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お肉が食べられます。
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「お口に会わないかと思いますが、どうぞ、ご容赦を……」
牢番の兵士が困ったように皿を差し出してきた。
「お肉!」
「は。……その、とても……硬いので、お気をつけて……」
「そうなのね。ええ、気をつけるわ。ありがとう」
これほど大きな固形のお肉などどれだけぶりだろう。
リーリエはこくりと喉を鳴らした。
昔、育ち盛りの頃に、頼み込んで形のある肉を出してもらったことがある。
スープに溶けかけの、小指の爪くらいに小さなものだったが、それでも肉だ。ほろりと溶け残った繊維質を追って、いつまでも噛んでいたものだ。
しかしこの肉は、溶けていない。いっそ乾燥している。
いかにも物体であるという存在感で、皿の上に転がっているのだ。
「はあ……ふう……」
皿を持った手が震えてきて、リーリエはそれを牢の床に置いた。
「お肉と……芋、ね……?」
芋は潰されているが、それでもスープよりは形が残っている。ごつごつとした素晴らしい形を、添えられていたスプーンでつついた。
「あふ」
芋をすくう。
もりあがったこの形、とろけていかない形、リーリエは震えながらゆっくりと口に運んだ。
「んっ」
舌に当たるかすかな甘み。歯が芋に沈み込んでいき、ほくり、と割れる。ふわわ、とたまらない甘さが広がった。
「んんんーっ!」
リーリエは窒息死するところだった。
否、してもいい。極楽、なんという極楽。
(甘味で溺れ死そう!)
「はっ、あ……」
こんなに時間をかけてはいけないと思ったが、そうではなかった。今のリーリエは急いで食べる必要がない。
「なんて……贅沢……」
舌でざらりと芋をならし、その一粒一粒まで味わうことができる。気の遠くなるような味の嵐に、リーリエは気を失うところだった。
「お、お肉……を……」
だめだ。
肉を食べずにどうして意識を飛ばせようか。さすがにのんきに気を失っていたら、下げられてしまうかもしれない。
「ああ……」
それでもしばらく、乾いた肉の形に陶然としていた。
皿を捧げ持つ。ここに肉がある。
スープに溶けてその形を失っていたとしても、肉は肉だ。栄養素は得られる。だが、リーリエは肉を食べたかった。急いで流し込むのではなく、噛んで食べたかったのだ。
「感謝します」
リーリエはついに肉を口に入れた。
「むっ……」
じわりと、さきほどの芋とは別次元に唾液が溢れてくる。固形物だ。舌が、頬の内側が、感じ取っている。これはリーリエに与えられた食べ物だ。
口の中にあるだけで、リーリエの体はそれを溶かそうとする。
甘さが滲み出ているのはそのせいだ。
けれどリーリエは、リーリエの力でそこに歯を立てた。
「はうっ」
それは肉である。
歯をたてれば押し返す。肉である。
なお力をいれればその繊維が感じられた。肉である。
「う、うう……」
硬い。
柔らかいものを食べ慣れたリーリエの歯は、肉を噛み切ることができない。けれどそれが、嬉しい。
(硬い! 硬い! 硬い!)
どこまでも硬い。
いつまでもここにある物体だ。
そして味は噛むたびに染み出してくる、これは無限の物質ではないか?
(噛んでも噛んでもなくならない……!)
リーリエは涙を流した。
そして両頬を押さえ、深く、神に感謝を捧げた。
「リーリエ様……!?」
誰かが声をあげていたが、それさえ構わず祈った。祈りに集中することは得意だ。というより、それしかすることがなかった人生である。
「……あら?」
そしてリーリエが我に返った時、目の前に三人の兵士が頭を垂れていた。
(やってしまった)
祈りが神に届いたので、リーリエの体は今、黄金色に輝いている。神の目が向けられているという証だ。
リーリエは怯えて首を振った。
「見なかったことに……してくれませんか?」
かつて幼かったリーリエは、これを見られてしまったために、家族と引き離され、教会に引き取られることになったのだ。
牢番の兵士が困ったように皿を差し出してきた。
「お肉!」
「は。……その、とても……硬いので、お気をつけて……」
「そうなのね。ええ、気をつけるわ。ありがとう」
これほど大きな固形のお肉などどれだけぶりだろう。
リーリエはこくりと喉を鳴らした。
昔、育ち盛りの頃に、頼み込んで形のある肉を出してもらったことがある。
スープに溶けかけの、小指の爪くらいに小さなものだったが、それでも肉だ。ほろりと溶け残った繊維質を追って、いつまでも噛んでいたものだ。
しかしこの肉は、溶けていない。いっそ乾燥している。
いかにも物体であるという存在感で、皿の上に転がっているのだ。
「はあ……ふう……」
皿を持った手が震えてきて、リーリエはそれを牢の床に置いた。
「お肉と……芋、ね……?」
芋は潰されているが、それでもスープよりは形が残っている。ごつごつとした素晴らしい形を、添えられていたスプーンでつついた。
「あふ」
芋をすくう。
もりあがったこの形、とろけていかない形、リーリエは震えながらゆっくりと口に運んだ。
「んっ」
舌に当たるかすかな甘み。歯が芋に沈み込んでいき、ほくり、と割れる。ふわわ、とたまらない甘さが広がった。
「んんんーっ!」
リーリエは窒息死するところだった。
否、してもいい。極楽、なんという極楽。
(甘味で溺れ死そう!)
「はっ、あ……」
こんなに時間をかけてはいけないと思ったが、そうではなかった。今のリーリエは急いで食べる必要がない。
「なんて……贅沢……」
舌でざらりと芋をならし、その一粒一粒まで味わうことができる。気の遠くなるような味の嵐に、リーリエは気を失うところだった。
「お、お肉……を……」
だめだ。
肉を食べずにどうして意識を飛ばせようか。さすがにのんきに気を失っていたら、下げられてしまうかもしれない。
「ああ……」
それでもしばらく、乾いた肉の形に陶然としていた。
皿を捧げ持つ。ここに肉がある。
スープに溶けてその形を失っていたとしても、肉は肉だ。栄養素は得られる。だが、リーリエは肉を食べたかった。急いで流し込むのではなく、噛んで食べたかったのだ。
「感謝します」
リーリエはついに肉を口に入れた。
「むっ……」
じわりと、さきほどの芋とは別次元に唾液が溢れてくる。固形物だ。舌が、頬の内側が、感じ取っている。これはリーリエに与えられた食べ物だ。
口の中にあるだけで、リーリエの体はそれを溶かそうとする。
甘さが滲み出ているのはそのせいだ。
けれどリーリエは、リーリエの力でそこに歯を立てた。
「はうっ」
それは肉である。
歯をたてれば押し返す。肉である。
なお力をいれればその繊維が感じられた。肉である。
「う、うう……」
硬い。
柔らかいものを食べ慣れたリーリエの歯は、肉を噛み切ることができない。けれどそれが、嬉しい。
(硬い! 硬い! 硬い!)
どこまでも硬い。
いつまでもここにある物体だ。
そして味は噛むたびに染み出してくる、これは無限の物質ではないか?
(噛んでも噛んでもなくならない……!)
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そして両頬を押さえ、深く、神に感謝を捧げた。
「リーリエ様……!?」
誰かが声をあげていたが、それさえ構わず祈った。祈りに集中することは得意だ。というより、それしかすることがなかった人生である。
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(やってしまった)
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リーリエは怯えて首を振った。
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