26 / 42
26、準備は整った
しおりを挟む「死んだことにとは、ずいぶんと思い切ったことを考えたな……」
「私にとってケリーだけが、家族だったのです。彼女を守る為なら、何だっていたします」
陛下は少し考えた後、ゆっくりと口を開く。
「分かった。その者に、新たな身分を用意しよう。そうでもしなければ、我が娘は私を許してはくれなさそうだしな」
気まずそうに微笑みながら、私の願いを聞き入れてくれた。
「陛下、感謝いたします!」
もし受け入れてくれなかったら、泣き落としするつもりだった。『十六年もの間、私が実の娘だとお気付きにならなかったのですか!?』と。もちろん、気付くはずがなかったことは分かっている。学園に入るまで、陛下や王妃様、殿下にもお会いする機会などなかったのだから。オリビア様がわがままだからとか、家族の誰にも似ていないからという理由で、我が子ではないと思うような方達ではないのだから、入れ替えられたなんて夢にも思っていなかっただろう。それでも、ケリーを守る為なら何でもする覚悟だった。陛下に酷いことを言わずにすんで、ホッと胸を撫で下ろす。
「陛下……か。まだ、父とは呼んでくれないのだな」
「陛下、残念ですがそれはまだですね。殿下でさえ、未だに殿下のままです。レイチェルは頑固ですので、諦めてください」
ケリーの件を陛下が受け入れてくれて安心したのか、ことの成り行きを見守っていたディアム様が口を開いた。
「ダニエルもまだなのか!? だが、あやつはずいぶん前からレイチェルの側にいるではないか。私だって、レイチェルの力になりたいとずっと思って来た。少しくらい、この父を頼ってくれてもいいではないか」
頼ってもらえなかったことがずっと寂しかったのか、いじけてしまったようだ。泣き落とし作戦は、本当にしなくて良かったと思った。
陛下の意外な一面を見ることが出来て、愛されているのだと実感することが出来た。
「そのように仰っていただき、感謝いたします。それでは、さっそく頼ってもよろしいでしょうか?」
オリビア様の誕生日パーティーの日に、全てを明らかにする許可を得る。陛下は、今年のオリビア様の誕生日パーティーを中止しようと考えていたけれど、開催していただくよう説得した。
どうしてその日を選んだのかというと、その日が始まりだったからだ。その日この王宮で、私とオリビア様の人生が変わった。それを正すには、ちょうどいい機会のように思えた。そしてこの場所で、母に最大の復讐をする。天国から地獄へと、真っ逆さまに落ちてもらう。
陛下の協力を得ることができ、私達は寮へと戻る。
ダニエル殿下は、捕まえた人達から自供を次々に引き出してくれている。
ケリーの手紙、ガードナーさんの供述、商人が母と交わした契約書、母が殺害依頼したという男達の供述。これだけあれば、母は逃げることなど出来ないだろう。父の関与は、母が証明してくれる。なぜなら、母は父を恨んでいるからだ。母のことだから、自分が罪を犯したのは父のせいだとでも思っているだろう。全て自分がしたことだということを、思い知らせる。
その日の夕方、陛下の使いの方がケリーをこっそりと王宮へ連れて行った。いつまでも寮に隠れてはいられないからと、別の戸籍を用意するまでは王宮でかくまってくれるとのことだ。
侍女がいないと不便だろうからと、ディアム様が新しい侍女を用意してくださっていた。まるでこうなることを分かっていたかのような素早い対応に、ディアム様は意外と頭が切れる方なのではないかと感心させられる。
ここまで、長かった。
たくさんの方達に力を借りて、ようやくここまで来ることが出来た。
オリビア様の誕生日パーティーは、一週間後に行われる。陛下は中止しようと思っていたから、まだ招待状は送っていなかった。けれど、誕生日パーティーは毎年行われていたのだから、今招待状が届いたとしても、たくさんの貴族達が出席してくれるだろう。
1,261
あなたにおすすめの小説
八年間の恋を捨てて結婚します
abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。
無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。
そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。
彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。
八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。
なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。
正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。
「今度はそうやって気を引くつもりか!?」
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
あなたへの愛を捨てた日
柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。
しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。
レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。
「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」
エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる