圏ガク!!

はなッぱち

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新学期!!

裏口入学上等

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 果報は寝て待てと言うが、朝一で吉報が届いた。食堂へ向かう途中に出くわした刑事のオッサンが、オレの頭を悩ませる存在である久保を今日連れ帰ると、教えてくれたのだ。

「まだグジグジ悩んでるが、ケツまで掘らせる子犬があそこまで言ったんだ。もう大丈夫だろ」

 食堂からかっぱらったのか、オッサンはバナナを貪り食いながらガハハと笑う。

「あんたも盗聴してんのかよ」

 夕べの先輩とのやり取りを聞かれたのかと、一瞬腹も立ったが機嫌を損ねる訳にはいかない。一呼吸だけ置いて、呆れ半分で聞く。

「するかッ!」

 すると何故か逆ギレされバナナの皮を顔面に投げつけられた。猿か! いや、サイズ的にゴリラだな。

「勝家本人に聞いたんだよ。夕べえらい酷い顔してたんで、おじさんがお悩み相談室を開設してやったのよ。お前が苛めたせいでボロボロだったからな、簡単にゲロったぞ」

 酷い顔した未成年にバナナの皮を投げつける男だ。先輩に対しても容赦なく尋問したに違いない。目の前の原因に腹を立てるより先に先輩が心配になった。

「行儀の良いやり方とは思わんが、あれくらい雑な方が頑固な勝家には丁度良いだろ」

 オッサンは言いながら、人の頭を鷲掴みにしてきた。そのまま握り潰されるんじゃあないかという恐怖から、されるがままになっていると、オッサンはオレの頭を左右に揺さぶりながら「ありがとな」と呟いた。本当にゴリラのようなデカイ手でグシャグシャにされた前髪の隙間から無理矢理覗くと、オッサンは疲れの残る顔に安堵したような表情を浮かべていた。

「……このまま、先輩が望めば、警察官になれんの?」

 無駄に揺らされたせいか、ふと浮かび上がった疑問が口から出る。警察官になろうと思った事なんてないので、採用試験の難易度が全く想像出来なかった。どれだけ周りが騒ごうが、合格しなければ先はない。そもそも先輩は試験に受かっているのだろうか。

「ああ、そうなるよう手を回している。一応、本当にギリギリだったが、一次はパスしてるしな。まあ試験が駄目でも、勝家がやる気見せりゃあ、ねじ込むつもりだったがな」

「警察官が不正採用とか駄目だろ」

「馬鹿野郎、コネで採用なんざ場所選ばずどこでも掃いて捨てるほどあんだよ。変な心配すんな」

 しているのは心配じゃあないのだが……妙に頼もしい顔で言い切られると、強く言い返せなかった。先輩は自力で合格をもぎ取ったようだし、うん。聞かなかった事にしよう。 先輩の将来を託す組織として不安はやや残ったが、オッサンの言動を思い返すと更に不安が濃くなりそうだったので、意図的に頭を切り換え、礼を言って見送った。

 投げつけられたバナナの皮を拾い、食堂で待つ皆元たちに合流すると、由々式から何処で拾い食いしたんだと本気で呆れた顔をされた。オッサンに倣いバナナの皮を投げつけたら、ターゲットが空気を読まず避けやがったせいで、隣にいた狭間に顔面キャッチさせてしまい朝っぱらから説教を食らう事になった。

 変態からケツを狙われる日々の始まりとしては上々だろう。気は抜けないが、旧館内で三年が仕掛けてくる可能性は低い。半年も生活していれば、一二年のほぼ全員、名前は一致せずとも顔くらいは覚えているもので、その中に普段見慣れない三年が混じれば、オレに限らず、その場に居合わせた奴らは恐らく全員気が付く。異物が混じる違和感が全くなかったのだ。

 放課後になれば事情が変わってくるかもしれないので、オレは狭間の地味に長い説教を躱し、執事モドキを捜す。興津の事を直接、寮長に伝える案も考えたが、理由を聞かれたら誤魔化せる自信がなかったので、雇い主の評価を信じて脳筋……もとい素直で信頼出来る男に全てを任せる事にした。

 部屋の場所は分かったとは言え、二年フロアを一人で彷徨くのは極力避けたいと消極的になり、共有スペースで待ち伏せるかと考えていたら、これまた都合良く執事モドキの姿を見つけた。旧館一階の突き当たり、反省室の入り口がある部屋から、夕べオレが使ったと思われる布団一式を抱えて出て来た。

「感心感心。ちゃんと戻って来たな、夷川。雫が片付けてもいいが、自分が使った物を自分で片付けるのは当たり前だ。お前が道理の分かる後輩で雫は嬉しく思うぞ。折檻の手間が省ける」

 執事モドキはオレに気付くと上機嫌でしきりに頷き、布団を押しつけてきた。(熟睡していたので気付かなかったが)二時間置きに反省室の見回りをさせてしまった申し訳なさもあり、素直に布団を受け取って本題を切り出す……。

「えー……っと……山野辺、先輩」

 つもりだったが執事モドキの名前がすぐには思い出せず、初っぱなから躓いてしまった。それには気付かず執事モドキは、何を期待しているのか、ちょっと腹の立つ『先輩としての余裕』みたいなのを覗わせる表情で、オレの言葉を待っている。

「昨日オレらの部屋を荒らした奴が誰か、分かりました」

「何ぃッ本当か!」

 冷静に話を聞いて欲しいのだが、オレの切り出し方が悪かったのか、執事モドキは一瞬で闘牛のような獰猛な気配をまき散らす。
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