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# 31 手紙
しおりを挟むフリーダンジョンから帰ってきて2日が経過した。
2日前に衣服関係だけでなく飲料、食料、生活雑貨などかき集めたので当面、物資に不足することはない。
太陽光パネルも20枚ほど持ち帰った。パワコンとバッテリーも持ち帰ったので配電するのに苦労したが、なんとかド素人ながら自分でできた。そのお陰で昨日から、かなり現代的な生活を送れるようになった。
昨日から取り掛かっているのは、大量の野良サルやゴリ親方、斬リッ株による敷地全般の整備。野良サルは畑、ゴリ親方はログハウスの基礎から上物の建築。斬リッ株はマイ斧で敷地内にある木々を片っ端から切り倒し、根っこを別動隊の野良サルが掘り起こして伐根する作業を行なっている。わざわざあちこち歩き回らなくても、複数のスキルでモリ達に指示ができるので、豆丸自身は野良サルと一緒に畑を耕している。
歩茶は、雨や新しい同居人となった八雲カグヤと一緒に遊んだり、勉強を教えてもらったりしている。元女子高生、八雲カグヤは豆丸にだけ冷たく歩茶にはすごく優しいので良いのだが、ちょっと雨や歩茶に対する距離感がおかしいため、間違いが起きないか心配。そのため、ログハウスの中でモリモリのゲームをして遊んでいるアベベの視界を「戦術共有視界」のスキルで借りて、見張っている。今のところ、距離が近いだけで間違いは起きていない。
数日前の話に遡るが、雨もまた例のエリアボス討伐ミッションを豆丸とは別のエリアで、挑戦したそうだ。そこで出会ったのが、豆丸をずっと敵視している八雲カグヤ。雨もまたエリアボス討伐ミッションをクリアして、新しいスキルを手に入れたそうだが、どんなスキルを習得したのかはまだ聞いていない。
うーん。
なにあれ……未確認飛行物体?
形でいえば、子どもの頃、遊んだ竹とんぼのような物体。動力もないのにドローンのようにまっすぐ豆丸のところに向かって飛んでくる。
斎宮ハガネをストレージから出して、迎撃の準備を始める。
でも、その必要はなかった。
豆丸の近くまでやってきた竹とんぼ状の物体は動きを止めて、ひらひらと地面に落ちた。
これ神社とかで見かける紙垂って奴だ……。
紙垂といえば、あのオカッパ頭の少年、斎宮ミカドのスキル。ミカドから何らかのメッセージだと思った豆丸は、折りたたまれていた紙垂を開いてみた。ミカドから豆丸に宛てた手紙。紙面には、少年らしい年相応の乱れた筆跡で、でも、まっすぐな気持ちが書き殴られていた。
─────────────────
爺ちゃんへ
ひさしぶり! 元気にしてる?
例の若い女と、ちっちゃい子と三人で楽しくやってるなら、俺も安心だよ。なんか想像すると、ちょっと笑っちゃうけどさ。
ごめんな、爺ちゃん。
爺ちゃんがこの手紙を読んでるってことは、俺、ちょっとしくじっちゃって、もうそっちに行けなくなったってことなんだ。
本当はまた会えるの、すっごく楽しみにしてたんだけどな。
でも、爺ちゃんは元気で、なるべく長生きしてくれよな?
じゃあな。
斎宮ミカド
─────────────────
──なにこれ?
ミカド君に何かあったってこと?
紙の裏を見ても、住所も何も書いていない。
首からの上の血の気が引いていく。
めまいと一緒にあのちょっと生意気なのに豆丸を慕っている優しい少年の顔が脳裏に浮かぶ。
しくじったって、書いてある。
何か危ない目に遭って、こっちに来れないってことだよね?
でも、スキルの効果が発動したまま、ここまで手紙を飛ばしてきたので、ミカドが命を落としたわけはないのは確か。
「オジ様?」
後ろから雨に声をかけられた。
勉強の合間に気晴らしに歩茶と外で遊ぼうと外へ出てきたらしく、豆丸の様子がおかしいことを一発で見抜いた。
「実は……」
「運営」なる謎の存在から出されたエリアボス討伐ミッション時に色々と助けてもらった少年のことを雨に話した。
「そう……助けに行くなら私も手伝うわ」
「ありがとう。でも、ミカド君がどこに行ったのか聞いてなくて……」
「アンタ、あの生意気なガキのこと知ってんの?」
「え? 八雲、さんもミカド君のこと、知っているんですか?」
「まあね。だって、私もアイツと同じ五大家の一つ、〝八雲家〟だもん」
八雲家。
日本を古来より守護してきた五大家の一つで、彼女はその八雲家の次期当主になる予定だったという。
「まあ、誰もいなくなったから、今は家を継ぐとか、そういう次元じゃなくなったけどね」
例の世界がおかしくなった日に、恐ろしく強い人型の化け物が現れ、八雲家は総出で、まだスキルも目覚めていない状態で自前の術を用いて迎えうったという。
八雲カグヤもまた、化け物と戦おうと準備していた矢先に、彼女を幼少の頃から育ててくれた乳母兼教育係の老女に睡眠の術をかけられ、意識を奪われたそうだ。目覚めた時には、地下室に匿われていて、地上に出ると誰一人生き残っているものはいなくなっていたという。そんな凄惨な出来事を淡々と豆丸と雨に話してくれた。
斎宮ミカドとは、五大家のつながりで、年に1度、出雲大社で八百万の神々の〝神儀り〟で決まったことを人々に伝えるために集まる神事〝御告の座〟で毎年、会っていたそうで、それはもうすごく生意気だったと教えてくれた。
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