288 / 411
蜜月
宝探し
しおりを挟む
戻って来た日常を謳歌する。放課後は地下牢とはおさらばして、全力でイチャつこうと思っていたのだが、先輩はキャンプ道具探しを再開しようと提案してきた。
「早いとこキャンプ道具を集めちまおう。壊れてたら修理もしないといけないしな」
オレとしては先輩の部屋にしけ込み、昼休みの続きを早速にでも始めようと企んでいた訳で出鼻を挫かれた思いだったが、地下室暮らしで鈍っていた体をほぐしておく必要もあるかと、久し振りの校内探索を了承した。
「山本から手紙を貰ったんだ。まあ、当たるかは分からんが、今日は体育倉庫やその周辺を探してみよう」
プリントの裏を使った雑な手紙(?)には「6点(100点満点中)」と殴り書きされていた。意味は分からないが、人様の物を上から目線で採点する山センに腹が立ち、思わず握り潰して投げ捨てる所だったが、グッと堪えて手紙をじっくりと調べてみる。
ザラッとした床の上で書いたのか、プリントにはザラッと感がしっかり残っていた。そして、裏面には砂ではない細かな粉が付着しており触れた指先をわずかに白く汚した。
「これ、体育の時に使う白線引くやつか」
体育倉庫に目星を付けた理由を推理してみせると、正解だったらしく先輩は満足そうに頷いた。
「ちょっと面倒な場所だが、他の奴に見つかると余計ややこしくなる。早めに回収しておこう」
本当にキャンプに行けるかは置いといて、今や山センの遊び道具になってしまっている道具は早く回収してやりたい。異議などあるはずもなく、オレらは体育倉庫に足を向ける事にした。
校内には生徒の溜まり場になっている場所が何カ所かあり、その一つに体育倉庫は数えられる。ちゃんとした部活かは怪しいが、運動系の部活モドキは無数存在し、そいつらが拠点として体育館や体育倉庫を無断で使っている。部活なら部室棟がある訳だが、そちらには髭がいるせいか、遊び半分の奴らは近寄れないらしく、探索難易度は非常に高いエリアだったりする。
相手が三年や話の通じる二年なら、先輩を見て勝手に散ってくれるのだが、一年や話の通じない二年の場合は、オレに全力で絡んできやがるので面倒なのだ。
なので、奴らがボールを持ってグラウンドへ出払った頃合いを見計らい侵入する。
「小物だとありがたいね」
倉庫から出て来る人数を数え、オレは先輩にだけ聞こえる声で呟く。
「ん、大丈夫だ。多分、小さいと思うぞ」
隠し場所だけでなく、隠された物にまで心当たりがあるような口振りだ。それが何か聞こうとして止める。ここで話しているより、さっさと探して持って来る方が早い。オレらは周囲を確認して、体育倉庫に潜入を開始した。
中は薄暗く、こう何とも言い様のない嫌な臭いが充満している。ここは数少ない狭間の手が入っていない未開の地なのだ。掃除も換気も全く行われていないので、埃臭さに野郎共の体臭が混ざり、一刻も早く脱出したい。
快適な環境に慣れきったオレは、地獄のような宝探しをとっとと終えるべく、物が隠せそうな場所を探し、奥へと足を進める。
「あれ、なんか変な臭い混じってねぇ?」
極力呼吸を控えたかったのだが、折角の放課後をそんな黙々と過ごす気も起きず、普通にしていたら鼻が妙な臭いに気が付いた。出来れば倉庫内の空気に混ぜたくない臭い、何故か食べ物のにおいがした。
「あぁ、やっぱりそうか。手紙からにおいがしたから、そうじゃないかと思ってたんだが」
先輩が倉庫の隅にしゃがみ込んで、残念そうな声を上げた。どれどれと覗き込むと、とうもろこしの絵が付いた少し大きめの缶詰があった。
「キャンプの時に温かい飲み物が欲しいと思ってな。スープの缶詰を買っておいたんだが……まあ、しょうがないか」
そうだ、このちょっと甘いようなにおいは、コーンスープのにおいだ。場所が違えば至福だが、ここでは生ゴミの臭いに思えてくる。残念そうな先輩から缶詰を取り上げると、それは缶詰ではなく山センに勝手に食われた後の空き缶だった。
人の物を勝手に食うなよ! と当然の怒りが湧き、気が付いてしまった。山センが先輩に渡した手紙の意味が……。
「ッこんな場所で食ったら、そりゃ不味いに決まってんだろが!」
思わず空き缶を床に投げ捨ててしまった。空き缶はカランカランと派手な音を立て、出入り口の方へと転がっていく。
「セイシュン!?」
ヤバイと思う間もなく、オレは先輩に腕を引っ張られ、ボールが山と積まれたカゴの物陰に押し込められた。ご丁寧に口まで押さえられて。
「あっれ? 今さ、なんか音しなかった?」
「誰かいるんじゃね」
外から近づいて来る声にバクバクと心臓が鳴る。見つかったら終わりとか、そういう危機的状況でもないんだが、見つからずに済むならその方が何倍もいい。黙ってろと言いたげな先輩の目を見て、幽かに首を振って答えると、そろりと口を覆っていた手を離してくれた。
空き缶を蹴飛ばす音が聞こえた。さっきと同じく倉庫内に音が響く。
「コレの音だろ。どっかから落ちたんじゃねーの」
「誰だよ、こんなトコでリッチなスープ飲んじゃった奴!」
ギャハハと山センを馬鹿にする笑いが巻き起こる。そしてスコーンと軽快な音が聞こえ「缶蹴りでもやろうぜ」と倉庫から人の気配が遠のいていった。
「早いとこキャンプ道具を集めちまおう。壊れてたら修理もしないといけないしな」
オレとしては先輩の部屋にしけ込み、昼休みの続きを早速にでも始めようと企んでいた訳で出鼻を挫かれた思いだったが、地下室暮らしで鈍っていた体をほぐしておく必要もあるかと、久し振りの校内探索を了承した。
「山本から手紙を貰ったんだ。まあ、当たるかは分からんが、今日は体育倉庫やその周辺を探してみよう」
プリントの裏を使った雑な手紙(?)には「6点(100点満点中)」と殴り書きされていた。意味は分からないが、人様の物を上から目線で採点する山センに腹が立ち、思わず握り潰して投げ捨てる所だったが、グッと堪えて手紙をじっくりと調べてみる。
ザラッとした床の上で書いたのか、プリントにはザラッと感がしっかり残っていた。そして、裏面には砂ではない細かな粉が付着しており触れた指先をわずかに白く汚した。
「これ、体育の時に使う白線引くやつか」
体育倉庫に目星を付けた理由を推理してみせると、正解だったらしく先輩は満足そうに頷いた。
「ちょっと面倒な場所だが、他の奴に見つかると余計ややこしくなる。早めに回収しておこう」
本当にキャンプに行けるかは置いといて、今や山センの遊び道具になってしまっている道具は早く回収してやりたい。異議などあるはずもなく、オレらは体育倉庫に足を向ける事にした。
校内には生徒の溜まり場になっている場所が何カ所かあり、その一つに体育倉庫は数えられる。ちゃんとした部活かは怪しいが、運動系の部活モドキは無数存在し、そいつらが拠点として体育館や体育倉庫を無断で使っている。部活なら部室棟がある訳だが、そちらには髭がいるせいか、遊び半分の奴らは近寄れないらしく、探索難易度は非常に高いエリアだったりする。
相手が三年や話の通じる二年なら、先輩を見て勝手に散ってくれるのだが、一年や話の通じない二年の場合は、オレに全力で絡んできやがるので面倒なのだ。
なので、奴らがボールを持ってグラウンドへ出払った頃合いを見計らい侵入する。
「小物だとありがたいね」
倉庫から出て来る人数を数え、オレは先輩にだけ聞こえる声で呟く。
「ん、大丈夫だ。多分、小さいと思うぞ」
隠し場所だけでなく、隠された物にまで心当たりがあるような口振りだ。それが何か聞こうとして止める。ここで話しているより、さっさと探して持って来る方が早い。オレらは周囲を確認して、体育倉庫に潜入を開始した。
中は薄暗く、こう何とも言い様のない嫌な臭いが充満している。ここは数少ない狭間の手が入っていない未開の地なのだ。掃除も換気も全く行われていないので、埃臭さに野郎共の体臭が混ざり、一刻も早く脱出したい。
快適な環境に慣れきったオレは、地獄のような宝探しをとっとと終えるべく、物が隠せそうな場所を探し、奥へと足を進める。
「あれ、なんか変な臭い混じってねぇ?」
極力呼吸を控えたかったのだが、折角の放課後をそんな黙々と過ごす気も起きず、普通にしていたら鼻が妙な臭いに気が付いた。出来れば倉庫内の空気に混ぜたくない臭い、何故か食べ物のにおいがした。
「あぁ、やっぱりそうか。手紙からにおいがしたから、そうじゃないかと思ってたんだが」
先輩が倉庫の隅にしゃがみ込んで、残念そうな声を上げた。どれどれと覗き込むと、とうもろこしの絵が付いた少し大きめの缶詰があった。
「キャンプの時に温かい飲み物が欲しいと思ってな。スープの缶詰を買っておいたんだが……まあ、しょうがないか」
そうだ、このちょっと甘いようなにおいは、コーンスープのにおいだ。場所が違えば至福だが、ここでは生ゴミの臭いに思えてくる。残念そうな先輩から缶詰を取り上げると、それは缶詰ではなく山センに勝手に食われた後の空き缶だった。
人の物を勝手に食うなよ! と当然の怒りが湧き、気が付いてしまった。山センが先輩に渡した手紙の意味が……。
「ッこんな場所で食ったら、そりゃ不味いに決まってんだろが!」
思わず空き缶を床に投げ捨ててしまった。空き缶はカランカランと派手な音を立て、出入り口の方へと転がっていく。
「セイシュン!?」
ヤバイと思う間もなく、オレは先輩に腕を引っ張られ、ボールが山と積まれたカゴの物陰に押し込められた。ご丁寧に口まで押さえられて。
「あっれ? 今さ、なんか音しなかった?」
「誰かいるんじゃね」
外から近づいて来る声にバクバクと心臓が鳴る。見つかったら終わりとか、そういう危機的状況でもないんだが、見つからずに済むならその方が何倍もいい。黙ってろと言いたげな先輩の目を見て、幽かに首を振って答えると、そろりと口を覆っていた手を離してくれた。
空き缶を蹴飛ばす音が聞こえた。さっきと同じく倉庫内に音が響く。
「コレの音だろ。どっかから落ちたんじゃねーの」
「誰だよ、こんなトコでリッチなスープ飲んじゃった奴!」
ギャハハと山センを馬鹿にする笑いが巻き起こる。そしてスコーンと軽快な音が聞こえ「缶蹴りでもやろうぜ」と倉庫から人の気配が遠のいていった。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※この物語はフィクションです。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。
■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる