〖完結〗真実の愛が欲しいという旦那様と結婚した私は……

藍川みいな

文字の大きさ
4 / 10

4、お茶会は嫌い

しおりを挟む


 翌日、お茶会が開かれるローガン侯爵のお邸へとお邪魔しました。

 「お招き頂き、ありがとうございます」

 ローガン侯爵夫妻にご挨拶をして、中庭に用意されたテーブルに着きました。
 沢山並べられたテーブルを、良く手入れされている花壇の花々の香りが包み込んでいて、とても心地のいい空気が流れています。

 「リック様、お久しぶりです」

 リック様に話しかけて来たのは、とても可愛らしいご令嬢です。妻の私が隣りに居るのに、挨拶どころか視線も向けて来ません。

 「ああ、君はハーメル子爵の……」

 リック様は、ご令嬢の名前を忘れたようです。

 「エメリア様ですよね。お噂通り、美しい方ですね」

 エメリア様は、私が話しかけても全くこちらを見ようとはしません。分かりやすい方ですね。

 「リック様に、ずっとお会いしたかったんです! お会い出来ない間に、まさかご結婚されてしまうなんて……」

 妻がここに居るのに、よくそんな事が言えますね……
 エメリア様には、私なんて眼中にないようです。こんなに美しい方からこのような事を言われたら、リック様の鼻の下が伸びてしまうのでは……と思ったのですが、リック様はエメリア様には全く興味がないようです。

 「なぜですか? 別に会わなくても、なんの支障もないでしょう」

 そう言われたエメリア様は、顔を真っ赤にして去って行きました。好意がある事を伝えているにも関わらず、今の対応は傷付きますね。
 何だか、結婚式の日を思い出します。リック様は、私にだけ冷たいわけではなかったようです。
 それにしても、あんなに可愛らしい方に興味を持たないなんて、リック様はどんな方が好みなのでしょうか?

 その後も、次々に令嬢達がリック様に話しかけて来ました。私の存在なんて無視する令嬢達。
 でも何故か、リック様は誰にも興味を示しません。真実の愛が欲しいと言っている割に、皆さんを最初から拒絶してるように見えるのですが?
 
 「リック! 久しぶりだな!」

 お茶会が中盤に差し掛かり、リック様に男性が声をかけて来ました。

 「カリュードか、本当に久しぶりだな! いつこの国に戻って来たんだ?」

 リック様にも、ご友人がいたのですね。って、これはかなり失礼ですね。

 「最近だ。お前が結婚したと聞いて、驚いたよ。そちらが?」

 カリュード・マシューズ様は、マシューズ伯爵のご長男で、とても優秀な方だという噂です。整った顔立ちで、容姿はリック様にも負けていません。18歳の若さで、国の重要な任務を任されていたとか。
 カリュード様は、私の方を見てにっこりと微笑んでくれました。お茶会に来てから、ずっと透明人間みたいな扱いを受けていたので、何だか不思議な気持ちになりました。

 「初めまして、ミシェルと申します」

 イスから立ち上がり、軽く頭を下げました。

 「初めまして、カリュード・マシューズです。リックとは、昔からの腐れ縁なんですよ。リックはいつまでも子供みたいな奴だから、苦労しているでしょう?」

 リック様のことを、よくご存知なのですね。リック様のご友人に、このようにまともな方がいるとは思いませんでした。苦労してる……と言いたいけれど、夫を立てるのが妻の役目ですからね。

 「苦労だなんて、とんでもありません。リック様を、尊敬しております」

 「リックは、幸せ者ですね……」

 カリュード様は、そう言って微笑んでくれました。リック様も、カリュード様みたいな方だったら良かったのに……なんて、思ってしまいます。

 「カリュード! 俺は子供じゃないぞ!」

 そう言い返してる時点で、子供だということに気付いていないのでしょうか。

 「お前は、いつも自分の事ばかりだな。近いうちにまた会おう」

 「何だ、アイツ……」

 カリュード様が去って行く後ろ姿を見ながら、不機嫌そうな顔をするリック様。事実を言われただけだと思います。

 自慢話や令嬢達のリック様へのアピールで疲れ果てた頃、やっとお茶会が終わりました。ローガン侯爵に挨拶をして、帰ろうとしていた所……

 「あら? どうして商人の娘が、このような場所にいるのかしら?」

 嫌味たっぷりなこの声の主は、子爵令嬢のイザベラ様です。私の事を、なぜか嫌って目の敵にしています。相手にしていたら疲れるので、目を合わせずにそのまま通り過ぎようと思います。

 「リック様もお可哀想に。卑しい商人なんかの娘と、無理やり結婚させられたのですよね? お金で結婚相手を買うなんて、卑しい商人丸出しですこと!」

 すれ違いざまに、畳み掛けるように悪口を言うイザベラ様。
 商人は、貴族に嫌われています。幼い頃から、卑しい商人の娘だとずっとバカにされて来ました。私は何を言われても慣れているので構いません。 お父様はいつも言っていました……貴族が商人をバカにするのは、自分達よりもお金を持っているからだと。貴族であり、商人である事に、誇りを持っているとも言っていました。私はそういうお父様を、尊敬しています。
 ですが、お金でリック様が買われたなどと口にしたイザベラ様に何だか腹が立ってきました。

 「まだ結婚出来ないイザベラ様は、羨ましいのですね。リック様はお金で買われるような方ではありません。そのように考えるイザベラ様の方が、心が卑しいのではないですか?」

  
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

幸運を織る令嬢は、もうあなたを愛さない

法華
恋愛
 婚約者の侯爵子息に「灰色の人形」と蔑まれ、趣味の刺繍まで笑いものにされる伯爵令嬢エリアーナ。しかし、彼女が織りなす古代の紋様には、やがて社交界、ひいては王家さえも魅了するほどの価値が秘められていた。  ある日、自らの才能を見出してくれた支援者たちと共に、エリアーナは虐げられた過去に決別を告げる。 これは、一人の気弱な令嬢が自らの手で運命を切り開き、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転の物語。彼女が「幸運を織る令嬢」として輝く時、彼女を見下した者たちは、自らの愚かさに打ちひしがれることになる。

虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。 妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。 その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。 家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。 ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。 耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。

恋心を利用されている夫をそろそろ返してもらいます

しゃーりん
恋愛
ソランジュは婚約者のオーリオと結婚した。 オーリオには前から好きな人がいることをソランジュは知っていた。 だがその相手は王太子殿下の婚約者で今では王太子妃。 どんなに思っても結ばれることはない。 その恋心を王太子殿下に利用され、王太子妃にも利用されていることにオーリオは気づいていない。 妻であるソランジュとは最低限の会話だけ。無下にされることはないが好意的でもない。 そんな、いかにも政略結婚をした夫でも必要になったので返してもらうというお話です。

あなたは愛を誓えますか?

縁 遊
恋愛
婚約者と結婚する未来を疑ったことなんて今まで無かった。 だけど、結婚式当日まで私と会話しようとしない婚約者に神様の前で愛は誓えないと思ってしまったのです。 皆さんはこんな感じでも結婚されているんでしょうか? でも、実は婚約者にも愛を囁けない理由があったのです。 これはすれ違い愛の物語です。

【完結】呪言《ことほぎ》あなたがそうおっしゃったから。

友坂 悠
恋愛
「君はまだ幼い、私は君を大事にしたいのだ」  あなたがそうおっしゃったから。  わたくしは今までお飾りの妻でがまんしてきたのに。  あなたがそうおっしゃったから。  好きでもない商会のお仕事を頑張ってこなしてきたのに。  全部全部、嘘だったというの?  そしたらわたくしはこれからどうすればいいっていうの?  子供の頃から将来の伴侶として約束された二人。  貴族らしく、外あたりが良く温厚に見えるように育ったラインハルト。  貞淑な令嬢、夫を支えるべき存在になるようにと育てられたアリーシア。  二人は両家に祝福され結婚したはず、だった。  しかし。  結婚したのはラインハルトが18になった歳、アリーシアはまだ14歳だった。  だから、彼のその言葉を疑いもせず信じたアリーシア。  それがまさか、三年後にこんなことになるなんて。  三年間白い結婚を継続した夫婦は子を残す意思が無いものと認められ、政略的な両家のしがらみや契約を破棄し離縁できる。  それがこの国の貴族の婚姻の決まりだった。  元は親同士の契約に逆らって離縁しやり直すための決まり事。  もちろん、そんな肉体的繋がりなど無くても婚姻を継続する夫婦は存在する。  いや、貴族であれば政略結婚が当たり前、愛はなくても結婚生活は続いていく。  貴族の結婚なんて所詮そんなもの。  家同士のつながりさえあれば問題ないのであれば、そこに愛なんてものがなくってもしょうがないのかも、知れない。  けれど。  まさかそんなラインハルトから離婚を言い出されるとは思ってもいなかったアリーシア。  自分は傾いた家を立て直すまでのかりそめの妻だったのか。  家業が上手くいくようになったらもう用無しなのか。  だまされていたのかと傷心のまま実家に戻る彼女を待っていたのは、まさかのラインハルトと妹マリアーナの婚約披露。  悲しみのまま心が虚になったまま領地に逃げ引き篭もるアリーシアだったが……  夫と妹に、いや、家族全てから裏切られたお飾り妻のアリーシア。  彼女が心の平穏を取り戻し幸せになるまでの物語。

政略結婚の為の婚約破棄など貴方には言えなかった

青空一夏
恋愛
私は、第三王女なので、政略結婚はしなくて良いと父である王様に言われていた。だから私は大好きな騎士団長ワイアットとの愛を育んでいた。けれど、大国の王に望まれた私は戦争を避けるために嫁ぐことになった。その大国の王は老人でその王が亡くなると側妃や愛妾は全て一緒に埋葬されるという風習も知った。 二度とワイアットに会えないことを悟った私は、ワイアットに憎まれることを選んだ。私のことなど忘れてワイアットには幸せになってほしかった。 「あなたみたいな貧乏貴族より、大国の王に嫁ぐわ」そんな心にもないことを言って、私は大好きな男性に恨まれ蔑まれ嫌われた。 泣く泣く嫁入りをした私だが、その3年後に嫁ぎ先の王が亡くなる前に私を祖国に帰してくれた。帰ってきた私に大金持ちになったワイアットが結婚を申し込むが、これは彼の復讐だった。 私は、この結婚で愛が掴めるのでしょうか? よくありがちなお話の流れです。

貴方の願いが叶うよう、私は祈っただけ

ひづき
恋愛
舞踏会に行ったら、私の婚約者を取り合って3人の令嬢が言い争いをしていた。 よし、逃げよう。 婚約者様、貴方の願い、叶って良かったですね?

完結 振り向いてくれない彼を諦め距離を置いたら、それは困ると言う。

音爽(ネソウ)
恋愛
好きな人ができた、だけど相手は振り向いてくれそうもない。 どうやら彼は他人に無関心らしく、どんなに彼女が尽くしても良い反応は返らない。 仕方なく諦めて離れたら怒りだし泣いて縋ってきた。 「キミがいないと色々困る」自己中が過ぎる男に彼女は……

処理中です...