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新学期!!
身内の愉快な仲間たち
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「で、モデルになれって本気なのか?」
「冗談でお前の顔を弄ったりせんべ。神殿が夷川しかおらんと言うんじゃよ。まあ、断られてもモデルである事はもう変わらんじゃろうが」
拒否権はないのか……まあ、別にいいけどな。時折、こちらをジッと見つめてくる呉須の視線を感じながら、カフェオレの紙パックにストローをさした。
「でも元は髭が、番長がモデルなんだろ」
「そうらしいのう、じゃがキャラデザをするのは神殿で、それの可否を決めるのはワシじゃから、モデルは夷川に決まりなんじゃ。飯田に決定権はない」
由々式が断言すると、背後でまた荒々しく椅子が倒れる音がした。ズカズカと飯田が詰め寄って来る。
「……………………」
明らかにケンカを売るような目つきで、飯田がオレを凝視し始めた。今度は一切手を出して来ないので、オレも黙って睨み返すだけに留める。
しっかし、どうにも飯田の顔には見覚えがあるんだよなあ……とオレが真剣に記憶を漁り出した頃、飯田は「クソッ」と小さく悪態を吐き、オレらの向かいに椅子を動かし相席してきた。
「飯田も神殿がここまで推す夷川に異議はないじゃろ」
黙々とサンドウィッチにかぶり付く飯田は、面白くなさそうにこちらを一瞥した後残りを強引に口に押し込んだ。
「ッう!」
口に無理矢理ねじ込んだサンドウィッチが喉に詰まったらしく、飯田はその場で呻きだした。
「あッ!」
飯田の顔に苦渋が広がった時、オレは場違いな声を上げた。オレンジジュースにストローをさして飯田に手渡す由々式が、不思議そうな顔で「どうした?」と聞いてくる。
「いや、なんでもない。ちょっと、スッキリしただけだ」
ドス黒赤い飯田の顔色を見て思い出した。それは初日のバスで、スバルに絞め落とされた奴の顔だった。
半年前と変わらず、同級生には見えないオッサン面した奴だが、窒息から脱した飯田は、きっとマンガの内容についてだろう、由々式と真剣な顔で口論を始めた。
理解出来ない言葉と唾の応酬に巻き込まれないよう、こっそり席を移動する。ついでに床に投げ捨てられた紙束を拾い上げる。
少し興味をそそられ、さっきは流した内容に目を通してみた。由々式に散々クソだと罵られていた飯田の作った話は、オッサン面した奴が考えたとは思えない、純粋な少年マンガだった。夢と希望と冒険が、ゴロゴロと詰まっている、洗練されたかっこよさはないが面白そうな話だ。
あらすじを読んでいると、スッと差し出されたスケッチブックがオレの視界を遮った。
「……ん、呉須か。どうした?」
顔を上げると物言わぬ呉須が、ジッとこちらを見つめていたので声をかけた。
これを見てくれ、そう言われている気がして、スケッチブックを受け取りページを捲る。つい最初のページのエロ絵で手を止めそうになるが、呉須の視線を一身に受ける中で見入るのは恥ずかしかったので、大人しくページを捲り続ける。
オレをモデルにしたという主人公の絵が何枚も描いてあった。最初は単調な絵だったが、ページが進む度にそいつは活発に動き出し、思わず感嘆の声を小さく上げてしまう。本当にマンガみたいだ。走ったり飛んだり飯を食ったり……。
「絵の方が美味しそうだな」
スケッチブックの中の男が、美味しそうなサンドウィッチにかぶりついているのを見て、苦笑してしまった。
「お、こっからは女か。分かったぞ、ヒロインだろ、当たりか?」
美味しそうな絵を捲ると、次のページには女が三人並んで描かれていた。呉須はオレの得意げな問いにコクンと頷き答えた後、女を一人ずつ指さしながら小さく首を傾げる。んー、確証はないが、この三人はヒロイン候補って所かな? で、オレならどれが好きか聞かれている……のか?
「あー……そうだな。どれでもいいんじゃねーか。三人共、味がある……と言うか、どれ選んでも人気出そうじゃん」
由々式のように詳しくないので、マンガの善し悪しは分からない。答えを避けて、そう言うと、呉須はスラスラとスケッチブックの端に『どんな子が好き?』と書き足し直接尋ねてきた。
「そんなん聞いてどうすんだよ」
照れ臭くて、少し突っぱねたような言葉になってしまったが、呉須は必要なんだと言いたげな目で、黙ってオレを見つめている。由々式と飯田がまだ口論しているのを肩越しに確認して、オレは溜め息を一つ吐いて考えてみる事にした。
「そうだな……背が高くて、顔は間抜けな感じだな」
先輩を頭に思い浮かべ、慎重にその姿を言葉に移していく。
あんまり言うと先輩は嫌がるだろうけど、痛々しいはずの傷痕もオレは好きだ。見せてくれた事が、先輩の信頼の証みたいな気がする。
あと傷痕も含めて体がきれいだ。無駄な所が一切ない。男として生まれたなら、こうありたいって思うような立派なちんこも持っているしな。
「あー……性格は優しいのがいいな。控えめな方が好きだ」
ヒロインの参考にちんこのサイズは必要ない。てか、好きなタイプを聞かれてデカチンとか答えたら、完全にホモ宣言だ。ついポロッと出てしまいそうになった危険ワードを飲み込み、動揺しながらも無難な言葉を選ぶ。
「お節介なくらい甘やかすくせに、殺意覚えるほど鈍感だったり……バランス悪い奴だよな」
話していると、昨夜の先輩が思い出されて、胸がギュッと掴まれるような、堪らなく切ない気持ちでいっぱいになる。
「いっつも人をガキ扱いするけど、オレと同じくらい寂しがりで、なんか放っておけない……ような奴……かな?」
自分で言っていて、恥ずかしくなってきた。語尾で誤魔化せないかと思ったが、呉須は珍獣を見るような目でジッとオレを見つめてくる。オレの完全な惚気発言を一つ一つ吟味するよう、呉須は小さく三回頷くと、またスケッチブックを取り自分の席へ戻って行った。
「……なんか、悪い事したかな」
どんな子が好きかと聞かれて、普通に好きな奴の事を答えてしまったが、ヒロインを描くのに参考にしようと思って聞いたんだよな。
先輩が女になったら、どんな感じなのか……そう考えると、鉛筆を持ったきりピクリとも動かない呉須に対して、心の底から申し訳ないと思ってしまった。
呉須が長考に入った事で、オレは完全に手持ち無沙汰になった。まあ、モデルと言っても呉須はポーズを取れとか言うタイプではないらしいが、とにかくオレは一人やる事がなく(由々式も事務作業があるとかで忙しそうにし出した)部屋に積まれた資料としてカウントされている今流行のマンガを読んで時間を潰した。
マンガは面白かったが、他の事で頭がいっぱいのオレは、室内に掛けられた時計を数分置きに確認しながら、補習が終わるのを今か今かと待っていた。
あと数分で昼休みを告げるチャイムが鳴るという時、ふいに外から部屋の扉が開かれた。
「そろそろ昼にしよか」
そこに居たのは、大きな包みを持った闇市で、オレは思わず身構えてしまう。
「今日の飯はなんです?」
闇市の登場に、作業を中断して由々式はいち早く反応した。中身は弁当だろうか、風呂敷包みを受け取りながら気安く話しかける。
「鶏を揚げたんに葱のソースがかかっとったよ。全体的に中華やったわ。聞くのん忘れとったけど、夷川はいけるか?」
「毎日配給を食うとる男です。心配は無用だべ、なあ夷川」
配給はイコールで好き嫌いなしと見なされるようだ。食える前提で出される物なら、なんでも食ってきたので間違いではないが、オレは闇市の持って来た弁当を見向きもせずに立ち上がった。
「悪い、オレ昼は抜けるわ。先輩の様子見てくる。いくら補習でも昼休みくらい取れるだろうから」
部屋を狭くする資料の山のせいで、闇市と至近距離ですれ違う。
「その『先輩』言うんは金城の事か?」
黙って通り過ぎようとするオレをまるで挑発するように、闇市は言葉一つで引き留めた。
「……あんたには関係ないだろ」
抑えようとしても感情が声に乗り、その場の空気を凍りつかせる。
「その『補習』言うんは、隣でやっとるアレの事か?」
闇市はオレを無視して更に言葉を続けた。
「そうなんです。なんか急に金城先輩が補習になったらしくて、寮で待つよりここの方が近いので、ここで待つようワシが誘ったんです」
何が言いたいんだと、苛々し始めたオレの代わりに、由々式が穏便に返答してくれる。文句あるのかと言葉ではなく視線で答えると、闇市はどこからともなく取り出した扇子を口元に当て「そら、けったいな話や」と予期せぬ事を言い出した。
「日曜にやっとる授業はな、受験の為のもんや。進学を希望しとらん金城には関係ないんとちゃうか?」
先輩とは関係ない? どういう意味だ。
「覗きに行っても、金城は居らんと思うよ」
オレは闇市の言葉に突き動かされるように部屋を飛び出した。
「冗談でお前の顔を弄ったりせんべ。神殿が夷川しかおらんと言うんじゃよ。まあ、断られてもモデルである事はもう変わらんじゃろうが」
拒否権はないのか……まあ、別にいいけどな。時折、こちらをジッと見つめてくる呉須の視線を感じながら、カフェオレの紙パックにストローをさした。
「でも元は髭が、番長がモデルなんだろ」
「そうらしいのう、じゃがキャラデザをするのは神殿で、それの可否を決めるのはワシじゃから、モデルは夷川に決まりなんじゃ。飯田に決定権はない」
由々式が断言すると、背後でまた荒々しく椅子が倒れる音がした。ズカズカと飯田が詰め寄って来る。
「……………………」
明らかにケンカを売るような目つきで、飯田がオレを凝視し始めた。今度は一切手を出して来ないので、オレも黙って睨み返すだけに留める。
しっかし、どうにも飯田の顔には見覚えがあるんだよなあ……とオレが真剣に記憶を漁り出した頃、飯田は「クソッ」と小さく悪態を吐き、オレらの向かいに椅子を動かし相席してきた。
「飯田も神殿がここまで推す夷川に異議はないじゃろ」
黙々とサンドウィッチにかぶり付く飯田は、面白くなさそうにこちらを一瞥した後残りを強引に口に押し込んだ。
「ッう!」
口に無理矢理ねじ込んだサンドウィッチが喉に詰まったらしく、飯田はその場で呻きだした。
「あッ!」
飯田の顔に苦渋が広がった時、オレは場違いな声を上げた。オレンジジュースにストローをさして飯田に手渡す由々式が、不思議そうな顔で「どうした?」と聞いてくる。
「いや、なんでもない。ちょっと、スッキリしただけだ」
ドス黒赤い飯田の顔色を見て思い出した。それは初日のバスで、スバルに絞め落とされた奴の顔だった。
半年前と変わらず、同級生には見えないオッサン面した奴だが、窒息から脱した飯田は、きっとマンガの内容についてだろう、由々式と真剣な顔で口論を始めた。
理解出来ない言葉と唾の応酬に巻き込まれないよう、こっそり席を移動する。ついでに床に投げ捨てられた紙束を拾い上げる。
少し興味をそそられ、さっきは流した内容に目を通してみた。由々式に散々クソだと罵られていた飯田の作った話は、オッサン面した奴が考えたとは思えない、純粋な少年マンガだった。夢と希望と冒険が、ゴロゴロと詰まっている、洗練されたかっこよさはないが面白そうな話だ。
あらすじを読んでいると、スッと差し出されたスケッチブックがオレの視界を遮った。
「……ん、呉須か。どうした?」
顔を上げると物言わぬ呉須が、ジッとこちらを見つめていたので声をかけた。
これを見てくれ、そう言われている気がして、スケッチブックを受け取りページを捲る。つい最初のページのエロ絵で手を止めそうになるが、呉須の視線を一身に受ける中で見入るのは恥ずかしかったので、大人しくページを捲り続ける。
オレをモデルにしたという主人公の絵が何枚も描いてあった。最初は単調な絵だったが、ページが進む度にそいつは活発に動き出し、思わず感嘆の声を小さく上げてしまう。本当にマンガみたいだ。走ったり飛んだり飯を食ったり……。
「絵の方が美味しそうだな」
スケッチブックの中の男が、美味しそうなサンドウィッチにかぶりついているのを見て、苦笑してしまった。
「お、こっからは女か。分かったぞ、ヒロインだろ、当たりか?」
美味しそうな絵を捲ると、次のページには女が三人並んで描かれていた。呉須はオレの得意げな問いにコクンと頷き答えた後、女を一人ずつ指さしながら小さく首を傾げる。んー、確証はないが、この三人はヒロイン候補って所かな? で、オレならどれが好きか聞かれている……のか?
「あー……そうだな。どれでもいいんじゃねーか。三人共、味がある……と言うか、どれ選んでも人気出そうじゃん」
由々式のように詳しくないので、マンガの善し悪しは分からない。答えを避けて、そう言うと、呉須はスラスラとスケッチブックの端に『どんな子が好き?』と書き足し直接尋ねてきた。
「そんなん聞いてどうすんだよ」
照れ臭くて、少し突っぱねたような言葉になってしまったが、呉須は必要なんだと言いたげな目で、黙ってオレを見つめている。由々式と飯田がまだ口論しているのを肩越しに確認して、オレは溜め息を一つ吐いて考えてみる事にした。
「そうだな……背が高くて、顔は間抜けな感じだな」
先輩を頭に思い浮かべ、慎重にその姿を言葉に移していく。
あんまり言うと先輩は嫌がるだろうけど、痛々しいはずの傷痕もオレは好きだ。見せてくれた事が、先輩の信頼の証みたいな気がする。
あと傷痕も含めて体がきれいだ。無駄な所が一切ない。男として生まれたなら、こうありたいって思うような立派なちんこも持っているしな。
「あー……性格は優しいのがいいな。控えめな方が好きだ」
ヒロインの参考にちんこのサイズは必要ない。てか、好きなタイプを聞かれてデカチンとか答えたら、完全にホモ宣言だ。ついポロッと出てしまいそうになった危険ワードを飲み込み、動揺しながらも無難な言葉を選ぶ。
「お節介なくらい甘やかすくせに、殺意覚えるほど鈍感だったり……バランス悪い奴だよな」
話していると、昨夜の先輩が思い出されて、胸がギュッと掴まれるような、堪らなく切ない気持ちでいっぱいになる。
「いっつも人をガキ扱いするけど、オレと同じくらい寂しがりで、なんか放っておけない……ような奴……かな?」
自分で言っていて、恥ずかしくなってきた。語尾で誤魔化せないかと思ったが、呉須は珍獣を見るような目でジッとオレを見つめてくる。オレの完全な惚気発言を一つ一つ吟味するよう、呉須は小さく三回頷くと、またスケッチブックを取り自分の席へ戻って行った。
「……なんか、悪い事したかな」
どんな子が好きかと聞かれて、普通に好きな奴の事を答えてしまったが、ヒロインを描くのに参考にしようと思って聞いたんだよな。
先輩が女になったら、どんな感じなのか……そう考えると、鉛筆を持ったきりピクリとも動かない呉須に対して、心の底から申し訳ないと思ってしまった。
呉須が長考に入った事で、オレは完全に手持ち無沙汰になった。まあ、モデルと言っても呉須はポーズを取れとか言うタイプではないらしいが、とにかくオレは一人やる事がなく(由々式も事務作業があるとかで忙しそうにし出した)部屋に積まれた資料としてカウントされている今流行のマンガを読んで時間を潰した。
マンガは面白かったが、他の事で頭がいっぱいのオレは、室内に掛けられた時計を数分置きに確認しながら、補習が終わるのを今か今かと待っていた。
あと数分で昼休みを告げるチャイムが鳴るという時、ふいに外から部屋の扉が開かれた。
「そろそろ昼にしよか」
そこに居たのは、大きな包みを持った闇市で、オレは思わず身構えてしまう。
「今日の飯はなんです?」
闇市の登場に、作業を中断して由々式はいち早く反応した。中身は弁当だろうか、風呂敷包みを受け取りながら気安く話しかける。
「鶏を揚げたんに葱のソースがかかっとったよ。全体的に中華やったわ。聞くのん忘れとったけど、夷川はいけるか?」
「毎日配給を食うとる男です。心配は無用だべ、なあ夷川」
配給はイコールで好き嫌いなしと見なされるようだ。食える前提で出される物なら、なんでも食ってきたので間違いではないが、オレは闇市の持って来た弁当を見向きもせずに立ち上がった。
「悪い、オレ昼は抜けるわ。先輩の様子見てくる。いくら補習でも昼休みくらい取れるだろうから」
部屋を狭くする資料の山のせいで、闇市と至近距離ですれ違う。
「その『先輩』言うんは金城の事か?」
黙って通り過ぎようとするオレをまるで挑発するように、闇市は言葉一つで引き留めた。
「……あんたには関係ないだろ」
抑えようとしても感情が声に乗り、その場の空気を凍りつかせる。
「その『補習』言うんは、隣でやっとるアレの事か?」
闇市はオレを無視して更に言葉を続けた。
「そうなんです。なんか急に金城先輩が補習になったらしくて、寮で待つよりここの方が近いので、ここで待つようワシが誘ったんです」
何が言いたいんだと、苛々し始めたオレの代わりに、由々式が穏便に返答してくれる。文句あるのかと言葉ではなく視線で答えると、闇市はどこからともなく取り出した扇子を口元に当て「そら、けったいな話や」と予期せぬ事を言い出した。
「日曜にやっとる授業はな、受験の為のもんや。進学を希望しとらん金城には関係ないんとちゃうか?」
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