70 / 159
第4章 馬車
第68話 休憩
しおりを挟む
馬車引きも一息つくようで、手綱を緩めながら言った。
「次の出発は……10分後だからな」
「えっ!? そんなに早いの!?」
アリーが思わず大声を上げる。
「まあ……ちょっとした買い物をするくらいの休憩だからな」
ルネサスが落ち着いた声でそう説明してくれたけれど、俺はどうしても気になって、ディーンに尋ねた。
「『ちょっとした買い物』って、具体的には何を?」
「ああ……俺たちも、馬車引きも、食べ物を買わないと何も食べられないだろ?」
「……あ、はい。確かに」
俺は頷きながら、その言葉の意味をかみしめた。
「だから、大体は空の様子を見ながら、休憩時間を決めるんだよ。今日は天気も悪くないし、ちゃちゃっと済ませたいみたいだな」
マックがそう言って、俺たちを軽く促す。
「よし、少しだけでも腹に入れておこう。行こうぜ」
その時、アリーが不思議そうに尋ねた。
「皆さんはこういう時、いつも何を食べてるんですか?」
「そうだな……俺たちは大体、『串焼き』と水だよ」
その言葉に、俺は素直な疑問を口にしてしまう。
「……ねぇ、『串焼き』って、なに?」
一瞬、周りがシーンとした。みんなが目を丸くして、固まったような空気になる。
最初に正気を取り戻したのはマックだった。
「えっ……まさか、ラン……串焼き知らないのか?」
「う、うん……。貴族の家で出てきたことはなかったから……」
その返事に、あぁ……とみんなが納得したような声をもらす。
「そっか……そういやランって、元は貴族だったんだよな」
ディーンが苦笑まじりに言う。
「なんかもう、ランの態度が貴族っぽくないから、つい忘れちゃうんだよな……」
その言葉に、ルネサスも頷く。
「たぶん、『威張ってない』ってのが一番大きいかも。俺たち、貴族って言えばもっと偉そうで、距離あるもんだと思ってたし……」
「確かに……。ラン、貴族だって聞いても、すぐに忘れるくらい自然体だったよな」
マックも笑いながらそう言ってきた。
するとアリーが、俺の最初の質問を思い出したようにぱっと顔を上げる。
「あ、そうだ! ランが『串焼き』のこと聞いてたんだよね?」
「う、うん……」
俺が頷くと、アリーは苦笑しながら丁寧に説明してくれた。
「串焼きっていうのはね……長い串に肉や野菜を刺して、炭火とかで焼く料理のこと。まあ、街角で売ってるのはだいたい『肉オンリー』だけど」
「へぇ……それって美味しいの?」
「うん、手軽だし温かいし。旅の途中ではけっこう人気なんだよ」
「なるほど……。じゃあ、俺も食べてみようかな」
俺の言葉に、みんなが自然と笑ってくれた。
旅の最中、こうしてひとつずつ『初めて』を重ねていくのも……悪くないなって、ちょっとだけ思った。
「次の出発は……10分後だからな」
「えっ!? そんなに早いの!?」
アリーが思わず大声を上げる。
「まあ……ちょっとした買い物をするくらいの休憩だからな」
ルネサスが落ち着いた声でそう説明してくれたけれど、俺はどうしても気になって、ディーンに尋ねた。
「『ちょっとした買い物』って、具体的には何を?」
「ああ……俺たちも、馬車引きも、食べ物を買わないと何も食べられないだろ?」
「……あ、はい。確かに」
俺は頷きながら、その言葉の意味をかみしめた。
「だから、大体は空の様子を見ながら、休憩時間を決めるんだよ。今日は天気も悪くないし、ちゃちゃっと済ませたいみたいだな」
マックがそう言って、俺たちを軽く促す。
「よし、少しだけでも腹に入れておこう。行こうぜ」
その時、アリーが不思議そうに尋ねた。
「皆さんはこういう時、いつも何を食べてるんですか?」
「そうだな……俺たちは大体、『串焼き』と水だよ」
その言葉に、俺は素直な疑問を口にしてしまう。
「……ねぇ、『串焼き』って、なに?」
一瞬、周りがシーンとした。みんなが目を丸くして、固まったような空気になる。
最初に正気を取り戻したのはマックだった。
「えっ……まさか、ラン……串焼き知らないのか?」
「う、うん……。貴族の家で出てきたことはなかったから……」
その返事に、あぁ……とみんなが納得したような声をもらす。
「そっか……そういやランって、元は貴族だったんだよな」
ディーンが苦笑まじりに言う。
「なんかもう、ランの態度が貴族っぽくないから、つい忘れちゃうんだよな……」
その言葉に、ルネサスも頷く。
「たぶん、『威張ってない』ってのが一番大きいかも。俺たち、貴族って言えばもっと偉そうで、距離あるもんだと思ってたし……」
「確かに……。ラン、貴族だって聞いても、すぐに忘れるくらい自然体だったよな」
マックも笑いながらそう言ってきた。
するとアリーが、俺の最初の質問を思い出したようにぱっと顔を上げる。
「あ、そうだ! ランが『串焼き』のこと聞いてたんだよね?」
「う、うん……」
俺が頷くと、アリーは苦笑しながら丁寧に説明してくれた。
「串焼きっていうのはね……長い串に肉や野菜を刺して、炭火とかで焼く料理のこと。まあ、街角で売ってるのはだいたい『肉オンリー』だけど」
「へぇ……それって美味しいの?」
「うん、手軽だし温かいし。旅の途中ではけっこう人気なんだよ」
「なるほど……。じゃあ、俺も食べてみようかな」
俺の言葉に、みんなが自然と笑ってくれた。
旅の最中、こうしてひとつずつ『初めて』を重ねていくのも……悪くないなって、ちょっとだけ思った。
1
あなたにおすすめの小説
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約
Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。
腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。
地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。
彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。
「死んで、私の影になれ」
彼女は知っていた。
この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。
そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。
これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。
最弱Sランク冒険者は引退したい~仲間が強すぎるせいでなぜか僕が陰の実力者だと勘違いされているんだが?
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
冒険者のノエルはSランクパーティーの荷物もちだった。
ノエル自体に戦闘能力はなく、自分のことを足手まといだとすら思っていた。
そして、Sランクになったことで、戦うモンスターはより強力になっていった。
荷物持ちであるノエルは戦闘に参加しないものの、戦場は危険でいっぱいだ。
このままじゃいずれ自分はモンスターに殺されてしまうと考えたノエルは、パーティーから引退したいと思うようになる。
ノエルはパーティーメンバーに引退を切り出すが、パーティーメンバーはみな、ノエルのことが大好きだった。それどころか、ノエルの実力を過大評価していた。
ノエルがいないとパーティーは崩壊してしまうと言われ、ノエルは引退するにできない状況に……。
ノエルは引退するために自分の評判を落とそうとするのだが、周りは勘違いして、ノエルが最強だという噂が広まってしまう。
さらにノエルの評判はうなぎのぼりで、ますます引退できなくなるノエルなのだった。
他サイトにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる