閉じたまぶたの裏側で

櫻井音衣

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雨に濡れても

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應汰からはなんの連絡もないまま、あっという間に夜になった。
ここ最近は週末もいつもなんとなく一緒にいたから、まったく会わないのも連絡がないのも珍しい。
私が寝ているうちに何も言わずに帰ってしまった事も気になる。
どうしたのかなと気にはなるものの、ずっと友達だった應汰とあんな事をしてしまった手前、顔を合わせづらいのも事実だ。
もしかしたら應汰もそうなのかも知れない。
明日会社で会ったら、どんな顔をすればいいんだろう。
お酒の勢いに任せて一線を越えてしまったことが、今更ながら悔やまれる。
應汰が何も言って来なければ私からは夕べのことには触れず、何事もなかったようにいつも通りにしていよう。


月曜の昼休み、社員食堂で應汰が同じ部署の同僚たちと食事をしているのを見掛けた。
なんとなく應汰の視線を感じたけれど、やっぱり顔を合わせるのは気まずくて、少し離れた場所にいたのをいいことに気付かないふりをしてやり過ごした。

昼休みが終わる頃、應汰からのトークメッセージが届いた。

【今週から後輩の得意先についてまわるから、
仕事終わるの遅くなると思う。
金曜は営業部の飲み会があるから遅くなる。
早く終われそうな日は連絡する】

待っていろとも先に帰れとも言わないけれど、待っていなくていいという事なんだろう。
わかった、とだけ返事をした。
避けられてるのかな。
ほんの少し、そんな気がした。


相変わらず應汰からはなんの連絡もなく、一度も会わないで、またひとりぼっちの週末を迎えた。
なんの変化もないまま、ただ時間だけが過ぎていく。
應汰のいない仕事の後の時間や休日は、何かを忘れているような気がして、改めて應汰の存在の大きさに気付いてしまう。
いつもなら用事なんてなくても休みの日にも会っていたのに、これだけ連絡が途絶えるとやはり避けられているんだろうなと思う。
應汰が気付いているのかはわからないけど、避けられるようなひどい事をしてしまった自覚が私にはある。
うしろめたい。
顔を合わせづらい。
もう以前のように、二人でお酒を飲んで冗談を言い合ったり、笑って思い出話をする事はできないのかな。
もしかしたら應汰は、このまま私から離れて行くつもりなのかも知れない。
それを引き留める資格なんて、私にはない。


また月曜の朝が来た。
家を出た時は晴れていたのに、会社に着く頃には空にはグレーの雲が立ち込め、ただでさえ憂鬱な気分に拍車をかける。
制服に着替えてオフィスに足を踏み入れると、いつものように勲がパソコンに向かっていた。
関係を終わらせても、勲とは同じ部署だから毎日顔を合わせる。
何食わぬ顔をして見せてはいるけど、私の中には未練とか後ろめたさとか、一言では言い表せないような感情が渦巻いている。
毎日顔を合わせるのは、正直つらい。

タイミング良く異動になったりしないかな。
そんな事を考えながら仕事をして、定時になるとスマホを見て、應汰からの連絡がない事を確認する。
誰との約束もないから待つ必要もなく、残業がなければ定時で退社して、夕食の材料を買って帰宅する。
暇を持て余して必要以上に長い時間お風呂に浸かった後は簡単な料理を作り、ひとりでビールを飲みながら味気ない夕食を済ませ、たいして興味もないテレビ番組を遅くまで眺めてから眠りに就く。
これが最近の私の一日だ。


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