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5、初めて
しおりを挟む「何ですって!?」
顔を真っ赤にしながら怒り出すイザベラ様。自分から悪口を言ってきたくせに、返されると怒るなんてびっくりですね。
「心が卑しいか……その通りだな。お前が誰かは知らないが、お前と結婚するやつは哀れだな」
リック様が……リック様が……
どうしたのでしょう、今日は別人のようです!
リック様にそんな事を言われると思っていなかったのか、イザベラ様は口を開けたまま固まってしまいました。今のうちに、馬車に乗って帰りましょう。
馬車に乗り込んで直ぐに、リック様の変化が気になった私は直接聞いてみる事にしました。
「今日はどうされたのですか? 他の女性にも目を向けませんでしたし、なんならあしらっていました。先程も、イザベラ様に対しての態度もいつものリック様とは違いました」
カリュード様への態度だけ、いつも通りだった気がします。
「他の女をジロジロ見るなと言ったのは、ミシェルだろ? それに、誰でもいいわけじゃない」
誰でも良くないから、真実の愛とか言ってるんでしょうけど、私との約束を守った事も意外ですし、まともな事を言ってるリック様に、もしかしたら私もリック様を誤解していたのかもしれないと思いました。
「先程はイザベラ様に言い返して下さり、ありがとうございました。正直、スッキリしました」
口を開けたまま固まっていたイザベラ様の顔が、忘れられません。
「いや、言い返したのはミシェルだろ。まさか、俺を庇うような事を言ってくれるとは思ってなかった。ありがとう」
自然な笑顔を見せてくれたリック様。結婚式の時とは、完全に別人です。顔を隠せば……とか言った人とは思えません。思わず、リック様の顔をじーっと見てしまいました。
「なぜ、そんなに睨むんだ?」
睨んではいません……
「リック様が変わり過ぎて、別人なのではと思いまして」
たった数日で、人ってこんなに変われるものなのでしょうか?
「俺は変わっていない。強いて言うなら、ミシェルへの考え方を改めただけだ」
「考え方とは?」
私への考え方とは、どういう事なのでしょう?
「結婚した日、君に蹴られたところが痛くてね。君の言葉を聞いて、俺の痛みより君の心の方が痛いんじゃないかと思ったんだ」
リック様は、人の心なんて、全く分からない方なのかと思っていました。
「俺は、女性を……というか、令嬢を信用していない。今日の茶会で、令嬢達が次から次へと話しかけて来てたのを見たろ? ああいう女性が、いつしか苦手になっていた」
リック様は、ご自分の容姿が美しい事に気付いていないのでしょうか? その容姿が、令嬢達を惹き付けているという事を、分かっていないようです。
今のお話を聞いて、納得がいきました。リック様は、私もその令嬢達と同じだと思っていたのですね。だから、あんな突き放す言い方を……
「私の誤解は、解けたのでしょうか?」
「他の令嬢達とは違う事は分かった。蹴りを入れられたのは、君が初めてだしな。それに、言い返して来たのも君が初めてだった」
結婚式の時に笑ったのって、そういう意味だったのですね。
「式の日に、君の容姿を貶すような事を言ってすまなかった。君のドレス姿は、誰よりも美しかった」
美しかったなんて、生まれて初めて言われました。私の頬は、なぜか真っ赤に染まっています。
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