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第83話 ~とある半人造少女の視点⑤~
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不運にも射線上にいたことから、徐にフィアの避けた弾丸が飛んでくる。
私も彼女の動きに連動して、左足を斜めに踏み出した半身となり、紙一重で銃撃を躱そうと試みるも… 右脇の肉を浅く抉られた。
「――っ、ぅ」
半人造の身体は多少の傷を物ともしない自己修復力など備わっているが、痛いものは痛いので苦鳴が漏れてしまう。
その間にも銃声は響き続け、幼馴染の司祭を庇う位置取りにいた護衛の冒険者らが頽れて、マナの制御で研ぎ澄ませた聴覚に呻き声が聞こえてきた。
「っ、けほ…」「うぅ…っ……」
一瞬だけ攻撃か回復かを迷い、低い姿勢のまま逡巡したフィアに裏切り者の銃口が戻される最中、横手を抜ける軌道で道端に並んだ家屋の壁面へ飛び込む。
そこを足場とする再度の跳躍で攪乱しつつ、横たわった護衛二人の身体を斜に越えると、さらに対角へ方向を転じて駆け出す。
「ちッ、これだから才のある奴は! 手を汚さずにいられない、有象無象の気持ちなんて、分からないんだろうな!!」
憎々し気に叫びながら間者は狙いを変えるが、不規則な動きで的を定めさせず、瞬く間に彼我の距離をつめれば、残り数歩の間合いで唐突に引き金が絞られた。
照準の曖昧な苦し紛れの銃弾など当たるはずもなく、懐に踏み入って振り落とした右手の刃が煌めき、身体強化済みの膂力と速度で相手の利き腕を半ばまで断つ。
猶も歯を喰いしばり、健在な反対側の腕で顔面を殴り付けてくるも、密着するように身体を預け、肋骨の隙間より左手の刃を心臓に突き立てた。
「ぶはッ、こ、こまでか……」
「ん… お疲れ様、さっきの言い草、共感はできるよ」
“賛同しないけどね” と耳元で囁いて、前のめりに斃れてきた間者から離れる。
人の数だけ想いはあるため、其々が大切だと思うものを尊重せず、自分勝手に振る舞えば生きづらくなるのは必然。
(程々に我を通し、その分だけ次は優しく… って、ダーリンの遣り口じゃない)
厄介なのに惚れたなと認識を改めて、死に逝く相手が握り締めている先史文明の遺物に視線を落とす。
襲撃者らの雇い主が調達させたであろう拳銃は戦利品の類なので、携帯用の革袋に入っていた予備の弾倉とホルスター、散らばっている幾つかの薬莢と合わせて遠慮なく頂いた。
「帝国で発掘され易い 9×19㎜ パラベラム弾、かな?」
よく知りもしないのに適当なことを宣い、聞き齧った知識で愛好者も多いと噂の逸品が持つ安全装置を弄って、上部スライドの後退と撃鉄の動きを阻害させる。
一応、路肩の石畳へ銃口を向けて引き金を絞り、上手い具合に動作が止められて空撃ちとなるのも確かめた。
「暴発して太腿でも撃ち抜いたら、大惨事だからね」
傷口は小さな穿孔に過ぎないが、凄まじいほどの速度衝撃があるため、骨に当たれば砕けた破片で動脈及び神経を断たれ、生死に関わる重体となり兼ねない。
そんな殺傷能力の高い攻撃を急所に受けたと思しき護衛役の二人は… 治癒魔法の処置も虚しく、一人だけ生き残った冒険者仲間や、悔しそうに唇を噛んだフィアに看取られていた。
何か声掛けした方が良い気はするも、敵方の半数足らずが重傷に留まり、まだ息はあるので全体を視野に収める位置から動くことができない。
やきもきしている内に銃声を聞いた近隣住民の通報か、都市イルファの警邏隊が駆け付け、彼らの仕切りで狭路の一幕はお開きとなった。
私も彼女の動きに連動して、左足を斜めに踏み出した半身となり、紙一重で銃撃を躱そうと試みるも… 右脇の肉を浅く抉られた。
「――っ、ぅ」
半人造の身体は多少の傷を物ともしない自己修復力など備わっているが、痛いものは痛いので苦鳴が漏れてしまう。
その間にも銃声は響き続け、幼馴染の司祭を庇う位置取りにいた護衛の冒険者らが頽れて、マナの制御で研ぎ澄ませた聴覚に呻き声が聞こえてきた。
「っ、けほ…」「うぅ…っ……」
一瞬だけ攻撃か回復かを迷い、低い姿勢のまま逡巡したフィアに裏切り者の銃口が戻される最中、横手を抜ける軌道で道端に並んだ家屋の壁面へ飛び込む。
そこを足場とする再度の跳躍で攪乱しつつ、横たわった護衛二人の身体を斜に越えると、さらに対角へ方向を転じて駆け出す。
「ちッ、これだから才のある奴は! 手を汚さずにいられない、有象無象の気持ちなんて、分からないんだろうな!!」
憎々し気に叫びながら間者は狙いを変えるが、不規則な動きで的を定めさせず、瞬く間に彼我の距離をつめれば、残り数歩の間合いで唐突に引き金が絞られた。
照準の曖昧な苦し紛れの銃弾など当たるはずもなく、懐に踏み入って振り落とした右手の刃が煌めき、身体強化済みの膂力と速度で相手の利き腕を半ばまで断つ。
猶も歯を喰いしばり、健在な反対側の腕で顔面を殴り付けてくるも、密着するように身体を預け、肋骨の隙間より左手の刃を心臓に突き立てた。
「ぶはッ、こ、こまでか……」
「ん… お疲れ様、さっきの言い草、共感はできるよ」
“賛同しないけどね” と耳元で囁いて、前のめりに斃れてきた間者から離れる。
人の数だけ想いはあるため、其々が大切だと思うものを尊重せず、自分勝手に振る舞えば生きづらくなるのは必然。
(程々に我を通し、その分だけ次は優しく… って、ダーリンの遣り口じゃない)
厄介なのに惚れたなと認識を改めて、死に逝く相手が握り締めている先史文明の遺物に視線を落とす。
襲撃者らの雇い主が調達させたであろう拳銃は戦利品の類なので、携帯用の革袋に入っていた予備の弾倉とホルスター、散らばっている幾つかの薬莢と合わせて遠慮なく頂いた。
「帝国で発掘され易い 9×19㎜ パラベラム弾、かな?」
よく知りもしないのに適当なことを宣い、聞き齧った知識で愛好者も多いと噂の逸品が持つ安全装置を弄って、上部スライドの後退と撃鉄の動きを阻害させる。
一応、路肩の石畳へ銃口を向けて引き金を絞り、上手い具合に動作が止められて空撃ちとなるのも確かめた。
「暴発して太腿でも撃ち抜いたら、大惨事だからね」
傷口は小さな穿孔に過ぎないが、凄まじいほどの速度衝撃があるため、骨に当たれば砕けた破片で動脈及び神経を断たれ、生死に関わる重体となり兼ねない。
そんな殺傷能力の高い攻撃を急所に受けたと思しき護衛役の二人は… 治癒魔法の処置も虚しく、一人だけ生き残った冒険者仲間や、悔しそうに唇を噛んだフィアに看取られていた。
何か声掛けした方が良い気はするも、敵方の半数足らずが重傷に留まり、まだ息はあるので全体を視野に収める位置から動くことができない。
やきもきしている内に銃声を聞いた近隣住民の通報か、都市イルファの警邏隊が駆け付け、彼らの仕切りで狭路の一幕はお開きとなった。
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