勘当された少年と不思議な少女

レイシール

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 第4章 馬車

第69話 串焼き

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 俺はディーンたちの後についていき、街角に立つ串焼きの屋台まで歩いた。

 その時、不意にルネサスが俺の方に目をやり、少し鋭い口調で言った。

「……おい、ラン。たぶん今まで食べてきたものとは色々違うと思う。だけど、いちいち驚いたり、誰かに聞こうとするなよ」

 その言葉には、どこか気遣いの裏返しのような『圧』があった。

 俺は少し驚きながらも、彼の意図に気付く。

(……あぁ、心配してくれてるんだな。元・貴族の俺が、変な目で見られないように)

「……はい、わかりました」

 小さく頷いてから、ふと思い付いた疑問を投げた。

「でも、ディーンさんたちに聞くのはダメ?それとも……聞いても大丈夫?」

 すると、ディーンが少し肩をすくめてため息を吐いた。

「内容によるけどな。何を聞きたいんだ?」

「えっと……昨日の続きで、平民の常識について……」

 話しながら、だんだん声が小さくなっていく。自分でも情けないとは思うけど、知らないことばかりで恥ずかしい。

「す、すみません……迷惑かけて」

「別に気にすることないよ。だってランは貴族だったんだろ?知らないのが普通」

 ディーンがあっさりとそう言った。

「これがマックやルネサスだったら“知ってて当然”だから怒るけどさ」

 その言葉に、マックとルネサスがピクッと反応した。

「ゔ……」

 二人は何やらバツが悪そうに視線を泳がせる。

「……あれ? どうしたんですか?」

 俺が首をかしげると、マックが慌てて首を横に振った。

「い、いや。なんでもない」

 明らかに“なんでもある”感じだったけど……あえて深追いはしないでおいた。

 それを横目で見ながら、俺はディーンに再び尋ねる。

「えーと、じゃあ……まずは貴族の食事と平民の食事の違いから教えてくれませんか?」

「うん、いいよ。確認しておいたほうがいいね」

 俺は少し恥ずかしそうに、昔の食事スタイルを口にする。

「俺の家では、料理は『揚げる・蒸す・焼く・茹でる』が基本だった。……だから平民も同じだと思ってたんだけど」

「いやいや。平民の料理はほぼ『焼く』と『茹でる』だけだよ」

「えっ!? そうなの!?」

 思わず声を張り上げてしまった俺に、周囲の人々がちらちらと視線を向ける。恥ずかしくて、顔から火が出そうだ。

 アリーがすっと肘で小突いてくれて、我に返る。

「ラン……。あんまり目立つと困るよ」

「……ごめん、ありがとう」

 アリーに促されて屋台から少し離れると、ふと気付いた。

「そっか……昼ごはん、これがメインになるんだよね」

「そうそう。今食べないと、次はしばらく食べられないよ?」

「じゃあ……どこで買ってるの?」

「あそこだよ。角を曲がったところに並んでるでしょ?」
と、ディーンが教えてくれた。

 見ると数人並んでいるが、そこまで時間はかからなさそうだった。

「ランとアリーは何本食べるんだ?」

 ディーンがそう聞いてきたので、アリーが答える。

「私とランは2本ずつで大丈夫です。味も、みんなと同じでお願いします」

「了解。ルネサス、手伝ってくれるか?」

「あぁ、わかってる。俺たちの分と……ランたちの分だな?」

「うん、特にランの分は別にしてあげて。初めての味は第一印象が大事だからね」

 その言葉に、ルネサスも納得したように頷く。

「確かにな。変な組み合わせで『まずい』と思ったら、食べられなくなるかもしれないしな」

 そんな会話を交わしながら、ディーンとルネサスは屋台へと向かっていった。
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