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二章
もう終わりです
しおりを挟むシェリルの登場に、会議室内がざわつき始める。
そのあとにドノバン公爵、そして私とレイビス様が入る。
「あなた!? どうしてここに!?」
驚いたのは、夫人だけではない。
シェリルはまだしも、急病のはずのドノバン公爵とグランディ王国の王太子、そしてその婚約者がいっせいに入ってきたのだから、皆わけがわからないだろう。
「なぜ、この国の貴族ではない方がここにいらっしゃるのでしょうか?」
ランドルク公爵は、私たちが一番の脅威だとすぐに判断したようだ。
「それをあなたが言いますか? 貴族ではない平民を議会に参加させたのは、ランドルク公爵ではありませんか」
ランドルク公爵なら、この場に元王妃様とサイモン様をお連れするとわかっていた。
私とレイビス様の存在を知った公爵は、一刻も早くサイモン様を国王にしようとする。この場でルギウス様を国王の座から退かせ、すぐにサイモン様を王にするつもりだったのだろう。
「よくも……よくも私の前に顔を出せたわね! おまえのせいでクリスティが、どんな目にあっていることか! 殺してやる!」
元王妃様は、私に殴りかかろうとした。けれど、一瞬で彼女の喉元に剣が突きつけられる。
「俺の婚約者に、指一本触れることは許さない」
レイビス様は彼女の喉元に剣を突きつけながら、鋭い目つきで睨む。今にも斬ってしまいそうだ。
私のために、本気で怒っているのがわかる。
「……あ……あ……」
元王妃様は恐怖からか、動くこともできず言葉も出てこない。
会議室内が静まり返り、皆固唾を飲んでいる。
グランディ王国の王太子を止められる者など、グルダ王国にはいない。あのランドルク公爵でさえ、なにも言えずに立ち尽くしている。
実の息子であるサイモン様は、青ざめた顔で震えている。
「おまえは今、王族ではないただの平民だ。俺の婚約者への暴言と暴行未遂。無礼な行いをしたのだから、ここで斬り捨ててもなんの問題もないだろう?」
「も……申し訳あり……あり……ありません……」
死を意識すると、先程とは別人のようになってしまった元王妃様。
「おやめください。レイビス様が手を下す必要はありません」
そっと、剣を持つ手に触れる。すると、レイビス様はゆっくりと剣を下ろして鞘におさめる。
レイビス様が手を下さなくても、彼女はもう終わりだ。
静まり返った会議室で、私は口を開く。
「ランドルク公爵、あなたの企みはすべてわかっています。もう、終わりにしませんか?」
これで終わりにするような人なら、最初から国を裏切ったりはしないだろう。
「……セリーナ様、おっしゃっている意味がわかりません。私はただ、この国を守ろうとしているだけです」
先程のレイビス様が恐ろしかったのか、ずっと強気で話していたランドルク公爵が控え目に話している。
「わからない? ドノバン公爵が、すべてお話してくださいました。それでも、わからないとおっしゃるのですか?」
「ドノバン公爵は、私を陥れようとしているのです! 急病と偽り、ここに姿を現したことも怪しい! すべては、ドノバン公爵の企んだことです!」
控え目だった公爵が、声を荒らげる。
私たちの味方になったドノバン公爵に、なにもかもなすりつけるつもりだったようだ。
ドノバン公爵夫人も、そのつもりだったのだろう。夫人は、公爵を睨みつけている。なんだか、公爵が気の毒だ。
「他国に軍事機密を流し、グルダを攻撃するように四カ国に頼んだ。四カ国に攻め込まれた責任をルギウス様に追及し、国を守るためには国王の座を退く必要があると脅した」
軍事機密と聞き、会議室がまたざわつく。けれど私は、そのまま話を続ける。
「そして、平民になったサイモン様に王位を譲れなどと戯言を言う。その首謀者は、誰ですか?」
私が問うと、味方にしたホークス公爵たち十人がいっせいに立ち上がった。そして……
「「「ランドルク公爵です!」」」
と、答えてくれた。
「な……!?」
ランドルク公爵は、驚いて言葉が出てこない。
ホークス公爵たちには、私たちが会議室に入るまで黙っているようにお願いしていた。
ドノバン公爵の屋敷に行ったのは、私とレイビス様、そしてカタリーナだけだ。彼らも味方にしていたことは、話していない。
夫人はそれを知らずに、ドノバン公爵と私たちを裏切った。ドノバン公爵だけが裏切ったと思っていたランドルク公爵は、そのまま計画を実行に移したのだ。
まさか味方全員が裏切っているとは、考えもしなかっただろう。
「ランドルク公爵! あなたは、国を裏切ったのですか!?」
「軍事機密を流すなど……なんということを……」
「あなたは国の恥だ!」
状況を理解し始めたほかの貴族たちも、ランドルク公爵を攻撃する。
「う……うるさいうるさいうるさい! だからなんだと言うのだ!? 私がいなければ、この国は四カ国に滅ぼされるだけだ! 止められるのは、私だけだ! それでも、私の罪を問うというのか!? 私の言う通りにしなければ、グルダは終わりだ!」
どこまでも、諦めの悪い人だ。
「その必要はありません。グルダは、攻撃などされていないのですから」
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