幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな

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二章

女性子爵

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 十二時間後、朝早くにスコフィールド子爵の屋敷に到着した。
 二人の馬車だと確認した門番は、すんなり屋敷の敷地内に通してくれる。
 ホークス公爵とハーレス侯爵の二人と一緒の馬車に乗っていたカタリーナが、スッキリした顔でおりてきた。

「どうだった?」
「問題ない。ホークス公爵は言うまでもないが、ハーレス侯爵も逆らう気力などないだろう」

 今まで見たことがないほど、悪い顔をするカタリーナ。

「ホークス公爵、おりてください。行きますよ」

 馬車からおりてきた公爵の顔は、まったく生気が感じられない。中でなにがあったのか、聞かないでおこう。

 屋敷の中に通されて、執事に応接室へと案内される。
 子爵は、女性だそうだ。応接室で待っていると、スコフィールド子爵が入ってきたのだけれど、頬にガーゼが貼られている。

「……セリーナ様!?」

 ソファーに座るホークス公爵の後ろに控えていたのに、応接室に入ってすぐに私に気づく。

「私を、ご存知なのですね」
「もちろんです! 歳は私の方が十ほど上ですけれど、私はセリーナ様に憧れています。ホークス公爵とこちらへいらしたのは、グルダを救うためですか?」

 子爵は、すぐに私の意図を理解してくれた。

「はい。ランドルク公爵の計画を、潰すためにまいりました」
「やっぱり! 微力ですが、お手伝いいたします!」

 なにもお願いしていないのに、自分から手伝うと申し出てくれる。シェリルからもらっていた情報通りの方だった。
 ランドルク公爵に仕えていたのは、子爵の亡くなられたお父上だった。
 子爵はランドルク公爵に反発し、ワイングラスを投げつけられて顔に傷を負ったとホークス公爵から聞いている。
 ランドルク公爵は、子爵のお父上を使用人のようにこき使っていた。そんな公爵に、仕えたくはなかったのだろう。けれど、公爵が味方を手放すはずがない。
 スコフィールド子爵家を潰すと脅され、仕方なく従っていた。
 それでも反発したのは、今回の計画を聞いたからだそうだ。子爵も、そんなことをしたら国が終わりだとわかっていた。計画は辞めるべきだと進言した結果が、頬の傷というわけだ。
 子爵の顔を見ると、ランドルク公爵を許せない気持ちがさらに強くなる。公爵は下級貴族を、貴族とは思っていない。
 しかも、子爵は女性だ。グルダでは女性が爵位を持つのは珍しく、孤立してしまう。相談できる相手も、悩みを打ち明ける相手もいなかったようだ。
 そんな子爵を、都合のいい道具だと思っている。なんだか、クリスティ様を思い出す。そして、この件の黒幕は元王妃様。
 すべては、ランドルク公爵家から始まっている。
 一年以上前に解決したと思っていたのに……必ず今回で終わらせると心に誓う。
 これで、三人の協力を得ることができた。残りは二人。さっそく、次の貴族に会いに出発する。
 反発を表に出したスコフィールド子爵家の馬車は使わない方がいいと判断し、ホークス公爵家の馬車には私とスコフィールド子爵、そしてカタリーナが乗り込む。
 ハーレス侯爵家の馬車には、ホークス公爵とハーレス侯爵、そして護衛の一人が見張りとして乗り込む。
 次の相手の屋敷までは、一週間ほどかかるようだ。

「次は、バイゼル侯爵に会いにいくおつもりですか?」

 子爵は、少し心配そうな表情を浮かべる。次の相手は、ハーレス侯爵のような方のようだ。しかも、最初からランドルク公爵側の人間。 

「なにか、対策はありますか?」
「私に考えがあります」

 スコフィールド子爵は、とても楽しそうに笑った。ずっと無理やり従わされていて、苦しかったのだろう。
 今の彼女は、とても生き生きとしている。

「それ、いいですね!」

 カタリーナも、なぜか楽しそうだ。
 バイゼル侯爵の屋敷に着くまで、退屈はしなさそう。
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