私との婚約を破棄した男が頼ってくるけど、利用しても問題ないよね?

狼狼3

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迫ってくる元婚約者

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「なぁ~?リンってまだ俺のこと好きだよな?なら、俺と結婚しようぜ。俺ってリンの元婚約者だし、結婚したって可笑しくないだろ?」
「………お嬢様。」
「何かしら?」
「この浮浪人を、屋敷から追い出してきてもよろしいでしょうか?」
「……………」
「沈黙は了承ということでよろしいですよね?」

 爺はそう言うと、シワがあるも男らしい腕で元婚約者の首元を掴んで、そのまま外へ向かって歩いていく。持ち上げられている間、元婚約者は足をバタバタと子供のように必死に動かしており、見るに堪えない。どうしてこんな奴のことを私は一瞬でも好きになってしまったのだろうか。
  お茶を一滴口にいれて、気分を落ち着かせる。

「………爺。」
「はい。お嬢様。」
「………彼奴はまだ私に執着するつもりなのかしら?私との婚約を破棄したというのに。」
「……少なからずそうではないかと。今も、彼は屋敷の扉をひたすらに叩いております。」
「はぁぁ……そろそろ来ないと思っていたのだけど。だって、彼奴がここに来るのもう二週間よ。」

 爺は彼奴の対応で心底疲れているのか、小さくため息をついているように見える。
 ここ最近、毎日のように私の屋敷に来たと思えば、どんどんと扉を叩いて大きな音を立てたり、私のお気に入りの花園を荒らす男は、元婚約者のケインだ。父もかなり困っているらしく、彼が来る度に私の元に来る。
 
 ケインは顔は中の上くらいでそこそこで、光に照らすと紅く透き通る綺麗な赤髪を持つ貴族の元嫡男だ。特に凄いと言える特技は無いが、苦手なものは無く全て平均して出来る。……所謂いわゆる、器用貧乏という奴だ。そして、少し子供っぽかった。
 
 そんなケインと私は、婚約者だった。
 幼いころに結ばれた、親同士で決められた政略を目的とした婚約。政略というものだから、夫婦円満にはいかないのが普通なのだが、私と彼はとても仲が良く、婚約が決まってからは一緒に行動していた。一緒に街に出掛けたり、花園に咲いている美しい香りのする花の中でお茶をしたり、ずっと彼と一緒に居た私は、気が付けば純粋に彼のことを好きになっていた。

 そんなケインと私。
 政略結婚で好きな人とは結婚出来ないと思っていたので、好きになれた人と一緒になれることに喜びを感じていたが、ここ最近でそれが崩れた。
 それが、ケインの不倫の暴露と婚約破棄だ。

 ケインと婚約をしてからちょうど十年。
 私は、その日に彼に呼ばれた。 
 何やらプレゼントでも渡されるのかと、十周年を記念して探しておいたプレゼントを持ちながら彼に会うと、そこで彼は軽く笑いながら「リンとの婚約を破棄する」と言ってきた。

 え?
 私は、背中に隠しておいたプレゼントを力が入らずに落としてしまった。

 考えても、考えても意味が分からなかった。
 私と彼は両想い。
 このまま仲がいいまま、結婚ゴールインすると思っていた。
 なのに何故、婚約破棄なんて言うのだろう。
 しかも笑いながらなんて…………十年の付き合いは何だって言うの?
 頭の中が、疑問符でまみれた。
 
「実は街を歩いていたら平民の女に誘われて、そのままヤっちゃってさ。……それを親父に言ったら滅茶苦茶怒られて、リンとリンの貴族に見せる顔がないから、リンとの婚約を破棄してこいと言われてさ。」

 彼は頭を搔きながら、はははと笑う。
 は?
 自分がしたことの罪の大きさを知らないかのように、いたずらをして怒られた時のように笑う彼を見て、私の頭は急速に考えることを止める。
 私と彼はまだ如何わしい行為なんてしていない。
 貴族以外の商人や平民は別として、貴族のルールとして結婚したその日の夜に初めてその行為をすると決まっているのだ。
 だから、彼とそういう行為をすることなんてなかった。
 だけど、何故彼はそのルールを破って平民の女となんかしているのだ?
 嫉妬で狂うよりか呆れるのが先にきて、私の中で何かが急速に冷めていくのを感じた。

「………分かったわ。それじゃあ、さよなら。」

 ビンタをするのも馬鹿らしくなり、そのまま彼と別れた。
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