり何を言っているのだろうと、詩は思った。と同時に、プロポーズのときの『来世もずっと一緒にいようね。』という言葉を想い出した…
いっちゃんは、もしかして来世も一緒にいることが出来ると、あのとき確信したので、私にプロポーズしたのだろうか。そういえば、彼は出来ないことは約束しないとよく言っていた。出来ないことを約束すると、他人に対して無責任になるからだからだと。
その彼が、私に見たことのない世界を見せると約束したんだ。そして、その約束を果たすために、ベテルギウスをパスワードにして私へのメッセージを記録し、貸金庫に導いたんだ。私との約束を果たすために、こんなにも手の込んだ方法を使って。
そう思うと、彼が遺言書を書いていた気持ちも理解できる。ついさっき、不信な気持ちを感じた自分が恥ずかしくなった。
さらに、便箋には更に文章が続いていた。
『それは、この世界の真理を知ったものだけが使える方法です。
その方法を使うと、もはや死でさえも二人を引き離すことは
出来ないことがわかりました。』
15
あなたにおすすめの小説
皇帝陛下!私はただの専属給仕です!
mock
恋愛
食に関してうるさいリーネ国皇帝陛下のカーブス陛下。
戦いには全く興味なく、美味しい食べ物を食べる事が唯一の幸せ。
ただ、気に入らないとすぐ解雇されるシェフ等の世界に投げ込まれた私、マール。
胃袋を掴む中で…陛下と過ごす毎日が楽しく徐々に恋心が…。
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
声を聞かせて
はるきりょう
恋愛
動物の声が聞こえる彼女と冷たい第二王子の物語。完成しました。
「……反対されない、というのは、寂しいことだと思いますの。だから…私が反対してさしあげます」
サーシャは最上級の笑顔を浮かべた。そして、思い切り息を吸い込む。
「何でも思い通りいくと思うなよ、くそ王子!!」
「サ、サーシャ様!?」
なりゆきを見守っていたハリオが慌てたようにサーシャの名を呼んだ。一国の王子への暴言は不敬罪で捕まりかねない。けれど、言わずにはいられなかった。
そんなサーシャの言動にユリウスは一瞬目を丸くし、しかしすぐに楽しそうに笑った。
「お前面白いな。本当に気に入った」
小説家になろうサイト様にも掲載してします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる