圏ガク!!

はなッぱち

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蜜月

掃除から始まる一日

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 翌日は一日の流れを決めるミーティングから始めた。風呂掃除と入浴は一緒に済ませたいので、前回同様の時刻にしようと決め、キャンプ準備は午前中にする事になった。

 まずは隣の教室でキャンプ場を作る。机を隅に寄せて、簡単に掃き掃除をすれば終わるだろうと思っていたのだが、そうは簡単にいかなかった。一クラス分くらいある机の山は、整頓しながら移動させるだけでも重労働だった。その上、数年は軽く蓄積された埃だけでなく、あちこちに散らばったゴミも意外と多く、想像以上に不衛生な環境だと判明。快適にキャンプをする為に本格的な掃除が必須となり、午前中はほぼ掃除に費やされた。

「てか、昼からも風呂掃除が待ってんのかー」

 昼食に昨日のスーパーで調達した弁当を食いながら一息入れる。自分たちで決めた事とは言え、かなりのハードスケジュールについ愚痴のような独り言が出てしまう。

「疲れたか? なら、風呂掃除は俺がやっとくぞ。ちょっと前に掃除したばかりだしな。そんなに時間はかからないだろう」

 情けない独り言をお茶を淹れてくれていた先輩に聞かれたらしく、昼寝でもしてろという生温かい視線が向けられる。

「ぜんぜん余裕だし。風呂掃除オレも一緒にやるからな!」

 分かった分かったと、先輩はマグカップを手渡してくれる。

「テント組み立てるのは、風呂上がってからにするか」

「うん。でも、ストーブとかは風呂の前に用意しとこうよ。風呂で十分あったまっても、長時間ウロウロしてたらすぐ湯冷めしそうだし」

 色々と食堂からかっぱらって来る予定なので、あまり人目につかない方がいいのだが、まあなんとかなるだろう。

 他の日は特に指定はなかったのだが、大晦日の夕食だけは、全員インスタントの蕎麦を食うように言われている。それだけじゃあ物足りないので、由々式のおばさん特製のぜんざいと餅を頂くつもりだ。それから、賞味期限とか考えずありったけ買ってきた総菜のから揚げや焼き鳥もこっそり持ち帰りたい。あと、菓子とジュースも……って、言い出すとキリがないな。

「じゃあストーブは俺が用意するから、セイシュンは食料を頼めるか?」

 食料を少し早めに入手するのは容易いが、石油ストーブは事情が変わってくる。貸してくれと言って貸して貰えたら誰も苦労はしないだろう。要するに勝手に借用する訳で、見つかれば強制的に返却しなければならない。

 オレがもたもたして足手まといになる可能性が高いので、ここは素直に先輩の提案に頷く。

 風呂掃除までにお互い目的の物を調達してくる為、暫し別行動を取る事になった。オレは旧館の食堂へ、先輩は同じ校内にある三年の教室へ別々に向かう。

 一年の教室には煖房器具など一切存在しないが、一応受験生である三年の教室にはそれがあるらしい。もう慣れたとは言え、圏ガク内にある格差に震える。まあ一年の教室でも、自分用に電気ストーブ抱えて持って来る教師のおこぼれを頂戴する事はあるのだが、後ろの席のオレには関係ない話だ。ちなみにオレの後ろの席のスバルは、ストーブ教師の授業だけは最前列で受けている。温かさの恩恵は一切ないが、個人的に全教師がストーブ持参すればいいと思っている。

 昼時の食堂での調達ミッションは、よく考えれば、かなり難易度が高い。一応、何人分みたいな感じで食料は分けてあるので、自分たちの分を持ち出すのは問題ないのだが、ぜんざいを鍋に移し替えて持って行くのは、さすがに咎められそうだ。ストーブを持ち込んで、室内でキャンプやるんですと馬鹿正直に言う訳にもいかない。

 今更だが『夜中に食堂に忍び込んで準備していたら、何の問題もなかった』と詮無い事を考えつつ歩いていたら、旧館にたどり着いてしまった。

「無理そうなら、風呂掃除してる時に時間作るか」

 ちょっと諦めが入った独り言を呟きながら中に入ると、自販機の方からジュースが取り出し口に落ちる音が聞こえた。いきなり誰かに出くわして思わず舌打ちしてしまう。

「こらこら、挨拶もなしに舌打ちするな。金城の奴、後輩の躾がなってないな」

「……なんだ、山センか」

 残留一年だと思ったが、オレの舌打ちに不満そうな声を上げたのは、痛々しい色の見るからにゴワゴワしたマフラーが印象的な山センだった。

「ほんとに態度悪いな、夷川」

 ジュースを飲みながら近づいて来る山センを無視しようとしたのだが、オレは夕べ果たせなかった事を思い出し、しっかりと山センの正面に立つ。

「小吉さんから取った五百円返してやれよ」

 冷静な声で伝えられたと思う。けれど、何故か山センは顔を盛大に顰めた。山センは普段メンタルを削る嫌がらせこそするが、他の二年のように威圧的だったり手や足が出るタイプではない。表情もニヤニヤしているのがデフォルメなので、あからさまに不快感を出され、少し身構えてしまう。

「…………」

 黙ったまま一歩一歩、山センがオレに近づいて来る。退いてしまいそうになるが、小吉さんの寂しそうな顔を思い出して、自分を奮い立たせた。
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