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蜜月
夜這い
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「そんなこんなで夜這いに来た。入れてくれ」
消灯後の校舎だと言うのに、先輩の部屋には煌々と電気が点いていたので、道場破りのような勢いで扉を開けた。
「な、何? セイシュン、なんで……いや、そんなこんなってなんだ?」
机に向かっていた先輩が驚いた顔で出迎えてくれる。オレの訪問を予期している事も多く出迎えられてしまう事も度々あるが、今は完全に予想外だったらしく、慌てふためく姿は結構レアだ。
「矢野君に先輩と仲良くするよう言われたから、もっと仲を深めようと思って来た」
矢野君に背中を押されやって来た事を簡潔に告げると、怪訝な顔をされてしまった。
「? 矢野って、あの矢野か? なんで?」
先輩の疑問はもっともだ。先輩が誰とも連んでないのを心配していたみたいだと伝えると、心底困ったような、笑えない冗談を言われたような微妙な顔をされた。
先輩の複雑な胸中は分からんでもない。オレも吹きそうになったし……でもそんな事はどうでもいいのだ。宣言通りの目的を果たすべく、オレは立ち上がって出迎えてくれない先輩の膝の上に飛び乗る。
「えっ……」
そこにはなんと既に全力で自己主張する臨戦態勢の先輩がいた。
「……コレって」
どれくらい勃起しているのか確かめようと、股間を掴もうとしたのだが、目にも止まらぬ早さで腕を掴まれてしまう。
「おまっ……ッ……」
先輩の顔を覗き込むと、気まずいのか文句も途中で口ごもり、バッと顔を逸らされた。
まさか、オレをスルーして一人で処理しようとしてたのか! 何をオカズにしやがったと、嫉妬から机の上に視線をやるが、広げられているのは何の変哲もない教科書やらノートばかりで、エロい物は見つからなかった。
「おい、何で抜こうとしやがった」
至近距離で問い質すも、オレから全力で顔を背けるべく、必死で首を横へ向ける先輩は黙ったまま答えない。
「先輩は、この、数字見て勃起する変態なのか! あ、それとも、まさか数字から『若狭ちゃん』にマンツーマンで算数教えて貰ってた頃を思い出してんじゃねぇだろうな!」
「そんなわけあるか!」
我ながら無茶な推理を披露すると、先輩はようやく口をきいてくれた。
「じゃあなんだよ。オレの懸命な誘いを悉くスルーしやがったくせに」
妬くぞと視線で訴えてやると、いじけた眼差しが返ってきた。
「別に、抜こうとしてない。おさまるのを待ってただけだ。集中出来ないからっ、ちょっと待てセイシュン」
教科書やノートが開かれている机を一瞥して、自習の真っ最中だったと誤魔化すような言い訳を始めやがったので、隙を突いて動かぬ証拠を掴んでやった。
「別に自習中にオナろうとした事を責めてるんじゃねぇよ……うわっ相変わらずデカイな。頭ん中でどんなの使ってこんなガッチガチにしたのか教えろって言ってんの」
無遠慮に急所を握り回していると、堪らなくなったのか、先輩は股間からオレの手を剥がそうと応戦してきた。オレに触られるのが嫌なのかと本気で不安になり、徹底抗戦はせず大人しく解放してやる。
すると赤面しながらも危機は去ったようで、先輩は呼吸を整えるように小さく息を吐いた。
「昼間、お前に散々煽られた事を思い出しちまったんだよ」
言い逃れかと思える余裕がなく、先輩との距離をゼロにしてしまう。嫌がられてなかったという安堵は、鼻の奥を少しだけツーンとさせた。
「よかった……先輩に嫌がられてなかった」
先輩の胸に顔を埋めていると、弱気な胸中が口から漏れてしまった。
「嫌なはずないだろ。でも、所構わず煽られるのは堪えるから、勘弁してくれ」
せっかくの安堵に不安をぶっ込んでくる先輩。殺生なと恨みがましく見上げると、眉を見事なハの字にされてしまった。
「ヤリたい気持ちは一緒じゃないの?」
どうして恋人としての接触を週末限定にするんだと抗議する。欲求不満は体だけでなく心にも悪いんだぞと、鼻を突き合わせて説こうとしたが、口を物理的に塞がれ阻止された。
「気持ちは俺も同じだ……でも、それに甘えて、一度自分を許すと際限がなくなりそうで恐いんだ」
「いいじゃん、やりたいだけやろうよ。オレだって際限なく先輩とヤリてぇよ」
先輩だけじゃあなく、オレだって先輩を求める気持ちに際限なんてないのだ。必死でせがむと、先輩は顔を隠すみたいにオレを抱きしめる。
「俺はお前みたいに……良い子じゃないんだよ」
耳元で囁かれる声は隠す気のない欲情が溢れていて、オレの知らない先輩の欲求があるんだと悟る。言葉だけで全身を愛撫されたような興奮を覚え、体も心もどんどん火照り出す。
「先輩がしたい事、教えて」
一瞬、先輩が呼吸を止める。引き剥がされないよう、先輩の背中に腕をまわすと、熱い吐息が耳を撫でた。
首筋に唇が押し当てられる。ゾクッと背中が震え、声にならない音が口から漏れた。触れた唇がゆっくりと開き、肌に新たな刺激が加えられる。躊躇うような緩さで感じる先輩の歯の感触。何度か甘噛みを繰り返し、先輩は溜め息を吐いた。
「何? オレを噛みたいの?」
甘噛みのくすぐったさに笑いながら尋ねると、今度は強めに噛みつかれる。
「……たまに、お前の首筋に、誰かの歯形があるだろ」
ちょっと怒っているのか、声が少し低くなった。
たまに寝ぼけたスバルが、後ろから噛みついてくるので、先輩が言っているのはその事だろう。自分では気付かないが、そんなに目立つ歯形が残っていたのか。恥ずかしさと情けなさが同時に襲ってくる。
消灯後の校舎だと言うのに、先輩の部屋には煌々と電気が点いていたので、道場破りのような勢いで扉を開けた。
「な、何? セイシュン、なんで……いや、そんなこんなってなんだ?」
机に向かっていた先輩が驚いた顔で出迎えてくれる。オレの訪問を予期している事も多く出迎えられてしまう事も度々あるが、今は完全に予想外だったらしく、慌てふためく姿は結構レアだ。
「矢野君に先輩と仲良くするよう言われたから、もっと仲を深めようと思って来た」
矢野君に背中を押されやって来た事を簡潔に告げると、怪訝な顔をされてしまった。
「? 矢野って、あの矢野か? なんで?」
先輩の疑問はもっともだ。先輩が誰とも連んでないのを心配していたみたいだと伝えると、心底困ったような、笑えない冗談を言われたような微妙な顔をされた。
先輩の複雑な胸中は分からんでもない。オレも吹きそうになったし……でもそんな事はどうでもいいのだ。宣言通りの目的を果たすべく、オレは立ち上がって出迎えてくれない先輩の膝の上に飛び乗る。
「えっ……」
そこにはなんと既に全力で自己主張する臨戦態勢の先輩がいた。
「……コレって」
どれくらい勃起しているのか確かめようと、股間を掴もうとしたのだが、目にも止まらぬ早さで腕を掴まれてしまう。
「おまっ……ッ……」
先輩の顔を覗き込むと、気まずいのか文句も途中で口ごもり、バッと顔を逸らされた。
まさか、オレをスルーして一人で処理しようとしてたのか! 何をオカズにしやがったと、嫉妬から机の上に視線をやるが、広げられているのは何の変哲もない教科書やらノートばかりで、エロい物は見つからなかった。
「おい、何で抜こうとしやがった」
至近距離で問い質すも、オレから全力で顔を背けるべく、必死で首を横へ向ける先輩は黙ったまま答えない。
「先輩は、この、数字見て勃起する変態なのか! あ、それとも、まさか数字から『若狭ちゃん』にマンツーマンで算数教えて貰ってた頃を思い出してんじゃねぇだろうな!」
「そんなわけあるか!」
我ながら無茶な推理を披露すると、先輩はようやく口をきいてくれた。
「じゃあなんだよ。オレの懸命な誘いを悉くスルーしやがったくせに」
妬くぞと視線で訴えてやると、いじけた眼差しが返ってきた。
「別に、抜こうとしてない。おさまるのを待ってただけだ。集中出来ないからっ、ちょっと待てセイシュン」
教科書やノートが開かれている机を一瞥して、自習の真っ最中だったと誤魔化すような言い訳を始めやがったので、隙を突いて動かぬ証拠を掴んでやった。
「別に自習中にオナろうとした事を責めてるんじゃねぇよ……うわっ相変わらずデカイな。頭ん中でどんなの使ってこんなガッチガチにしたのか教えろって言ってんの」
無遠慮に急所を握り回していると、堪らなくなったのか、先輩は股間からオレの手を剥がそうと応戦してきた。オレに触られるのが嫌なのかと本気で不安になり、徹底抗戦はせず大人しく解放してやる。
すると赤面しながらも危機は去ったようで、先輩は呼吸を整えるように小さく息を吐いた。
「昼間、お前に散々煽られた事を思い出しちまったんだよ」
言い逃れかと思える余裕がなく、先輩との距離をゼロにしてしまう。嫌がられてなかったという安堵は、鼻の奥を少しだけツーンとさせた。
「よかった……先輩に嫌がられてなかった」
先輩の胸に顔を埋めていると、弱気な胸中が口から漏れてしまった。
「嫌なはずないだろ。でも、所構わず煽られるのは堪えるから、勘弁してくれ」
せっかくの安堵に不安をぶっ込んでくる先輩。殺生なと恨みがましく見上げると、眉を見事なハの字にされてしまった。
「ヤリたい気持ちは一緒じゃないの?」
どうして恋人としての接触を週末限定にするんだと抗議する。欲求不満は体だけでなく心にも悪いんだぞと、鼻を突き合わせて説こうとしたが、口を物理的に塞がれ阻止された。
「気持ちは俺も同じだ……でも、それに甘えて、一度自分を許すと際限がなくなりそうで恐いんだ」
「いいじゃん、やりたいだけやろうよ。オレだって際限なく先輩とヤリてぇよ」
先輩だけじゃあなく、オレだって先輩を求める気持ちに際限なんてないのだ。必死でせがむと、先輩は顔を隠すみたいにオレを抱きしめる。
「俺はお前みたいに……良い子じゃないんだよ」
耳元で囁かれる声は隠す気のない欲情が溢れていて、オレの知らない先輩の欲求があるんだと悟る。言葉だけで全身を愛撫されたような興奮を覚え、体も心もどんどん火照り出す。
「先輩がしたい事、教えて」
一瞬、先輩が呼吸を止める。引き剥がされないよう、先輩の背中に腕をまわすと、熱い吐息が耳を撫でた。
首筋に唇が押し当てられる。ゾクッと背中が震え、声にならない音が口から漏れた。触れた唇がゆっくりと開き、肌に新たな刺激が加えられる。躊躇うような緩さで感じる先輩の歯の感触。何度か甘噛みを繰り返し、先輩は溜め息を吐いた。
「何? オレを噛みたいの?」
甘噛みのくすぐったさに笑いながら尋ねると、今度は強めに噛みつかれる。
「……たまに、お前の首筋に、誰かの歯形があるだろ」
ちょっと怒っているのか、声が少し低くなった。
たまに寝ぼけたスバルが、後ろから噛みついてくるので、先輩が言っているのはその事だろう。自分では気付かないが、そんなに目立つ歯形が残っていたのか。恥ずかしさと情けなさが同時に襲ってくる。
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