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蜜月
名前のちから
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率直に言うと、アニメでリメイクされた忍者勇者カクレコノハは面白かった。カツヤの回とその後の数話が用意されていたが、昼飯を忘れて見入ってしまう程度に気付けば集中して見てしまっていた。
カツヤの回はオリジナルと流れは同じだったが、オリジナルでは非常識(非人間的な行動)にしか見えなかった忍者共の行動の補足が丁寧に入れられ、共感は出来ないが理解は出来るようになり、カツヤに対する非情も洗脳から解放する為だった。オリジナルのラストは打ち捨てられたように描かれていたが、実は忍者の一人が幻術を使っており、死を偽装されたカツヤは悪の組織から解放される。
自由になっても高い知能や特殊な能力はそのままだった為、カツヤは少しだけ思案して忍者共の後を追い、そいつらの中に居座る事にした。最終的にどうなるかは分からないが、その後の数話を見た感じでは、カツヤは忍者共に欠如した良識を担いカクレコノハを正義の味方的なポジションに落とし込んだ、いや追い込んだと言った方がいいか。ほぼ言語でコミュニケーションを取らないカツヤだったが、犬らしい仕草が言葉以上のコミカルな会話になっていてテンポよく進むシナリオは小気味よかった。
「こいつらは忍者だったんだな」
湯を入れたインスタントのラーメンを前に、先輩は嬉しそうな顔で言う。実写からアニメになった事で、誰が見ても忍者だと分かるようなデザインに変更されており、どうやらその部分(忍者要素)がお気に召したらしい。もう一度みようと言い出す程で、今日中にタブレットを返却しなければならないのもあって、オレは素直に動画を再生した。
「あのさ『カツヤ』って名前に何か感じた?」
アニメを見て自分の名前に愛着を持つってのは、ちょっとズレてる気もするが背に腹は変えられない。思い切ってダイレクトに聞いてみると、先輩はタブレットに向けていた視線をこちらに寄越した。
「すごく頭の良い犬だな。きっとセイシュンくらい賢いぞ」
「あいつはオレより賢いよ。なんせIQ180だからな」
作中で出てきた情報を教えてやると、本気で感心しているのか真剣な顔で頷く先輩。
微笑ましい。実に微笑ましい光景だが、オレが思っていた答えとは全く違った。オレはアニメの犬を見た感想を聞きたい訳ではないのだ。
本当の事を言えない状態で、先輩がカツヤに思い入れを持つのは無理があるかもしれない……見事に当たって砕けた感じだな。オレは少し伸びてしまったラーメンを啜りながら、ぼんやりと考える。
先輩の名前は、本人が思っているような赤の他人が利便性の為に用意したものではなく、家族の思い出から名付けられた大事な名前だ。それを間接的にでも伝えられないかと、先輩の母親だと思われる城井老人の娘が見ていた番組を見てもらったのだが、先輩の心境を変化させる事は出来なかった。まあ、よく考えなくても当たり前だな。
自分の名前を大事に思って欲しい。ふわっとした気持ちだが本心だ。
オレ自身の事を言えば、胸糞悪いあいつらに付けられた名前には愛着より嫌悪感が勝るので、単なるエゴだろうが先輩にとっては何か心の支え的なものになったりしないだろうかと思ってしまう。
「セイシュン」
先輩が呼ぶ声で顔を上げると「食べないのか?」と箸が止まっていた事を心配されてしまった。
「ちょっと冷ましてただけ。先輩こそタブレットばっか見てないでちゃんと食えよ」
お互いに頷き合って啜るのを再開したが、アニメを真剣に見ている先輩は、食事より動画に集中しているらしく、また箸が止まっていた。
「先輩に呼ばれるのは嫌な感じにならないんだよな」
他の奴に名前を呼ばれると無条件でムカつくんだが、先輩にはそれがない。改まって考えると不思議だったが、その理由は考えるまでもなかった。
『じゃあ、セイシュンならいいか?』
名前で呼ばれるのが嫌だと言ったオレに、先輩は違う呼び名をくれたのだ。
カツヤの回はオリジナルと流れは同じだったが、オリジナルでは非常識(非人間的な行動)にしか見えなかった忍者共の行動の補足が丁寧に入れられ、共感は出来ないが理解は出来るようになり、カツヤに対する非情も洗脳から解放する為だった。オリジナルのラストは打ち捨てられたように描かれていたが、実は忍者の一人が幻術を使っており、死を偽装されたカツヤは悪の組織から解放される。
自由になっても高い知能や特殊な能力はそのままだった為、カツヤは少しだけ思案して忍者共の後を追い、そいつらの中に居座る事にした。最終的にどうなるかは分からないが、その後の数話を見た感じでは、カツヤは忍者共に欠如した良識を担いカクレコノハを正義の味方的なポジションに落とし込んだ、いや追い込んだと言った方がいいか。ほぼ言語でコミュニケーションを取らないカツヤだったが、犬らしい仕草が言葉以上のコミカルな会話になっていてテンポよく進むシナリオは小気味よかった。
「こいつらは忍者だったんだな」
湯を入れたインスタントのラーメンを前に、先輩は嬉しそうな顔で言う。実写からアニメになった事で、誰が見ても忍者だと分かるようなデザインに変更されており、どうやらその部分(忍者要素)がお気に召したらしい。もう一度みようと言い出す程で、今日中にタブレットを返却しなければならないのもあって、オレは素直に動画を再生した。
「あのさ『カツヤ』って名前に何か感じた?」
アニメを見て自分の名前に愛着を持つってのは、ちょっとズレてる気もするが背に腹は変えられない。思い切ってダイレクトに聞いてみると、先輩はタブレットに向けていた視線をこちらに寄越した。
「すごく頭の良い犬だな。きっとセイシュンくらい賢いぞ」
「あいつはオレより賢いよ。なんせIQ180だからな」
作中で出てきた情報を教えてやると、本気で感心しているのか真剣な顔で頷く先輩。
微笑ましい。実に微笑ましい光景だが、オレが思っていた答えとは全く違った。オレはアニメの犬を見た感想を聞きたい訳ではないのだ。
本当の事を言えない状態で、先輩がカツヤに思い入れを持つのは無理があるかもしれない……見事に当たって砕けた感じだな。オレは少し伸びてしまったラーメンを啜りながら、ぼんやりと考える。
先輩の名前は、本人が思っているような赤の他人が利便性の為に用意したものではなく、家族の思い出から名付けられた大事な名前だ。それを間接的にでも伝えられないかと、先輩の母親だと思われる城井老人の娘が見ていた番組を見てもらったのだが、先輩の心境を変化させる事は出来なかった。まあ、よく考えなくても当たり前だな。
自分の名前を大事に思って欲しい。ふわっとした気持ちだが本心だ。
オレ自身の事を言えば、胸糞悪いあいつらに付けられた名前には愛着より嫌悪感が勝るので、単なるエゴだろうが先輩にとっては何か心の支え的なものになったりしないだろうかと思ってしまう。
「セイシュン」
先輩が呼ぶ声で顔を上げると「食べないのか?」と箸が止まっていた事を心配されてしまった。
「ちょっと冷ましてただけ。先輩こそタブレットばっか見てないでちゃんと食えよ」
お互いに頷き合って啜るのを再開したが、アニメを真剣に見ている先輩は、食事より動画に集中しているらしく、また箸が止まっていた。
「先輩に呼ばれるのは嫌な感じにならないんだよな」
他の奴に名前を呼ばれると無条件でムカつくんだが、先輩にはそれがない。改まって考えると不思議だったが、その理由は考えるまでもなかった。
『じゃあ、セイシュンならいいか?』
名前で呼ばれるのが嫌だと言ったオレに、先輩は違う呼び名をくれたのだ。
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