圏ガク!!

はなッぱち

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新学期!!

約束は永遠に

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「ん、どうしたセイシュン。もしかして、昼寝か?」

 布団を一組抱え上げ、せっせと広げていると、先輩が少し動揺したような声を上げる。食べ終えた器などを段ボールに片付けたのを見届け、オレは先輩に抱きつき、問答無用で口に吸い付いた。先輩は体を強ばらせたが、こちらから積極的に舌を絡めにいくと、あっと言う間に攻守を逆転する。

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 このまま用意した布団に押し倒してやろうと頑張ったのだが、先輩はビクともしないどころか、オレの体を強引に引き剥がした。

「何? 早くしないと昼休み終わるだろ……ほら、しようよ先輩」

 じれったくて先輩の股間に手を伸ばすが「だから、ちょっと待て」と阻まれてしまう。

「こんな昼間から何考えてるんだ。こういう事はだな、日が落ちてから、じっくり時間をかけて」

「はぁ? 『部屋に誰も戻って来ないか』って確認取ったのは、こういう事だろ」

 ヤル気に満ち溢れた先輩はどこに行ったと抗議する。すると、残念そうな顔をした先輩に「違う」と否定されてしまった。

「部屋に誰もいないか聞いたのは、邪魔が入らない所で、セイシュンと二人で話がしたかったからだ」

 完全にヤル気だったオレは、それを聞いてついしょぼくれてしまった。期待は裏切られた訳だが、まあ……ちゅーはしてくれたので、テンションをなんとか戻して先輩と向き合う。

「じゃあ、朝オレが起きるの待っててくれなかったのは、じいちゃんがいたから?」

 なんとなく思いついた事を口にすると、言いにくそうに先輩は「うん」と頷き、軽く段ボールを持ち上げて見せた。

「どうしてもお前に言いたい事があって……でも、こう、何か挟まないと、勢いで全部言っちまいそうだったから、あの場で」

「じいちゃんの前では言えない事なの?」

 疑問を口にすると、覚悟を決めたように先輩は顔を上げた。そして、決闘でも申し込むような声で言った。

「セイシュン、俺と付き合って欲しい」

 真っ直ぐ向けられた眼差しは真剣そのもので、オレの頭は一瞬で疑問符だらけになる。

「オレらって付き合ってるじゃん。え、何、まさか先輩の中では別れた事になってんの!? ふざけんな、マジふざけんな! いつからオレと別れたつもりだったんだよ」

 考えられる範囲で出た答えは、盛大にオレを混乱させた。突き放されたような気持ちでいっぱいになり、否定しろよと縋るように見つめた先で、更に強烈な事実を突き付けられた。

「最初からだ。セイシュンに告白されて、それを受け入れた時から、ずっと」

 今、オレは何を言われているんだ。呆然となり、意味が分からず、オレは一人泣きそうになる。付き合って欲しいとかいきなり言い出して、オレは付き合ってるつもりなのに先輩としては付き合ってなかったとか言われても……。

「セイシュンに好きだと言われて付き合い始めたけどな、その時は『卒業までの間』と決めてた。だから、今までは別れる前提で付き合ってたんだ……すまん」

 先輩の謝罪をただ見つめる。何か言葉を発したら、変な方向に話が転がっていきそうで、緊張が体温を奪い、体と同じように心が冷めていくのが分かった。よく言えば冷静に先輩の言葉に耳を傾けられた。

「今までと同じ状態なのは嫌なんだ。だから、今度は俺から言わせてくれ。それで、お前の答えをくれ」

 不器用な言葉。あぁそういう意味かと安堵する。冷静になるとオレの緊張は消え、先輩の方は倍になっているよう見えた。そこに不安が見え隠れしていて、少し笑えた。

「俺はこれからも、ずっとお前と一緒にいたい。セイシュンが欲しい」

 何も返してやらないせいか、先輩はプツリと言葉を途切れさせる。リアクションしてやれば気は楽になるだろうか。頭の隅で考えるが実行はしない。黙って続きを待った。

「セイシュンが好きだ。俺と付き合って欲しい。これからも、ずっと一緒にいて欲しい」

 混じりっけのない、本当だけが詰まった言葉はオレの胸を熱くする。溢れる気持ちが言葉に変換されて、津波のように押し寄せるが、先輩を飲み込みそうなので我慢だ。その代わりに膝がぶつかる距離まで近づき、先輩の頭をグイと引き寄せた。

「うん」

 強めに額をぶつけて、鼻先をくすぐる。じんわり体に広がる熱が、自然と唇を重ねさせた。少しかさついた先輩の感触。ついさっきまであった下心すら遠慮する、際限のない幸福感に口元がゆるむ。

「ずっと一緒にいよう」

 色んな形の想いを飲み込んだ後、最後に残った一つを声に出してみた。すると、痛いくらいの強さで先輩に抱き締められた。背骨が折れるくらいの力強さに、窒息しそうになりながらも笑ってしまう。

「ありがとう、セイシュンありがとう」

 んな当たり前な事をありがたがるなよ。先輩の胸元にプレスされていた腕を引っこ抜き、ポンポンと背中を叩いてやると、弱音が飛び出してきた。

「お前が逃げたいって、俺から逃げたいって思うようになったら、絶対に逃がしてやるから、約束するから」

 埋もれながらも溜め息を吐く。先輩の中のオレはまだまだ温いな。そんな甘っちょろい覚悟でやっていけると思うなよと、オレは先輩の拘束から全力で抜け出す。

「オレは絶対に先輩を逃がさない。てか、逃げたいなんて思わせねぇよ。言っただろ『先輩に好きって言わせて、絶対に後悔させない』って。アレ忘れんなよ。一生な」

 ニヤッと笑って、先輩の鼻先に指を突き付けてやる。少し潤んだ目をした先輩は、ふにゃっとだらしなく笑った。

「ん、約束する」

 突き付けた小指に先輩の指が絡まる。馬鹿みたいに幸せで、思わず泣きそうだったが、やっぱりおかしくて笑った。それから、もう一度ちゅーをした。今度は互いの熱い舌を絡める濃厚なのを。舌から体全体に広がる熱、溶けそうな感覚に溺れながら、全力で先輩にもたれかかった。

「せんぱい」

 そのまま布団に押し倒され……は、しなかった。

「いや、その、やっぱり昼間だしな。もし万が一、誰かが戻ってきたら大変だ……それに時間も足らない」

 散々舌で絡み合った後、先輩は決まり悪そうにオレをまた引き剥がすと、広げた布団を畳み、止める間もなく押し入れに戻した。

「続きはまた、今度な」

 授業なんてサボればいいじゃんと助言しようと思ったが、興奮を自制しつつも期待を隠せていない先輩の姿がレアだったので、大人しく従う事にした。

「うん、分かった」

 もう焦る必要はない。毎日が『また、今度』になったのだから。
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