圏ガク!!

はなッぱち

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新学期!!

ぱーふぇくとせきゅりてぃ

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「旦那様が管理する寮内で、不埒な輩を野放しにする訳にはいかん。そいつの名を言え夷川。成敗する」

 鼻息荒く、急かすように抱えた布団を揺さ振られる。興津の名前を出すや、一直線に突進していきそうで、自分の浅はかさを呪いつつ、布団越しの相手を持て余した。

「いや名前までは……分からなかったんですが、その、どうも三年……だったみたいで」

 苦し紛れにオレが言うと、執事モドキは鼻息をピタリと止め、急に静かになった。

「山野辺……先輩?」

 抱えた布団を下ろし、牛の様子を覗けば、口をへの字に曲げ呻く姿が見えた。目が合うと「名前か、顔か、なんでもいい。分からんか」と聞かれたので、これ幸いと学年しか分からなかったと今度は言い切った。

「三年は今、大事な時期だと思うんです……こんな下らない事で騒ぎにしたくない」

 渋い顔をする執事モドキの本心を探る。オレの言葉に「うむ」と頷くのを確認して、ホッと胸を撫で下ろす。受験勉強に取り組む髭に対して、思う事は同じらしく、無関係な三年を巻き込みたくないのだろう。

 それはオレにとっても好都合だ。

「でも、自衛はしたいんです。これ以上好き勝手されるのも癪だし。あー、だから、山野辺先輩にも協力して欲しいんですが、よろしいですか?」

「お前が相手の顔も覚えていないのであらば、仕方ない。向こうが性懲りもなくやって来るのを待つしかないとは実に歯痒いが、安心しろ。旦那様の管理なさるこの寮に踏み居る不埒者は、この山野辺雫が必ず返り討ちにしてやろう」

「心強いです。では今後、寮長に近づく三年がいたら、問答無用でぶちのめして下さい」

「何故そこで旦那様が出てくる?」

 あっさり『任せろ!』と快諾してくれるかと思ったが、意外と細かい所を気にしやがる。

「オレらの部屋を荒らした奴らを見た一年に聞いたんです。次は寮長を狙うと、そいつらが話していたって」

 怪訝な顔をする執事モドキを納得させる為、即席ででっち上げる。

「なぁにィッ! そういう事は早く言わんか夷川ぁ! こうしている間にも坊ちゃんに何かあったらどうする!」

 真っ青な顔をした執事モドキは、布団ごとオレを放り投げ、廊下を一目散に走って行った。

 予定も立てずにぶっつけでやった説得だったが、なんとか成功したらしい。興津の脅威を寮長から遠ざけられた手応えに、ほんの少し気が楽になった。あの言い方だと、興津とは無関係な三年が巻き込まれる可能性もなくはないが……多少の犠牲には目を瞑ろう。誰が悪いって、興津が悪いに決まってるしな。

 寮長と性悪の件は、これで一応片付いた。万全とは言えないが、今オレに出来る事はやった……と思う。あとは執事モドキが優秀なクズ除けになってくれる事を祈るのみだ。

「よし……これで問題は全部解決したな」

 厄介な状況が片付いて、シンプルに原因だけが残った。興津はオレを食い物にしようとしただけじゃあない。先輩を散々カモにしやがった。そんな奴を相手に防戦するなど、端から無理なのだ。

 興津をぶっ倒す。

 目的と手段が見事に重なり、頭の中がスッキリ片付いた。先輩が覚悟を決めるまでの時間、何もしてやれず一人で悶々として過ごすのは止めだ。方針が完全に固まり、オレは布団を元あった物置部屋に放り込む。

「おい!」

 これから戦場となる学校へ乗り込むぞと意気込んだのだが、突然背後から首根っこを掴まれてしまった。

「いきなり一人で消えるな。心配するだろ」

 不機嫌そうな声の主は皆元で、その後ろには狭間と由々式の姿もあった。三人は一様に心配そうな顔をしており、オレは皆元に半ば引きずられ廊下の隅に追いやられる。

「夷川、悪い事は言わん。先生に相談するべ。闇市先輩に常識は通用せん。そんなぽや~っとしとったらエライ目に遭うべ」

 由々式がこちらに一歩詰め寄り、緊張感がないと大袈裟に溜め息を吐く。興津を一番知っている奴の忠告を無視も出来ない……と言うか、恐らく現在進行形で巻き込んでしまっている三人を前に、オレは興津への認識を改める必要があると反省した。

「狭間、放課後に何か予定あるか?」

「えっと、予定と言うか、いつも通り寮内の掃除をするつもりだけど」

 よし、予定はないな。なら話は早い。三人と興津の認識を共有するべく、オレは一つの提案を持ちかける。

「由々式、悪いが興津との件が片付くまで、放課後エロマンガ教の部室を貸してくれ」

「神殿の邪魔さえせんなら別に構わんが、何する気じゃ?」

 興津が用意した三年の空き教室。興津と関わりのある由々式のエロマンガ教が、オレのせいで何らかの被害を受ける可能性も考えるべきなのだろう。

 それに由々式だけじゃあない、狭間も同じ。性悪に執心しているのなら、同じように華奢で男らしいとは言い難い狭間は、あの変態の好みに当て嵌まってしまうかもしれない。喧嘩とは無縁の二人を放置するのは危険だ。

「放課後、狭間も連れて由々式の所へ行って欲しい」

 オレは少し怒った表情を残す皆元にそう頼んだ。何をするのか、皆元には伝わったようだが、オレから言わせればいまいち危機感が足りない首を傾げる二人へ、放課後の予定をしっかり伝達する。

「放課後、エロマンガ教の部室で籠城する」
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