圏ガク!!

はなッぱち

文字の大きさ
291 / 411
蜜月

夜這い

しおりを挟む
「そんなこんなで夜這いに来た。入れてくれ」

 消灯後の校舎だと言うのに、先輩の部屋には煌々と電気が点いていたので、道場破りのような勢いで扉を開けた。

「な、何? セイシュン、なんで……いや、そんなこんなってなんだ?」

 机に向かっていた先輩が驚いた顔で出迎えてくれる。オレの訪問を予期している事も多く出迎えられてしまう事も度々あるが、今は完全に予想外だったらしく、慌てふためく姿は結構レアだ。

「矢野君に先輩と仲良くするよう言われたから、もっと仲を深めようと思って来た」

 矢野君に背中を押されやって来た事を簡潔に告げると、怪訝な顔をされてしまった。

「? 矢野って、あの矢野か? なんで?」

 先輩の疑問はもっともだ。先輩が誰とも連んでないのを心配していたみたいだと伝えると、心底困ったような、笑えない冗談を言われたような微妙な顔をされた。

 先輩の複雑な胸中は分からんでもない。オレも吹きそうになったし……でもそんな事はどうでもいいのだ。宣言通りの目的を果たすべく、オレは立ち上がって出迎えてくれない先輩の膝の上に飛び乗る。

「えっ……」

 そこにはなんと既に全力で自己主張する臨戦態勢の先輩がいた。

「……コレって」

 どれくらい勃起しているのか確かめようと、股間を掴もうとしたのだが、目にも止まらぬ早さで腕を掴まれてしまう。

「おまっ……ッ……」

 先輩の顔を覗き込むと、気まずいのか文句も途中で口ごもり、バッと顔を逸らされた。

 まさか、オレをスルーして一人で処理しようとしてたのか! 何をオカズにしやがったと、嫉妬から机の上に視線をやるが、広げられているのは何の変哲もない教科書やらノートばかりで、エロい物は見つからなかった。

「おい、何で抜こうとしやがった」

 至近距離で問い質すも、オレから全力で顔を背けるべく、必死で首を横へ向ける先輩は黙ったまま答えない。

「先輩は、この、数字見て勃起する変態なのか! あ、それとも、まさか数字から『若狭ちゃん』にマンツーマンで算数教えて貰ってた頃を思い出してんじゃねぇだろうな!」

「そんなわけあるか!」

 我ながら無茶な推理を披露すると、先輩はようやく口をきいてくれた。

「じゃあなんだよ。オレの懸命な誘いを悉くスルーしやがったくせに」

 妬くぞと視線で訴えてやると、いじけた眼差しが返ってきた。

「別に、抜こうとしてない。おさまるのを待ってただけだ。集中出来ないからっ、ちょっと待てセイシュン」

 教科書やノートが開かれている机を一瞥して、自習の真っ最中だったと誤魔化すような言い訳を始めやがったので、隙を突いて動かぬ証拠を掴んでやった。

「別に自習中にオナろうとした事を責めてるんじゃねぇよ……うわっ相変わらずデカイな。頭ん中でどんなの使ってこんなガッチガチにしたのか教えろって言ってんの」

 無遠慮に急所を握り回していると、堪らなくなったのか、先輩は股間からオレの手を剥がそうと応戦してきた。オレに触られるのが嫌なのかと本気で不安になり、徹底抗戦はせず大人しく解放してやる。

 すると赤面しながらも危機は去ったようで、先輩は呼吸を整えるように小さく息を吐いた。

「昼間、お前に散々煽られた事を思い出しちまったんだよ」

 言い逃れかと思える余裕がなく、先輩との距離をゼロにしてしまう。嫌がられてなかったという安堵は、鼻の奥を少しだけツーンとさせた。

「よかった……先輩に嫌がられてなかった」

 先輩の胸に顔を埋めていると、弱気な胸中が口から漏れてしまった。

「嫌なはずないだろ。でも、所構わず煽られるのは堪えるから、勘弁してくれ」

 せっかくの安堵に不安をぶっ込んでくる先輩。殺生なと恨みがましく見上げると、眉を見事なハの字にされてしまった。

「ヤリたい気持ちは一緒じゃないの?」

 どうして恋人としての接触を週末限定にするんだと抗議する。欲求不満は体だけでなく心にも悪いんだぞと、鼻を突き合わせて説こうとしたが、口を物理的に塞がれ阻止された。

「気持ちは俺も同じだ……でも、それに甘えて、一度自分を許すと際限がなくなりそうで恐いんだ」

「いいじゃん、やりたいだけやろうよ。オレだって際限なく先輩とヤリてぇよ」

 先輩だけじゃあなく、オレだって先輩を求める気持ちに際限なんてないのだ。必死でせがむと、先輩は顔を隠すみたいにオレを抱きしめる。

「俺はお前みたいに……良い子じゃないんだよ」

 耳元で囁かれる声は隠す気のない欲情が溢れていて、オレの知らない先輩の欲求があるんだと悟る。言葉だけで全身を愛撫されたような興奮を覚え、体も心もどんどん火照り出す。

「先輩がしたい事、教えて」

 一瞬、先輩が呼吸を止める。引き剥がされないよう、先輩の背中に腕をまわすと、熱い吐息が耳を撫でた。

 首筋に唇が押し当てられる。ゾクッと背中が震え、声にならない音が口から漏れた。触れた唇がゆっくりと開き、肌に新たな刺激が加えられる。躊躇うような緩さで感じる先輩の歯の感触。何度か甘噛みを繰り返し、先輩は溜め息を吐いた。

「何? オレを噛みたいの?」

 甘噛みのくすぐったさに笑いながら尋ねると、今度は強めに噛みつかれる。

「……たまに、お前の首筋に、誰かの歯形があるだろ」

 ちょっと怒っているのか、声が少し低くなった。

 たまに寝ぼけたスバルが、後ろから噛みついてくるので、先輩が言っているのはその事だろう。自分では気付かないが、そんなに目立つ歯形が残っていたのか。恥ずかしさと情けなさが同時に襲ってくる。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

狂わせたのは君なのに

一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※この物語はフィクションです。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

処理中です...