ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。

文字の大きさ
6 / 45

# 06 死なない男

しおりを挟む

「ところで、自己紹介がまだだったわね。私は門口雨もんぐち あめ、オジ様は?」
「ああっ、失礼。二瓶、二瓶豆丸です」
「あら? オジ様ったら、礼儀正しいのね」

いや、ただ、この歳まで仕事一筋だったので、女性にどう接していいのかわからないだけ。

豪邸と呼べる和風の建物の中に入りながら、互いに自己紹介した。

豆丸は野良サル1体と斬リッ株1体を護衛につけていて、接近戦に強い斬リッ株が、先頭で建物の中を探索し始めた。

ずいぶんと血痕が残っている。
障子や襖が破れ倒されている中、あちこちにどす黒くなった血の痕が壁や床に飛び散っていた。──これだけ見ると大家族でも住んでいたのだろうかと疑いたくなる。

「これは銃弾の痕ね」

本当だ。
言われて気づいた。
よく見ると壁に穴がちらほらと開いている。

「それにほら?」

拳銃。これは本物?

倒れた襖の下敷きになっていたので、拾い上げてみるとモデルガンと違ってズシリと重みがある。

「暴力団のアジトだったようね。それ、いいかしら?」
「──はい」
「ちょうど良かったわ。私が持っておくわね」

雨は拳銃を手に取ると、まるで長年の相棒に触れるかのように、銃身を指先で優しくなぞった。 そして、くるりと片手で銃を反転させ、弾倉を抜き取る。 カチャリ、カチャリ。無駄のない動きで弾の残数を確認し、すぐさま元に戻す。 その一連の動作は、場慣れした者にしか出せない静かな迫力があった。

思わず息を呑んだ。

(この人……本当に何者⁉)

拳銃を両手で持って下に向けたまま、屋敷の探索を再開する。

この屋敷の一番奥。
壁から天井まで、赤色を基調とした金色の装飾が目立つ部屋にたどり着いた。

奥にあるデスクが不自然に横にスライドしており、そこにレールがあったのでスライドを前提とした作りになっていることに気づいた。

「下に逃げ込む前に化け物に襲われたようね」

指一本しか入らない小さな穴があった。
雨はそこに指を入れて、床を持ち上げると、地下へと続く階段を探し当てた。ただ、少し下りたところに頑丈そうな鉄の扉があり、施錠されていた。

雨は部屋の装飾を指先でなぞりながら、まるで何かを感じ取るように壁を叩いた。 「……ここね」 そう呟くと、壁の一部を押し込む。カチリと音がして、隠し収納の扉がわずかに開いた。 中には、重厚な金属の鍵がひとつ。

「やっぱり。こういうの隠す場所って決まってるのよ」

鍵を手にした雨の目が、わずかに細められる。 その目は、まるで過去に何度もこうした場面を経験してきたかのよう……。

地下室に降りると、明らかに違法な白い粉や、銃火器が眠っていた。
それらと一緒に保存の利きそうなPETボトルや缶詰、火を使わずに加熱できる防災用のレトルト食品などが、棚に並べられている。

地下室には、便器もあった。
地下室の入り口の頑丈な扉から、戦争が始まっても何カ月も、地下に篭れるように用意してあったのかもしれない。でも、逃げ込む前に化け物に襲われるとは、この屋敷の主も想定外だったんじゃないだろうか?

「じゃあ運びましょ?」

全然、罪の意識の欠片もなさそうな雨が平然と言う。

豆丸が飲み物や食料を運んでいる間に雨が、キャリーケースに色々と銃火器を見繕ってケースの中にしまっていた。

3往復目。
地下室から食料を持ち出そうとしている時に、上から物音が聞こえた

急いで、外に出ると敷地の外で野良サル達が、ボウガンやバリスタで熊型の化け物数体と応戦していているのが見えた。

「鍵は閉めて、床も戻してきたわ。また今度来ましょ?」

キャリーケースを荷台の端に乗せ、雨が顎を使って早く行こうと催促してきた。モリ達が時間を稼いでくれている間に豆丸も急いで、車に乗り込みアクセルを踏んだ。

「なんかずいぶんと手慣れてない?」
「そうかしら? アクション映画が好きだから、かな?」

助手席の窓から拳銃を握った左手を出して、前に立ち塞がった熊型の化け物の眉間を一発で撃ち抜き、平然とそうのたまった。

そんなわけない。
シラを切るつもりなので、これ以上追及したりはしないが、なんか腑に落ちない。

思ったより、時間がかかってしまった。
夕方に近づくにつれてどこからともなく化け物達が活発になり始めた。

あっ、人が襲われて……ない⁉

街中を化け物達に追いつかれないように飛ばしていたら、目の前に男が飛び出てきた。

「そのまま、轢いて」
「ぇぇえええっ、そんなこと!」

豆丸がハンドルを切ろうとしたその時、雨が助手席から身を乗り出し、拳銃を連射した。 だが、男は倒れない。血も流れていない? ただ、無表情にこちらを見ている。

ズドッと、バリスタの矢が男の胸を貫き、歩道へと吹き飛ばした。

なぜ人間を攻撃してはならないと強く命じていたはずのモリが攻撃した?

ドアミラーに映る男の姿が、ゆっくりと起き上がる。その肩や腕に、さらにボウガンの矢が二発、突き刺さる。

バリスタ担当の野良サル以外も命令を背いた⁉

「雨さん、今のは⁉」
「……さあ、知らないわ。でも」

雨は冷ややかに答えながら、弾倉に素早く弾を込めていく。その手つきは、まるでこれが日常であるかのように滑らかだった。

「あれは人なんかじゃない。別の〝何か▪▪〟よ」

その言葉に豆丸の背筋がゾクっと震えた。
夕暮れの空が、まるで血の色に染まっていくように見えた。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...