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第四章 真理
大事なバッグ
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自宅に着いてようやく安心した。リビングに入り、大事なバッグを茶室の図書館の書籍の整理に使った収納ケースの前に置いた。まず気持ちを落ち着けるために、洗面所で丁寧に手洗いとうがいをした。鏡に映る表情が、急いで歩いてきて暑かったせいか、少し紅潮していた。
リビングルームに戻って、ショルダーバッグを開けて中身を確認した。大丈夫だ、貸金庫から取り出したものが全て入っている。それらをリビングのテーブルの上に並べてみた。左から一通の封筒と、2冊のファイル。
そして、財布から青い薔薇のブローチを取り出した。なぜ、いっちゃんは、このブローチを入れたのだろうか。あらためて、ブローチを手に取って眺めてみる。青い薔薇の花言葉は『奇跡』。昔、彼が教えてくれた。そのときの彼は、私に出会えたことが奇跡だと言ってくれた。彼がいなくなった今、これからもう一度、奇跡が起こるとしたら、一体、どういう奇跡が起こるのだろうか。
その青い薔薇の色をしばらく見ていると胸が高鳴ってきた。その答えは、貸金庫にあったこの封筒とファイルの中にあるはずだ。これまで段ボール箱の書籍を探求する前には、いつも、紅茶を淹れてゆっくりしていたのだが、この日はお湯を沸かすことさえも、もどかしかった。少しでも早く、貸金庫から持ち帰った封筒とファイルの内容を知りたかった。
よし、まずは封筒だ。
今回の封筒は彼の実家にあった横長の小さな封筒とは違って、仕事用の書類を入れるような縦長の大きな封筒だった。手に取ってみると、あまり厚みも感じられなかったので、今回は紙書類が入っているだけで、鍵やカードなどが入っていることはなさそうだった。
封筒の表に手書きで書かれた宛名は、私宛だった。
『詩ちゃんへ』
彼の実家の両親から受け取った封筒に書かれていた文字と同じ見慣れたいっちゃんの字だ。
封筒の裏を見ると、六芒星の封印がしてあった。これも以前の封筒と同じだ。明らかに彼が遺した封筒だと確信した。何が入っているのだろう。高鳴る気持ちを抑えながら、リビングテーブルの隅に置いてあるペン立てからハサミを取り出して、縦長の封筒の上端を切り開いていった。
封筒の中から書類を取り出した。2通の文書が入っていた。一つは白い便箋に書かれた私的な手紙。もう一つは法的な書類としての遺言書だった。
先に気になった遺言書を見ると、手書きで、彼が私に貸金庫を開ける権利とこれらのファイルの所有権を私に遺贈するということが書かれていた。最後に日付と彼の署名捺印があった。日付は彼がまだ生存していた頃、去年の春の日付だった。丁度、プロポーズされた頃だ。そんなときに遺言書を書いていたのかと驚いた。
『来世も一緒にいようね。』
あのとき、そう言ってくれたのに、一方で遺言書を書いているとは、一体どういうつもりだったのだろう。これから永遠に幸せにするっていったくせに、同時に死ぬかも知れないと思っていたのだろうか。彼の気持ちが理解できないと思い、少し不信な気持ちが頭をよぎった。
遺言書にはクリップ留めされた印鑑登録証も添えられていた。ファイルを引き継ぐだけなのに、ここまでする必要があるのかと思ったが、芽依ちゃんが相続のことがあると言っていたことを想い出した。
リビングルームに戻って、ショルダーバッグを開けて中身を確認した。大丈夫だ、貸金庫から取り出したものが全て入っている。それらをリビングのテーブルの上に並べてみた。左から一通の封筒と、2冊のファイル。
そして、財布から青い薔薇のブローチを取り出した。なぜ、いっちゃんは、このブローチを入れたのだろうか。あらためて、ブローチを手に取って眺めてみる。青い薔薇の花言葉は『奇跡』。昔、彼が教えてくれた。そのときの彼は、私に出会えたことが奇跡だと言ってくれた。彼がいなくなった今、これからもう一度、奇跡が起こるとしたら、一体、どういう奇跡が起こるのだろうか。
その青い薔薇の色をしばらく見ていると胸が高鳴ってきた。その答えは、貸金庫にあったこの封筒とファイルの中にあるはずだ。これまで段ボール箱の書籍を探求する前には、いつも、紅茶を淹れてゆっくりしていたのだが、この日はお湯を沸かすことさえも、もどかしかった。少しでも早く、貸金庫から持ち帰った封筒とファイルの内容を知りたかった。
よし、まずは封筒だ。
今回の封筒は彼の実家にあった横長の小さな封筒とは違って、仕事用の書類を入れるような縦長の大きな封筒だった。手に取ってみると、あまり厚みも感じられなかったので、今回は紙書類が入っているだけで、鍵やカードなどが入っていることはなさそうだった。
封筒の表に手書きで書かれた宛名は、私宛だった。
『詩ちゃんへ』
彼の実家の両親から受け取った封筒に書かれていた文字と同じ見慣れたいっちゃんの字だ。
封筒の裏を見ると、六芒星の封印がしてあった。これも以前の封筒と同じだ。明らかに彼が遺した封筒だと確信した。何が入っているのだろう。高鳴る気持ちを抑えながら、リビングテーブルの隅に置いてあるペン立てからハサミを取り出して、縦長の封筒の上端を切り開いていった。
封筒の中から書類を取り出した。2通の文書が入っていた。一つは白い便箋に書かれた私的な手紙。もう一つは法的な書類としての遺言書だった。
先に気になった遺言書を見ると、手書きで、彼が私に貸金庫を開ける権利とこれらのファイルの所有権を私に遺贈するということが書かれていた。最後に日付と彼の署名捺印があった。日付は彼がまだ生存していた頃、去年の春の日付だった。丁度、プロポーズされた頃だ。そんなときに遺言書を書いていたのかと驚いた。
『来世も一緒にいようね。』
あのとき、そう言ってくれたのに、一方で遺言書を書いているとは、一体どういうつもりだったのだろう。これから永遠に幸せにするっていったくせに、同時に死ぬかも知れないと思っていたのだろうか。彼の気持ちが理解できないと思い、少し不信な気持ちが頭をよぎった。
遺言書にはクリップ留めされた印鑑登録証も添えられていた。ファイルを引き継ぐだけなのに、ここまでする必要があるのかと思ったが、芽依ちゃんが相続のことがあると言っていたことを想い出した。
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