勘当された少年と不思議な少女

レイシール

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 第4章 馬車

第50話 地図

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 俺はエルザから貰った地図をそっと広げながら、ルネサスに尋ねた。

「この乗り合いバスの終点って、どのあたりなんですか?」

 その瞬間、ルネサスの目が地図に釘付けになり……

「えっ!? な、なんでお前……地図なんて持ってんだっ!?」

 思いもよらぬ大声に、バス乗り場の周囲が一瞬にしてざわついた。

「……っ!」

 視線が、集まる。

 俺もアリーも、慌てて身を縮めた。

「あー……ご、ごめん……」
 ルネサスが小声で謝るが、時すでに遅し。俺も慌てて返した。

「いえ……。詳しいことは後で話します」

 ちらりと周囲を見渡すと、こちらに注意を向けている人がちらほらと……。

 ルネサスもようやくその空気を察したのか、小さく頷いた。

「……そうだな。後で、な」

 その直後、背後から小声の会話が聞こえてきた。

「ディーン、なんかあったのか? 地図って……」

「おいルネサス、どういうことだ?」

「……ここでは言えない。あとで教える」

 ますます注目を浴びる前に、話を打ち切るように言ったその言葉に、俺も深く同意した。

 ……目立つのは、本当に勘弁だ。

 アリーが心配そうに顔を覗き込む。

「ラン……」

「ご、ごめん……。ルネサスさんに地図見せたら、まさかあんなに驚くとは……」

 自分の行動を後悔しつつ、俺はそっと地図をたたんだ。

「まぁ、ランは元・貴族だったからね……」

 アリーが周囲に聞こえないよう、そっと言った。

「うっ……何も言い返せない……」

 俺が落ち込んだのが伝わったのか、アリーは苦笑しながら言葉を継いだ。

「でも……平民の暮らしや空気って、すぐには分からないものだし。仕方ないよ……」
「ご、ごめん……」
心から反省しつつ、俺は肩を落とした。

「落ちついてるディーンさんにランの事、伝えるよ」
「う、うん。お願い……」
 
 その後……

「ディーンさん、少しお時間いいですか?」

 アリーが声をかけると、ディーンは穏やかな顔で応じた。

「ん? アリー、どうしたの?」

「ランのことなんですが……」

「……なるほど。でも、ルネサスに言った方がいいんじゃ?」

 アリーはちらりとルネサスを見て、小さく首を横に振った。

「今の状態のルネサスさんに言ったら……たぶん、大騒ぎになります」

 ディーンもその様子を一目見て、納得したようにうなずいた。

「あぁ……確かに、今はやめといた方がいいな。わかった、聞くよ」

 そして、アリーは俺の置かれている状況、元貴族としての感覚のズレや、平民社会での不慣れさ……を丁寧に説明してくれた。

「ありがとう、アリー。後で、誰もいない場所でみんなに伝えても大丈夫かな?」

「はい。そのつもりで話しましたから」

「よし。じゃあ、タイミングを見て……ちゃんと伝えるよ」

「ランも、それでいい?」

「はい……。お願いします。俺じゃ、うまく話せないと思うから……」

 ようやく気持ちが少し落ち着いてきた。ディーンの冷静な態度に救われた気がする。
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