私との婚約を破棄した男が頼ってくるけど、利用しても問題ないよね?

狼狼3

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迫ってくる元婚約者②

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 十周年の記念日に彼と別れてから数日。
 いつものように目覚ましに、お気に入りの紅茶ティーを口に入れていると、私の隣でティーポットを持って控える爺が、聞こえるか聞こえないかくらいの大きさの声で呟いた。

「………元婚約者のケインは嫡男から外され、追放されたんでしたっけ。」
「………続けて。」

 手で支えていたカップを一度ソーサーに戻すと、爺の次に発するであろう言葉に耳を傾けた。爺は、こちらを一度チラッと覗くように見てくると、今度は聞こえるように部屋に言葉を響かせた。

「元婚約者のケインは、お嬢様を差し置いて他の女とヤってしまったことを含め、今までの子供過ぎる行動が目に留まったようで、昨日アマバ公爵家から追放されたようです。……子供らしく、お嬢様と円満に会話をされたり、好きなことに夢中になられる様子はいいのですが、品のない行動や欲しいと言って他の人の物を奪ったりするのは、公爵の名を汚す存在ですからね。お嬢様と結婚していればまだやっていけたかもしれませんが。」
「………それって、本当なのよね?」
「はい。本当ですお嬢様。彼の行動については、旦那様から黙っておけと言われました。」

 爺の淡々と発する言葉に、私は策略深く冷酷な父を思い浮かべ、私は父に騙されていたことを思い知る。
 外交に置いて勝てる者無しと言われている父は、よく相手を騙したり謀る。
 私はカインがそんな男だったとは知らない。
 少し子供っぽくて、元気一杯ということしか。
 でも、本当はそれが本当の彼なのだろう。
 カインの素性について知らされていなかったのは、恐らく私にカインの素性が知られると面倒だったからだろう。爺に聞いてみると、彼は子供らしく暴れん坊な性格から婚約してくれる相手がおらず、婚約者は出来ないのではないかと言われていたらしい。いくら力のある公爵の息子でも、子供らしい性格からいつか絶対家の子が傷付くことになると、 貴族は全員一致で彼との婚約を了承しなかったらしい。政略結婚が当たり前の為、子供よりも家を優先すると思うが、自分自身が政略結婚で無理矢理結婚させられた為、親としてあまり子に無理をさせたくないのだ。だけど、その中で唯一彼との婚約を了承したのが、冷酷で家のことしか考えない父というわけだ。

 考えれば考える程、馬鹿らしくなってきた。
 私は、利用されていたのか。
 そんなことを考えていると、何やらドンドンと物凄い音が聞こえてきた。

「お~い。ケインだよ~。リン、開けてくれ。」

  部屋の空気に、激震が走る。
  爺の様子を見ると、まさか婚約破棄した相手のいる此処へは来ないと思っていたのか、いつもの様子とは違って死んでしまった魚のように固まっている。
 そんな爺に私は声を掛ける。

「今から彼に会いに行って『私に毎日婚約を頼んできたら、いつか婚約してあげる』と伝えてきて?」
「………どういうことでしょうかお嬢様?」
「一応言っておくけど、彼のことはもう好きじゃないし彼と婚約する気は全くないわ。ただ、そうすれば彼は子供っぽいし毎日のようにここに来るでしょ?そうすれば、彼は今のように子供らしくドンドンと扉を叩いたり、子供っぽい性格から悪戯とかもしてくるはずだし、何より彼が私に訪れることで、彼にうろつかれている私を外交政略結婚のカードとして父が使えないでしょ?そうすれば、父にかなりの嫌がらせが出来ると思って。」
「……畏まりました。」

 爺は、これから起こることを予想してだんまりするようにため息をつく。
 これで私を裏切ったケインを利用して、父を困らせることが出来る。

 嫌らしい笑みが映る紅茶に、私は再び口を入れた。
 
 
──────────────────────────────
補足ですが、一話目の話でお嬢様リンが、爺と

「………爺。」
「はい。お嬢様。」
「………彼奴はまだ私に執着するつもりなのかしら?私との婚約を破棄したというのに。」
「……少なからずそうではないかと。今も、彼は屋敷の扉をひたすらに叩いております。」
「はぁぁ……そろそろ来ないと思っていたのだけど。だって、彼奴がここに来るのもう二週間よ。」

 このような会話をしているのは、リンの父にわざと屋敷にケインを入れていることをばれないようにするためです。その後に『父もかなり困っているらしく、彼が来る度に私の元に来る。』と描かれているとおり、父が来たときに気付かれないようにするためですね。

 後、
『 爺は彼奴の対応で心底疲れているのか、小さくため息をついているように見える。』
 
 これは、爺に対する皮肉ですね(笑)〈いつも仕えているのに、ケインについての素性をお父様の言いつけ通り、言わなかったからですね。〉
 本当は爺は、お嬢様の対応に疲れています(笑)

 
 ここまで見ていただき、ありがとうございます。
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