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# 30 新たな同居人
しおりを挟む「──歩茶!」
「おじいちゃん……よかった」
一つ目蜘蛛の化け物との戦闘から約2時間後。
なんとか、元の扉のある大空洞のところまで戻ってこれた。
駆け寄ってきた涙目の歩茶。
豆丸は懐に飛び込んできた小さな女の子をたじたじになりながらも、そっと歩茶の頭に手をやって、優しく撫でた。
なんだか本当に孫ができた気分。
こんなにも人のつながりが尊いものだとは、この歳になるまで知らなかった。
こっちまで涙がじわりと出そうなのを必死にこらえる。
歩茶には、頼もしいおじいちゃんだと思われていたい。泥水をすすって生きてきた余生幾ばくもない老体だが、この子を命ある限り守りたい。
そう感慨に耽っていると。
「あだっ! ──あっ、アベベ。って痛っ。ちょっと何してんの?」
アベベが、そこら辺に落ちている小石を豆丸の頭に一定間隔のリズムで投げ続けてくる。たまらず避けると、「べべっ」と言われて、プイッとされた。
そうか。
豆丸にかまってもらえないから拗ねているのかな?
「アベベもこっちにおいで」
「ベッ──」
うん?
その場でしゃがんで地面になにか文字を書き始めた。
歩茶がだんだん落ち着いてきたので、アベベのいた場所の地面を見下ろす。
(子守代はお菓子1週間分な?)
うっ──。
拗ねているどころか、突然任せられた歩茶を守るという役割に不満を持っていたようだ。
お菓子かー。腹持ちのいいものばかり集めていたので、お菓子なんて街に探しに行かないといけない。ってか、お菓子の味をどこで知ったんだろ?
扉の残り時間は、まだ8万秒──約24時間くらい残っている。
ギリギリまで外には出たくない。
だけど、もう2度歩茶を危険な目に遭わせたくない。
その思いから、豆丸たちはこの場で待機したまま、エリアコマンダーのスキルを使って、モリ達だけで探索に出てもらうことにした。
進化したモスセージ、ネコマタージュ、朽葉ツキ影の3体と豆丸からスマホを奪ってモリモリのゲームをしているアベベ。そして巫霊、斎宮ハガネだけをこの場に残して、モリの中でも進化に近い歴戦のモリやそれに準じたモリを分散させて、新たにオブジェクト化したモリと組ませて四方に散ってもらった。
嬉しいことに一つ目蜘蛛戦の最後ら辺で、等級スキルエリアコマンダーがレベル3に上がった。そのため探索範囲が15kmまで広がったので、このフリーダンジョンを隅から隅まで探索して、化け物を一掃した。強化や進化は遠隔では行えないため、レベル5ごとにロックが掛かったモリや進化可能になったモリが頻繁に戻ってきては、再編成して、出発していった。その関係で新たに4体のモリが進化したが、先に進化したキャラは選べなかったため、自然と蜘蛛戦時に選べなかった残りの斬オークとジャンリル、森羅バン蔵、スニャイパーへと進化した。以降はレベルマックスとなる50に達しても進化させることができなかった。
「よしっ、皆、用意はいい?」
「3&rf:z30<hKAZyD」
15時間くらいフルで探索して、残りの時間で徐々に探索規模を狭めていった。扉消滅1時間前にすべてのモリを集結させて、扉の前で、各モリ達に伝える。
例の人型を操っていた謎の強敵が外にいるという想定。
モリ達から外に突撃していって、その場にいる人間以外の化け物に攻撃を仕掛けるよう指示して、約300体のモリを次々に扉の先に送りこんだ。
その後、斎宮ハガネとアベベ、進化済の7体と一緒に外へ出た。
「おじいちゃん」
「ああっ、ごめんね」
扉から外に出る時に緊張して歩茶の手首を強く掴んでしまっていたことに気づき、すぐに手を放した。外には誰もおらず、寺の境内から溢れたモリ達が、建物の上や林の中、階段の下など広がっているが、誰も戦闘を行っている様子はなかった。
──よかった。
でも、まだ安心できない。
急いで、ここから立ち去らないと。
階段下に止めてあった軽トラも無事なのを確認して、バリスタを扱う野良サルだけそのままで、残りは進化したモリ達に荷台の上で警戒に当たってもらった。
幸い、例の規格外の化け物はおろか、人型とも出くわすことはなく、日中に動きの鈍った熊型を何体か蹴散らしたぐらいで、ようやく自宅へ戻ってこれた。
「あら、お帰りなさい」
「お姉ちゃん!」
「雨、さん……と?」
敷地の警備に当たっていたモリ達は無事で、敷地も特に荒らされていない。出る前から変わったことといえば、村議夫妻が乗っていた高級車がログハウスの横に止まっていたことだ。ログハウスの中には、優雅にお茶を嗜んでいる門口雨と見知らぬ女の子がいた。
歳は世界がおかしくなる前なら高校生くらいの見た目のツインテールの髪型の子。豆丸を視界に捉えた途端、敵意むき出しの視線に変わった。
「カグヤ、挨拶なさい」
「はい、お姉さま。──私は八雲カグヤ。別にアナタと仲良くするつもりなんてないから!」
「あっ、はい。えーと私は二瓶豆丸、そしてこの子は……」
雨に嘘みたいに甘い声で返事をした後、冷めた目で挨拶してきた。
それにしてもすごい自己紹介。
こちらも歩茶のことも含めて自己紹介した。
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