64 / 158
第一部
63.聞いてないんだけど!!
しおりを挟む「ごしゅじんさま」
勉強していると、ユリがやってきた。
猫耳はつけていないが、黒髪(ボブ)黒目の脇役メイド姿である。
気に入ってるんだなぁ、と見るたびに思っている。
「なにかあった?」
「はい。エヴァ様からお手紙です」
「そっちおいとい……え? エヴァから?」
随分と久しぶりに名前を聞いた気がする。
エヴァからの手紙か。
となると―――
「契約について?」
「はい。『今週中に契約を果たしに行く』と書かれております」
「……え? え??」
―――となると……エヴァがうちに来るってこと!?
確かエヴァとの契約内容は……
・ルアとエヴァの関係(済)
・人身売買をして何をしたいのか。
・ルアを刺客として私に送り出した理由。
・エヴァから見た私。
だったはずだ。
時間の問題ですべて聞けなかったのだ。
「……ユリ」
「はい」
「他になんて書いてあるの?」
「先ほど申し上げたこと以外、何も書かれておりません」
「うそでしょ……」
こっちの都合ってものを考えていないのだろうか?
「ちなみに今週は何も予定が入っておりません。ちょうどよかったです」
……うん、考えてたわ。
「それともうひとつ報告致します」
「なに?」
「たった今、リンドール邸にエヴァ様がご到着なされました」
「…………はい!?」
次から次へと新情報が入ってくる。
ちょっと待ってちょっと待って。
エヴァが契約を果たしにきた、で、今ここにやって来たんだよね!?
いくらなんでも展開早すぎない!?
「……どうやらサーシャ様と一緒にいるようです。あ、こっちに近づいてます。一旦私は消えますね」
「えっ、ユリ、待っ……」
待って、と言い終える前にユリが姿を消した。
―――ユリ~~~~っ!!
マジで、本当に、一人にされると困るんだけど!
「失礼します、ユリアーナ様」
―――来るの早いよサーシャ!
「お客様がお見えです」
サーシャは一歩下がった。
そして―――
「初めまして。ユリアーナ様の専属教師になったエヴァと申します。これからよろしくお願いしますね、ユリアーナ様」
―――教師!? 専属!? エヴァが!!?
てかそのキラキラスマイル何!?
怖いからやめて怖いから!
前に会った冷徹なエヴァを知ってるからもっと怖いんだけど!
「エヴァ様はとても博識なお方でして、魔法にも精通していらっしゃいます。今日から勉学と魔法はエヴァ様が全て担当されます」
―――聞いてないんだけど!!
「ユリアーナ様は素晴らしい才能を持っていらっしゃると、先ほどお会いしたエリアーナ様が力説しておりました。とても楽しみです」
「は、はは……」
―――なんでそんなこと言ったのエリィ~~っ!!
苦笑いしかできない。
「では少しユリアーナ様とお話ししたいのですが……サーシャ殿、よろしいでしょうか」
「構いません」
「ありがとうございます」
―――サーシャ~~っ!!
え、なに、今日って厄日なの?
エヴァは椅子と机を用意して、私を手招きする。
「どうぞこちらへ。ユリアーナ様」
「は、はい……」
私は頭が痛くなるのを感じた。
112
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない
miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。
断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。
家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。
いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。
「僕の心は君だけの物だ」
あれ? どうしてこうなった!?
※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。
※ご都合主義の展開があるかもです。
※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。
【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。
櫻野くるみ
恋愛
王太子フェルゼンは悩んでいた。
生まれつきのフェロモンと美しい容姿のせいで、みんな失神してしまうのだ。
このままでは結婚相手など見つかるはずもないと落ち込み、なかば諦めかけていたところ、自分のフェロモンが全く効かない令嬢に出会う。
運命の相手だと執着する王子と、社交界に興味の無い、フェロモンに鈍感な貧乏子爵令嬢の恋のお話です。
ゆるい話ですので、軽い気持ちでお読み下さいませ。
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる