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攫われた王妃
しおりを挟むどうやらセリシアは、寝ている間に馬車に乗せられ攫われたようだ。
結界がある事で、魔物に襲われず安心して暮らせていた事が、逆に敵をも安全に侵入させていた。
アーチル村が他国に襲われなかったのは、周りの土地に凶暴な魔物がいたから……。
その事に慣れていたアーチルの住民は、人間にも敵がいることを予測していなかった。
「んんー!……んんんー!」
口に布を咥えさせられた状態で、助けを呼ぼうと必死に叫ぶ!が、セリシアの声は、馬車の音でかき消される……。
数時間走ると馬車が止まり、セリシアの前に一人の男が姿を現した。
「セリシア、やっと会えたな!」
それは……亡くなったと思っていた、ジオン王だった!
「どうして生きているのか、不思議そうだな。私はあの時、隠し部屋の存在を思い出し逃げ込んだ。あんな狭い部屋で一ヶ月もじっと隠れ、魔物がいなくなるのを待っていたんだ。」
隠し部屋の存在は王族しか知らず、ジオン王は自分が助かるために臣下達や兵士達を囮にし、見殺しにしていた。
城に残っていた宝石類を集め、荒くれ者を雇い、セリシアを攫わせて来たのだ。
「お前がいればまた国が作れる!お前は私のものだ!」
自分だけが助かればいいと思うなんて……この人は、王に相応しくない!
セリシアが攫われ一時間が経った頃、プラストは部屋にセリシアがいないことに気づいた。辺りを探してみたがセリシアは見つからず……家の周りの複数の不審な足跡に気づき……
「陛下!セリシア様が!!」
キリト王に急いで知らせ、二人は家から続く足跡を調べ馬車の車輪の跡を馬に乗って追った!
セリシアとジオン王を乗せた馬車は、スベマナへと向かっていた。
「スベマナに着いたら、アーチル村の結界を消滅し、スベマナに結界を張ってもらう。お前は元々、スベマナの王妃なのだから、元に戻るだけだ。」
自分で追放したくせに、今更スベマナの王妃に戻れだなんて……自分勝手にも程がある!
力を使えば、逃げられるかもしれない……でも、この力は人に使いたくない……キリト様…助けて…!!
「大変だ!!後ろからすげー勢いで男が二人、追って来る!」
追ってきたのはもちろん、キリト王とプラストだ!
「おい!どうにかしろッ!」
ジオン王の声は焦っていた……それは、キリト王の実力を知っていたからだ。
スベマナ一の騎士……いや、ボーデスト大陸一の騎士だった。
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