悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

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第一部

62.危なかったぁ……

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 一つ一つに毒はない。
 しかし―――

「植物の中には、一緒に育てると精神操作系魔法や肉体操作系魔法を生むものがあるの。だから花を育てるときは気をつけなきゃいけないって、昔、本で読んだわ」

 主な植物は虫などに花粉や種子を運んでもらうため、【幻惑】や【魅了】を発生させ、食虫植物などは【麻痺】や【混濁】を発生させる。
 人間が影響を受けるほどではないのでそこまで気にする必要はないのだが、特定の植物を同じ場所で育てると魔法の力が増幅して人に害をなすことがある。
 そしてそれが、カレンが育てていた花の中にあったのだ。

―――危なかったぁ……。もうちょっとで完全にやられるところだったよ。

 【解析】しなければわからなかった。

「おい、村の人たちは……」
「最悪の場合、死ぬわね。と言っても、肉体の死じゃなくて精神の死よ。精神が侵されて元に戻れなくなるの。催淫状態的な感じね。基本的に治すのは難しいわ」
「……」

 そんな花を育てた人は―――

「―――まだ確定ではないけれど、カレンは要注意人物ね」
「ああ。もし故意に育てていたとしたら、あいつは立派な罪人だ」

 敵か、味方か。
 この時点で判断はできない。
 けど―――

―――あの花が出すのは【魅了】と【暗示】だった。

 花の出す魔法は育てた人に影響を受ける。
 魔力を持たない平民なら効力は薄まり、魔力を持つ貴族なら効力は高まる。
 そして、育て人の思いが新たな魔法を生み出すこともある。

―――もしカレンの願いがだとしたら……。

 あそこに咲いていた花は【暗示】を出すような植物ではなかった。
 すなわち、カレンの願いが関わっている。

―――これ以上の詮索はよくないわね。

 突っ込みすぎるのはよくない。

「……とりあえず結界を張るね。そのあとカレンの記憶を書き換える。それが終わったら……引くわよ」
「わかった」
―――【結界】【抑制】【隠蔽】【抹消】
「俺は可能性に賭けて村人を治してみる」
「!」

 ルアならできるかもしれない。

「お願い」
「ああ。……【治癒】【回復】【修復】」

 緻密なやつはルアに任せるのが一番だ。
 私は結界の維持と組み立てなどを行う。

―――【構成】【創造】【補填】【弱化】

 そしてカレンの記憶を書き換える。

―――【記憶改変】【同化】【記憶】【複製《コピー》】【編集】【意識誘導】【思考誘導】【隠蔽】……。

 数分後、すべての作業が終わった。

「こっちは終わったよ」
「俺の方もなんとかなった。数日すれば元に戻るだろう」
「花は一ヶ月でなくなると思うわ」
「なら再発は低いな」

 カレンは、何をする気だったのだろう。

―――【解除】

 私は【時間停止】と髪の色、そしてルアが作ってくれた服を【解除】した。
 これでいつものユリアーナとルアである。

「一度家に戻ろう」
「そうだな」
―――ユリ、ルゥ。【転移】した瞬間に姿を消して。
―――かしこまりました。
―――御意。
「ルア」
「ああ。……【転移】」

 いつもの家に戻って来た。
 問題は山積みだが、とりあえずレティシア様に報告はできる。
 私は背伸びをして日常に戻った。




――――――――――――
補足/
 【転移】は【飛翔】より高度な魔法です。
 うまく想像できるところでないと【転移】はできません。つまり、一度行ったところでないと【転移】はできないです。
 エヴァのところからルアを連れ帰る時ユリアーナが【転移】でなく【飛翔】を使ったのは、ルアと話がしたかったのと、ユリアーナが同時に発動、維持できる魔法の数を調べたかったからです。
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