幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな

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二章

似た者一族

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 最後の相手は、ドノバン公爵。
 ドノバン公爵夫人は、ランドルク公爵の妹だそうだ。そして、元王妃様の妹でもある。一番、繋がりが強いだろう。
 ランドルク公爵家が三大貴族から名を消したあとも権力をふるえたのは、ドノバン公爵がいたからだ。

「ここは、私たち二人で行きましょう」

 今までホークス公爵にお願いしていたけれど、ドノバン公爵の屋敷には私とレイビス様が行くことにした。護衛として、カタリーナを連れていく。
 護衛の服からいつもの服に着替え、気合を入れる。

「ドノバン公爵にお会いしたい」

 門番は、すぐに屋敷の中へ通してくれた。
 出迎えたのは、ドノバン公爵と夫人。公爵はずいぶんと小柄で、大人しそうな感じの方だ。そして夫人は、あのランドルク公爵家の人間らしく派手な服に派手な髪型で派手なメイク。たくさんの宝石を身につけていて、なんだか文字通り眩しい。

「レイビス殿下とセリーナ様が、まさか我が家にいらっしゃるとは思いませんでした。今日は、どうされたのですか?」
「あなた! お二人に立ち話なんて、失礼よ! 申し訳ありません。こちらへどうぞ」

 屋敷に入ってすぐに、二人の関係性が見えた。
 シェリルとホークス公爵、そしてスコフィールド子爵からの情報によると、ドノバン公爵も夫人も、見た目通りの方だそうだ。
 公爵は気が弱く大人しい。夫人は気が強く、公爵を顎でつかうような女性だ。
 応接室に通され、お茶が出される。

「最高級の茶葉を使わせました。お口に合うかわかりませんが、どうぞ」

 わざわざ最高級の茶葉を使ったと話すところをみると、とてもプライドが高そうだ。
 けれど私たちは、元王妃様にもクリスティ様にも会っている。とても似た一族だと、苦笑いを浮かべる。

「お茶をいただきにきたわけではないので、結構です。今日きた理由は、ドノバン公爵がグルダをどうしたいのかお聞きしたいと思いまして」

 レイビス様が、揺さぶりをかける。

「殿下、いきなりどうされたのです? 失礼ですが、殿下はグルダの人間ではありません。どうしてそのようなことをお聞きになるのか、わかりませんわ」
「俺は、ドノバン公爵に聞いている。夫人は黙っていてください」

 鋭い目で睨まれて、夫人は少し機嫌が悪そうだ。甘やかされて育ってきたからか、注意されたこともないのだろう。二十年後のクリスティ様を見ているみたいだ。

「……殿下の仰っている意味が、わかりません」

 思いっきり、公爵の目が泳いでいる。

「本当に、わからないのですか?」

 レイビス様はドノバン公爵の目をしっかりと見つめて、そう問う。
 このタイミングで、ルギウス様の婚約者の兄であるグランディ王国の王太子が屋敷を訪れたのだから、自分たちの企みが知られているかもしれないと考えているはず。

「あ……あの……」

 ドノバン公爵は、ランドルク公爵の企み通りになって欲しいとは思っていないだろう。
 元々争いごとが苦手で、心優しい性格なのだそうだ。公爵を継ぐことも、望んでいなかった。妻がランドルク公爵家の人間でなかったなら、ルギウス様の味方になってくれていただろう。

「もう、やめませんか? 公爵は、この国がお好きなのですよね? ランドルク公爵の言いなりになっていたら、グルダは終わりです」
「セ、セリーナ様!? なにを仰っているのです!? 全てはこの国の問題です! 他国の方が、口出しするのは間違っていますわ!」

 先程レイビス様に黙るように言われたのに、すぐに口を出す夫人。

「他国の方……ですか。私は、セリーナ・ブランカです。この国でブランカ子爵家に生まれ、この国で育ちました。それに、グランディ王国もスフィリル帝国も、グルダの友好国だということをお忘れですか? 私の母国を、あなた方のような人間の好きにはさせません!」

 感情的になってしまった。あまりにも夫人が、クリスティ様に似ていたからだろうか。

「あ……あの……でも……」

 私の言葉に、夫人は言い返す言葉が見つからず口ごもる。

「レイビス殿下、セリーナ様、申し訳ありませんでした。私がしっかりしないから、このようなことになってしまったのだとわかっています」

 ドノバン公爵は、静かに話し出す。私たちがすべてを知っているのだと、気づいたようだ。

「こんな私ですが、グルダの公爵です。自国を守りたいと思う気持ちはあります。ランドルク公爵家とは縁を切り、この国を守るために尽くしたい」
「あなた!?」

 私たちがきたことがきっかけで、ようやく公爵として国を守る決心がついたようだ。

「ランドルク公爵家は、終わりだ。私とこのまま生涯をともにするか、離婚するか選びなさい」
「そんな!? 私に、家族を捨てろと言うの!?」
「私も、おまえの家族だ。そして、おまえを愛している。だが、これ以上は見過ごせない。この国は、ランドルク公爵家のものではない」

 気が弱いから従っていたのかと思っていたけれど、夫人を愛していたからランドルク公爵家に従っていたようだ。その愛する人を手放してでも、この国のために生きると決断した。
 ドノバン公爵は、もう二度と国を裏切るようなことに手を貸さないだろう。
 そして夫人も、ドノバン公爵を選んだ。お互い、愛し合っていたようだ。

 これで、ランドルク公爵家の味方だったすべての貴族をこちらの味方にすることができた。
 あとは、ランドルク公爵家を追い詰めるだけだ。
 決戦は、一週間後に開かれる議会。それまでは、大人しく身を隠すことにした。
 ドノバン公爵は屋敷に残り、連れてきた貴族たちはブランカ子爵邸で過ごすことになった。
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