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逆襲
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――Take1――
「えーと、生クリームを温めて、チョコレートを入れた器に映して溶かして、凍らせる」
ドバドバドバ。カチャチャチャチャ、ボフ。……ジジジジジ。
「……って焦げてる焦げてる!」
「はぁ?そんな短時間で……って煙?!」
「ちょ、止めてください会長!燃えてます!」
――Take2――
「えっと、溶かしたチョコレートとバターを混ぜたものに砂糖を加えて……」
カシャカシャ。ドバババ。
「え、ちょ、いれ過ぎ!」
「会長!食事の方の料理と違って、お菓子作りは分量が命です!」
「あ?甘い方が上手いんじゃねぇの?ほら」
ペロ。
「……ゲホっ!」
「会長?!」
「なにやって……ってしょっぱ?!塩入れたの?!ばかなの?!」
「いや、砂糖って書いてあった!間違いない!」
「確かに朝顔の性格的に間違ってるはずないし、ラベルにも書いてある……」
ピロン。
「ん?聖月からメッセージ?」
――塩と砂糖、間違えないようにね!ByカイトウH
「アイツか!」
「うっわ。もしかしなくてもやり返そうとしてる事バレて、しかもその舞台がこの部屋だって推測して、職権乱用で鍵拝借して、地味な嫌がらせしてきた?」
「もう止めませんかホント……」
――Take3――
「砂糖いれて、卵入れて、えー、粉を入れる?」
ザザザザ。カシャカシャ。ポトポトポト。カシャカシャ。ダババババ、バフッ!
「ギャー!」
「ちょ、会長!一気に袋ひっくり返す馬鹿がどこにっ!ゴホっ!」
「うわっ!煙っ!ゲフっ!って粉塵爆発するんじゃね?!ゴホっ!」
「するかバ会長!馬鹿言ってないでさっさと窓開けろ!ゲホゲホゲホっ!」
――Take4――
「やっと生地が完成だな」
「疲れた……このバ会長……」
「……次は料理ができるようになって頂いた方がいい気がしますね……」
「そもそもこれ以上料理しない方向の方が手っ取り早くて安全な気がするよ朝顔」
「おいそこ。失礼だぞ。後はオーブンで焼いて……」
ピピピ。ヴィーン。ゴォォォォ。
「うっしこれでおっけ」
……。
「って全然膨らまないんだが?」
「ええ?今度は何やらかしたの」
「ああ?俺は何もやってねぇよ」
「問題ないはずなのですが……あ、もしかして余熱」
「ってか壊れてんじゃねぇのかこの機械!」
ガツン!
「ガツン……?って何してるんですか!」
「え、壊れてるみたいだから蹴ったら治るかと」
「馬鹿ですか貴方は!蹴ったらなおるって昭和か!予熱していないオーブンでお菓子作りなんて阿呆な事する方が悪いんですよ!貴方の頭の方をぶん殴りましょうか?!」
――Take5――
「……従者に殴られる主なんてめったにいないだろう……」
「だったら殴られない普通の主に成れるよう努力してください」
「あははは。ここの主従も滅茶苦茶だねぇ。ウチも似たようなもんだけど。さて、余熱おっけー、生地おっけー。焼くぞー」
ピピピ。ヴィーン。ゴォォォォ。
「よし。今度こそ、成功するはず」
……。
「……ねぇ。なんか焦げ臭くない?」
「……奇遇ですね。同じこと思ってました」
「ああ?確かにそうだが、お菓子作りってこんななんじゃねぇの?」
「な訳あるかアホ!」
ブワワワワ。
「って、ちょ、煙?!」
「焦げてる焦げてる!」
「これどうすんだ?!コンセント抜くか?!」
「抜いてどうする?!っていうかとりあえずスイッチ切って……」
ゴォォォォ!!
「って燃えてる燃えてる!このままじゃ火事!」
「消火器持ってこい!このままじゃ寮が燃え……!」
「ギャー!!」
「……と言う訳でして」
「うん。まあ、なんとなくそんな気がしてた」
頭を抱える嵯峨野。悠茉は引きつる顔が元に戻らず視線も泳いでいる。完璧に料理初心者がやらかす事をひたすらやりまくったらしい。
「これ以上続けていては私の部屋が……」
「あはは。朝顔の部屋がなくなっちゃうどころか、寮がなくなって百人単位で家無し未成年者が発生するね」
「……」
苦労してきたんだな、と肩を叩く悠茉に泣きそうな顔を向ける嵯峨野。そこに颯斗まで参戦して、その一帯だけ謎の感動空間が生まれている。意味不明だ。
「って事で、ここの厨房貸して欲しいんだが」
「どういう繋がりだ!ウチを燃やす気か?!新手の嫌がらせか何かか?!」
けろっとした顔で頼み込む高宮。空気を読むもくそもない状態である。ぎょっとして振り向いた悠茉が必死の形相で首を振るが、しかし、その腕をがっしり掴む二つの手が。
「うーん。悪いんだけど、ここまで来たらやり切らなきゃ満足できなくて」
「すみませんが、ウチの主はやり切らないと際限なく暴走するものでして……。いっそのこと完全燃焼させたいのでご協力願えませんか?プロが居れば多少はマシになるかと」
「てめぇら、俺に押し付けに来たなあのどうしようもない馬鹿の事!」
引きはがそうにも引きはがせず。押し問答は悠茉の完敗だった。そもそも不利な条件が重なりすぎている。貸しだからな!と負け惜しみの様に叫ぶ悠茉の尊い犠牲の元、漸く三人のはかりごとがスタートした。
ちなみに。
「やっぱり俺の店を壊す気だろう!」
と作業中になんど悠茉が叫んだかは、定かではない。
「えーと、生クリームを温めて、チョコレートを入れた器に映して溶かして、凍らせる」
ドバドバドバ。カチャチャチャチャ、ボフ。……ジジジジジ。
「……って焦げてる焦げてる!」
「はぁ?そんな短時間で……って煙?!」
「ちょ、止めてください会長!燃えてます!」
――Take2――
「えっと、溶かしたチョコレートとバターを混ぜたものに砂糖を加えて……」
カシャカシャ。ドバババ。
「え、ちょ、いれ過ぎ!」
「会長!食事の方の料理と違って、お菓子作りは分量が命です!」
「あ?甘い方が上手いんじゃねぇの?ほら」
ペロ。
「……ゲホっ!」
「会長?!」
「なにやって……ってしょっぱ?!塩入れたの?!ばかなの?!」
「いや、砂糖って書いてあった!間違いない!」
「確かに朝顔の性格的に間違ってるはずないし、ラベルにも書いてある……」
ピロン。
「ん?聖月からメッセージ?」
――塩と砂糖、間違えないようにね!ByカイトウH
「アイツか!」
「うっわ。もしかしなくてもやり返そうとしてる事バレて、しかもその舞台がこの部屋だって推測して、職権乱用で鍵拝借して、地味な嫌がらせしてきた?」
「もう止めませんかホント……」
――Take3――
「砂糖いれて、卵入れて、えー、粉を入れる?」
ザザザザ。カシャカシャ。ポトポトポト。カシャカシャ。ダババババ、バフッ!
「ギャー!」
「ちょ、会長!一気に袋ひっくり返す馬鹿がどこにっ!ゴホっ!」
「うわっ!煙っ!ゲフっ!って粉塵爆発するんじゃね?!ゴホっ!」
「するかバ会長!馬鹿言ってないでさっさと窓開けろ!ゲホゲホゲホっ!」
――Take4――
「やっと生地が完成だな」
「疲れた……このバ会長……」
「……次は料理ができるようになって頂いた方がいい気がしますね……」
「そもそもこれ以上料理しない方向の方が手っ取り早くて安全な気がするよ朝顔」
「おいそこ。失礼だぞ。後はオーブンで焼いて……」
ピピピ。ヴィーン。ゴォォォォ。
「うっしこれでおっけ」
……。
「って全然膨らまないんだが?」
「ええ?今度は何やらかしたの」
「ああ?俺は何もやってねぇよ」
「問題ないはずなのですが……あ、もしかして余熱」
「ってか壊れてんじゃねぇのかこの機械!」
ガツン!
「ガツン……?って何してるんですか!」
「え、壊れてるみたいだから蹴ったら治るかと」
「馬鹿ですか貴方は!蹴ったらなおるって昭和か!予熱していないオーブンでお菓子作りなんて阿呆な事する方が悪いんですよ!貴方の頭の方をぶん殴りましょうか?!」
――Take5――
「……従者に殴られる主なんてめったにいないだろう……」
「だったら殴られない普通の主に成れるよう努力してください」
「あははは。ここの主従も滅茶苦茶だねぇ。ウチも似たようなもんだけど。さて、余熱おっけー、生地おっけー。焼くぞー」
ピピピ。ヴィーン。ゴォォォォ。
「よし。今度こそ、成功するはず」
……。
「……ねぇ。なんか焦げ臭くない?」
「……奇遇ですね。同じこと思ってました」
「ああ?確かにそうだが、お菓子作りってこんななんじゃねぇの?」
「な訳あるかアホ!」
ブワワワワ。
「って、ちょ、煙?!」
「焦げてる焦げてる!」
「これどうすんだ?!コンセント抜くか?!」
「抜いてどうする?!っていうかとりあえずスイッチ切って……」
ゴォォォォ!!
「って燃えてる燃えてる!このままじゃ火事!」
「消火器持ってこい!このままじゃ寮が燃え……!」
「ギャー!!」
「……と言う訳でして」
「うん。まあ、なんとなくそんな気がしてた」
頭を抱える嵯峨野。悠茉は引きつる顔が元に戻らず視線も泳いでいる。完璧に料理初心者がやらかす事をひたすらやりまくったらしい。
「これ以上続けていては私の部屋が……」
「あはは。朝顔の部屋がなくなっちゃうどころか、寮がなくなって百人単位で家無し未成年者が発生するね」
「……」
苦労してきたんだな、と肩を叩く悠茉に泣きそうな顔を向ける嵯峨野。そこに颯斗まで参戦して、その一帯だけ謎の感動空間が生まれている。意味不明だ。
「って事で、ここの厨房貸して欲しいんだが」
「どういう繋がりだ!ウチを燃やす気か?!新手の嫌がらせか何かか?!」
けろっとした顔で頼み込む高宮。空気を読むもくそもない状態である。ぎょっとして振り向いた悠茉が必死の形相で首を振るが、しかし、その腕をがっしり掴む二つの手が。
「うーん。悪いんだけど、ここまで来たらやり切らなきゃ満足できなくて」
「すみませんが、ウチの主はやり切らないと際限なく暴走するものでして……。いっそのこと完全燃焼させたいのでご協力願えませんか?プロが居れば多少はマシになるかと」
「てめぇら、俺に押し付けに来たなあのどうしようもない馬鹿の事!」
引きはがそうにも引きはがせず。押し問答は悠茉の完敗だった。そもそも不利な条件が重なりすぎている。貸しだからな!と負け惜しみの様に叫ぶ悠茉の尊い犠牲の元、漸く三人のはかりごとがスタートした。
ちなみに。
「やっぱり俺の店を壊す気だろう!」
と作業中になんど悠茉が叫んだかは、定かではない。
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