勘当された少年と不思議な少女

レイシール

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 第4章 馬車

第68話 休憩

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 馬車引きも一息つくようで、手綱を緩めながら言った。

「次の出発は……10分後だからな」

「えっ!? そんなに早いの!?」

 アリーが思わず大声を上げる。

「まあ……ちょっとした買い物をするくらいの休憩だからな」

 ルネサスが落ち着いた声でそう説明してくれたけれど、俺はどうしても気になって、ディーンに尋ねた。

「『ちょっとした買い物』って、具体的には何を?」

「ああ……俺たちも、馬車引きも、食べ物を買わないと何も食べられないだろ?」

「……あ、はい。確かに」

 俺は頷きながら、その言葉の意味をかみしめた。

「だから、大体は空の様子を見ながら、休憩時間を決めるんだよ。今日は天気も悪くないし、ちゃちゃっと済ませたいみたいだな」

 マックがそう言って、俺たちを軽く促す。

「よし、少しだけでも腹に入れておこう。行こうぜ」

 

 その時、アリーが不思議そうに尋ねた。

「皆さんはこういう時、いつも何を食べてるんですか?」

「そうだな……俺たちは大体、『串焼き』と水だよ」

 その言葉に、俺は素直な疑問を口にしてしまう。

「……ねぇ、『串焼き』って、なに?」

 一瞬、周りがシーンとした。みんなが目を丸くして、固まったような空気になる。

 最初に正気を取り戻したのはマックだった。

「えっ……まさか、ラン……串焼き知らないのか?」

「う、うん……。貴族の家で出てきたことはなかったから……」

 その返事に、あぁ……とみんなが納得したような声をもらす。

「そっか……そういやランって、元は貴族だったんだよな」

 ディーンが苦笑まじりに言う。

「なんかもう、ランの態度が貴族っぽくないから、つい忘れちゃうんだよな……」

 その言葉に、ルネサスも頷く。

「たぶん、『威張ってない』ってのが一番大きいかも。俺たち、貴族って言えばもっと偉そうで、距離あるもんだと思ってたし……」

「確かに……。ラン、貴族だって聞いても、すぐに忘れるくらい自然体だったよな」

 マックも笑いながらそう言ってきた。

 

 するとアリーが、俺の最初の質問を思い出したようにぱっと顔を上げる。

「あ、そうだ! ランが『串焼き』のこと聞いてたんだよね?」

「う、うん……」

 俺が頷くと、アリーは苦笑しながら丁寧に説明してくれた。

「串焼きっていうのはね……長い串に肉や野菜を刺して、炭火とかで焼く料理のこと。まあ、街角で売ってるのはだいたい『肉オンリー』だけど」

「へぇ……それって美味しいの?」

「うん、手軽だし温かいし。旅の途中ではけっこう人気なんだよ」

「なるほど……。じゃあ、俺も食べてみようかな」

 俺の言葉に、みんなが自然と笑ってくれた。
 旅の最中、こうしてひとつずつ『初めて』を重ねていくのも……悪くないなって、ちょっとだけ思った。


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