13 / 45
# 13 初ミッション
しおりを挟むピロリン♪ という音とともに突然、目の前に文字がポップした。
──────────────────
〈運営からのお知らせ〉
【全Player対象】エリアボスを倒して、豪華報酬をGETしよう!
──────────────────
エリアボスとは?
なんの説明もなく、文字は消えた。
銭湯の前で巫霊「斎宮ハガネ」をUnit化したものの、いったいこの人型をどう扱えばいいのか悩んでいる最中だった。
「我が主」
「ふあぁぁわっ!」
びっくりした。
思わず人生で数回しか出したことない変な声が出た。
モリ達にボコられてピクリとも動かなかった人型が突然、しゃべって片膝をつき、豆丸に向かって頭を垂れた。
「喋れる、んですか?」
「……」
「あのー」
「……」
「えーと斎宮、さん?」
「……」
何も返事をしてくれない。
ずっと、豆丸に向かって頭を垂れたまま、ピクリとも動かない。
「じゃあ、ちょっとここから移動しましょうか?」
「……」
「行くぞ……なんちゃって!」
「ははっ⁉」
あっ、立ち上がった。
結構、背が高い。
身長約180センチ。
淡い銀髪に長い髪を高く結っているイケメン。
白と黒の装束に身を包んでおり、手には刃を納めた刀を握っている。
はっきりと命令しないと反応しない。
手を挙げて、と言っても反応しないが、手を挙げろ、と言うとちゃんと手を挙げてくれる。命令されるのが好きだなんて、オジサンちょっと変な趣味に走っちゃいそうで自分が怖い……。冗談はさておき。
気になるのは、身体から少しずつ黒い煙が流れ出ていること。
ステータス画面越しに彼を見てみると、数秒に1回、ステータスが下がってきている。
これはまずい。
1回、イケメン剣士をストレージに収容。10秒後にもう一度外に出すと、ステータス現象が一時的にストップしていたので、すぐにもう一度、ストレージに収容した。
たぶん日中は、ステータスが下がるので、夜間しか使えない。
それと……あれがエリアボスのいる場所。
ここから数十キロ先に光の柱が天に向かって伸びている。
あんなに目立つなら、そりゃ詳しい説明は不要かもしれない。
軽トラで移動して1時間弱、場所は海浜公園を入ってすぐのところ。
すぐそばまで来たら光の柱は球場くらい大きかった。
手前には、Playerと思しき人達がチラホラといる。
ひさしぶりに自分達以外の人と会った。
軽トラも離れたところに止めて、モリ達をストレージに入れて、光の柱の中に入ろうとした。
「おいおい、じーさん。中に入ったら死ぬかもしれないぜ?」
「えっ、そうなんですか?」
「まったく、ここまで生き残ってんのに警戒心が足りないんじゃねーか?」
この時代にリーゼントの男。
リーゼントの男の言葉に数人の人間が笑みを浮かべた。
「こういう時は『情報』が物を言うんだぜ。じーさん」
たしかに光る柱の中が何も見えない。
この光の柱に触れただけでどうなるかもわからない内から中に入ろうとしたのは自殺行為かもしれない。
「それで情報というのは?」
「ぷっ! おい聞いたか? 頭がお花畑すぎて笑えるぜコイツ」
そんなお人好しは、この中にいねーよ! と、からかわれた。
周囲の笑い声。
豆丸はこれまでモリ達に頼りっきりで実際自分で戦ったことがない。だから世界が変わってしまったのにまだ平和ボケしていると指摘されているようで、なんだかすごく恥ずかしくなってきた。
「頭の中がお花畑なのはお前だろ、バーカ!」
「ぁああっ⁉」
いつの間にか豆丸の隣にオカッパ頭の美少年が立っていた。
「爺ちゃん、そんなバカ放っといて、早く中に入ろーぜ?」
「え、あ、ちょっと」
オカッパ少年が、落ちていた小石を拾って、光る巨大な柱に指で弾いて飛ばしたが、跳ね返ってこないのを確認して、とっとと中に入っていこうとした。
「待てこらぁぁ、そこのガキ」
「爺ちゃん、早く来なよ?」
「くっそ、あの野郎ぉぉ!」
リーゼントの男の制止を無視して、中に消えた少年。
豆丸も一度深呼吸して、水泳の授業で初めてプールに顔をつけるように、ぎゅっとした顔をして、光る柱の中に飛び込んだ。
「爺ちゃん、目を開けなよ」
「うぇ? あっ──」
丸い大きな部屋。
床から壁、天井まで真っ白で、先の方に黒い3つの扉がある。
「中に入らない連中は話にもならない雑魚ども。俺や爺ちゃんと手を組むのは……」
おかっぱ少年の他に二人。
サングラスをしたヤ〇ザみたいな怖そうな人と、大都会にしか出没しないようなド派手な黒いドレスを着た少女がいた。
「おっ、先客がけっこういるな」
直後、入ってきたのはプロレスラーと言われても納得できそうな大男。その次に眼鏡を掛けたサラリーマン風の男が入ってきた。
「へえー、入ってこれたんだ?」
「っざっけんなよ、糞ガキ! 後でぶっ殺す」
最後に入ってきたのは、例のリーゼントの男、入るのによほど勇気が必要だったのか、肩で息をしている。
「規定人数に達したので、受付を終了しました!」
着ぐるみ、だよね?
黒い扉の真ん中から出てきたのは、七福神の一人で打ち出の小槌を持っている大黒天によく似たアニメの世界から飛び出してきたような見た目のキャラ?
64
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません
ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。
文化が違う? 慣れてます。
命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。
NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。
いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。
スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。
今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。
「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」
ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。
そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる