7 / 45
# 07 歩茶の異変
しおりを挟む「二瓶さん!」
「どうしました?」
「歩茶ちゃんが……!」
辺りはすっかり夜の帳に包まれていた。
自宅の敷地に着いた瞬間、雲の切れ間から淡い月光が差し込み、苔むした岩壁の模様が銀色に浮かび上がる。
切通しの岩場付近では、モリたちが外敵の侵入を警戒して配置されている。
そのそばには、歩茶が通っていた小中学校の校長先生が両手を胸元で握りしめ、祈るような面持ちで立っていた。豆丸が無事帰ってきたことに一度、安堵の表情を浮かべたが、すぐに顔を引き締め、軽トラへ駆け寄り、現状を報告してくれた。
家に駆け込むと、ソファには汗でぐっしょり濡れた歩茶がうなされていた。
額には玉のような汗、唇は震え、うわ言のように何かを呟いている。
「歩茶ちゃん、見ててって言ったのに!」
「知らんわい。子育てなんて女の仕事だろ!」
この男ときたら……。
豆丸の部屋を歩茶に譲っていたのに、ちゃっかり奥の部屋から出てきた村議。
「誰だ、その女は?」
「こんばんは~、今日からお世話になります、門口雨と申します~」
「勝手に食い扶持増やしやがって……」
奥方が深いため息をもらす。
なぜこんな男に、知的な奥さんがいるんだろう。
世の中、あまりにも不平等すぎる。
「車を貸してください」
「ダメだ。傷でもついたら、お前に弁償できるのか?」
歩茶を病院へ運びたい。
でも軽トラじゃ高熱の子を乗せられない。
「では、これで売ってください」
【換金】を使用。
村議の目の前に札束を5つ──500万円を置いた。
あの車は新車で800万円前後。年式も古い型なので、中古なら300万円もしない。
「……1日だけなら、この金で貸してやる」
「あなた、何を言ってるの?」
「お前は黙ってろ!」
奥方が抗議するも、一喝される。
1日500万円⁉
──だけど。
「いいでしょう。ではお借りします」
「もちろん私もついて行くわ!」
「雨さん……ありがとうございます」
雨が運転を引き受けてくれることになり、高級車の後部座席に歩茶を寝かせて運ぼうという話になった。軽トラにはバリスタとボウガン隊を搭載し、化け物の迎撃を任せる。
「でしたら、私もついて行きます」
「おい、お前はここに残れ!」
「いいえ、もうこれ以上あなたとはやってられません」
「なにぃっ⁉」
村議が激高し、妻に手をあげようとしたので、慌てて止める。
「放せ……お前か? 儂の妻をたらしこんだのは?」
「へっ? ちょっと何言ってるかわかりませんが、落ち着いてください!」
豆丸が村議と掴み合って揉めている間に女性陣はテキパキと動き、歩茶を高級車の後部座席に乗せ、奥方も看病のために同乗した。雨も運転席に座り、出発準備を整えている。
「ちっ……あんな古臭いババァなんてくれてやる! それより」
舌打ちした村議が要求してきたのは、食料、水、拳銃一丁……そしてこちらが驚く条件を提示してきた。
「ペットは全部置いてけ。じゃなきゃお前らを出すわけにいかん」
どういう理屈で、そしてどういう立ち位置でそう言っているのか理解不能だが、要求を飲むことにした。
現在、敷地を守るモリは9体。
グー犬、パー犬、チョキ犬×2、ニャース、斬リッ株、野良サル×3。
皆、カンスト状態。
村議にバレないよう、新たにオブジェクト化したモリを敷地に残し、強化済みのニャース、斬リッ株、野良サル×3体を軽トラの荷台にこっそり乗せた。
────────────────
▾防具
└聖柩【New】
▾キャラ〈Type:モリモリ〉
├斬リッ株
├ニャース
├ジャン犬
├野良サル
├ツタ忍【New】
└ゴリ親方【New】
────────────────
新しいキャラ2体と初めて防具の中に〈聖柩〉という選択肢が現れた。 先に新たに入手したモリ〈ツタ忍〉と〈ゴリ親方〉もオブジェクト化してみることにした。
まずは〈ツタ忍〉を選択。
オブジェクト化を実行すると、視界に「オブジェクト化中……」のエフェクトが走り、地面から蔦が巻き上がるようにして小柄な影が現れた。
──────────────
ツタ忍
レベル:1/5
スキル:1/6
ステータス:92
体長約1メートル。
全身蔦でできた俊敏なステルス型のモリ
・蔓縛り(敵の移動を一時停止)
・葉隠れ(一定時間、敵からのターゲットを回避)
・蔓渡り(高所での高速移動が可能)
──────────────
これはずいぶんと使い勝手のよさそうなモリだ。
続いて、ゴリ親方をオブジェクト化してみる。
今度は地面がズシンと揺れ、巨大な影が現れる。
──────────────
ゴリ親方
レベル:1/5
スキル:1/6
ステータス:138
体長約2.5メートル。
建設と破壊を司る巨体・巨腕のモリ。
・地割り(両腕で地面を砕く。範囲内の敵にスタン効果)
・ドラミングショット(ドラミングで力を溜めた一撃、単体に大ダメージ)
──────────────
「そっちは留守番だね」
「ゴリぃぃぃ~~」
悲しそうな顔をするゴリ親方。
許せ。サイズ的に軽トラに乗せるのは無理。
そして、初見の防具カテゴリ〈聖柩〉もオブジェクト化してみた。
一見何も起きなかったが、視界右上に「▾」アイコンが点滅。意識を向けるとポップアップが展開された。
────────────────
【聖柩:起動中】
効果範囲:半径5.0m
持続時間:60秒
効果:対象エリア内の味方ユニットにHP自動回復(小)
敵ユニットに継続ダメージ(微小)+鈍化(20%)
────────────────
直後、豆丸の足元から淡い青白い光が円形に広がり、地面が静かに脈打ち始めた。まるで結界が張られたかのように空気が澄み、外界の気配が遮断される。
〈聖柩〉は約1分で消失。検証は後回しにすることにした。
「では、ついてきてください」
「うふふ、お手柔らかにね。オジ様!」
雨の言葉が妙に胸に響く。心臓に悪い。
こうして、深夜の決死行が幕を開けた──。
65
あなたにおすすめの小説
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
ファンタジー
公爵令嬢として生まれながら、子ども時代からメイドや周囲の陰謀で、次々と濡れ衣を着せられ、「悪女」扱いされてきたミリアム。
第3王子との婚約を聖女に奪われ、聖女への嫌がらせの冤罪で国外追放された後、平民として生き延びる中で、何度も5年前へのロールバック(逆行)を繰り返すことに。
生計をたてる為に、追放後の平民生活で極めた針仕事が、ロールバックが繰り返されることで、針仕事の能力だけは引き継がれ、天才的な実力を手に入れる。
その時女神「アテナ」の加護を得て、2つの力を手にすることに。
「加護縫い」
(縫った布に強力な祝福を込められる)
「嘘のほころびを見抜く力」
(相手の嘘を布のほころびとして視覚的に捉え、引き抜く、または繕うことで、真実を暴いたり修正したりする)
を手にしたミリアムは、5歳の幼女時代まで遡り、2つの力で悪評をぬりかえ、仲違いしていた家族も、加護の力を与えることで協力な味方へと変貌。
さらに、女神から可愛いしもべ「アリアドネ」を授かり、元婚約者と聖女にザマァを狙う中、加護縫いの能力が最も高い人間を王太子妃に迎える決まりのある大国、ルーパート王国の王太子が近付いて来て……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる