学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき

文字の大きさ
18 / 84
邂逅

4

しおりを挟む


 「はぃい?」

 流石に顔を引きつらせる聖月。本人は認めていないが、聖月こそが皇帝と呼ばれている、その人である。一難去ってまた一難かよ、と天を仰いでみる。自分の運の悪さを恨みつつ、詳細を話せと蓮に迫る。今度はその勢いに押された蓮が引き気味になっている。

 「簡潔に話すと」
 「うん」
 「元々は、古宮巽の周囲に不良達が勝手に集まって騒いでいただけだったんだよね。で、本人は興味ないもんだから、鬱陶しいと思いつつ放置していたらしい」
 「ほうほう」
 「だけど、それでも人が集まって来て、その時に皇帝の話をした奴が居たらしいんだよね。そしたら、力と血に飢えた獣……じゃなかった、古宮巽が興味を持ったらしい」
 「で?」
 「何故か、皇帝と戦いたい的な事を言い出したらしくて。で、鬱陶しいのを廃除して手駒を作るっていう一石二鳥を求めたらいつの間にか族って言う形になってたらしく、めでたく総長就任。夜の街に降りては荒らしまくってるらしい」
 「はた迷惑な!」

 思わず悪態をつく。流石に滅茶苦茶だよなぁと流石の蓮も微妙な顔で感想を述べる。とは言いつつも頭を抱える聖月を見やり、まぁ、俺たちは関係ないから別にいいじゃんと他人事として、紅茶を啜っている。恨めし気な顔を上げた聖月に、どうしてそんな顔をしているの、ときょとんとした顔を向けるオプション付きである。

 「それはまぁ、置いといて。よくもまあ、そこまで詳しい事知ってたね?」
 「まぁ、情報ツウですから!」

 これまた薄い胸を張ってドヤ顔を見せる蓮。似たもの同士と言うべきか。そんな事を思った人間が近くにいたらしい。クスクス笑いが彼らの下に届く。むっとした表情で蓮がその方向を向くと、数人で席に着いた生徒が笑っていた。

 「ちょっと、何か文句でも?」
 「いやいや。情報ツウの蓮君は流石だなぁって言ってただけさ」

 どうやら顔見知りらしい。わいわいと舌戦で盛り上がる彼らをみて、友達多いなぁと感心していた聖月だったが、次の瞬間、顔色を変えた。

 「ついでに、一個補足な。どうやら素戔嗚スサノオが手を出すらしいぜ」
 「素戔嗚?」
 「古宮巽の族の名前。相手はKronousとNukusらしい。例の皇帝に関してやり合うらしいって話だ」
 「わお。え、てことはKronousとNukusは皇帝を見つけたの?」
 「さぁ?そこまでは分からないけど」

 会話が続いていく中、聖月は頭の芯が急速に冷えていくのを感じていた。




 キュ。シャワーの栓を回し、水を止める。温められた室内で、白い蒸気がユラユラと揺れているのを冷ややかに見つめる聖月。ゆっくりと白い手を目の前に翳し、ぐっと握りしめる。

 「素戔嗚、か」

 神代に神の世界を荒らした男神を関する族。KronousとNukusは族としては異色の存在。素戔嗚こそが、典型的なそれだろう。血と暴力の代名詞の一つ。そして、それは聖月にとって何よりも好んだものであり、軽蔑したものでもある。

 「くだらない」

 理由のない暴力はただの破壊。そこに聖月は一切の意味を見出せない。今回の皇帝に関する闘争というのは、まさにソレにあたると聖月は考えていた。

 暫く、握りしめた拳を見つめ、ぽたりぽたりと髪から雫が落ちる音を聞いていたが、静かに顔を上げた。凛とした光をその青い瞳に宿し、聖月は浴室を後にした。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...