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8、気持ちの変化
しおりを挟むカリュード様がお帰りになった後、少し気まずい空気のまま夕食をいただいていました。
何か話さなくちゃ……そう思っても、全く話題が思い浮かびません。
仕方なく黙々と夕食を食べていると、リック様の方から話しかけて来ました。
「今日はすまなかった。嫌な思いをさせてしまった」
悪いのは私なのに、リック様が謝る事などありません。
「嫌な思いをさせてしまったのは、私の方です。毅然とした態度を取れず、申し訳ありませんでした」
「いや、俺が……」
リック様は、言いかけてやめてしまいました。俺がの後が気になり、リック様の顔を見つめてみたのですが、黙ったまま下を向いています。
こんな空気のままだと、良くありませんね!
「雨が凄かったですけど、濡れませんでした? 私、雨にはいい思い出がなくて、苦手なんです」
雨が降ると、昔の事を思い出します。子供の頃、雷が怖くて雨が降るといつも怯えていました。今でも雷が怖くて、雨は苦手です。
「君にも、苦手な事があるなんて驚きだな」
リック様は私をなんだと思っているのでしょう……
「私にだって、苦手なものや怖いものもあります。商人になるつもりだったので、女性だからと甘く見られないように強くなろうと生きて来ました」
女性だからなんて、理由をつけられたくなかったのです。認めてもらう為に、誰よりも努力して来たつもりだけど、それでも偏見はなくなりませんでした。
「辛い思いをしてまで、なぜ商人になりたかったんだ?」
理由なんて、簡単です。
「父を尊敬しているからです。父のように、身分なんて関係のない仕事をするのが夢でした」
「今でも、商人になる事が夢なのか?」
今は……どうなのでしょう……
結婚が決まって、私はリック様の妻になると覚悟を決めました。だけど、この結婚はいつか終わりが来てしまいます。その時、私はまた商人になる為に頑張れるのでしょうか……
「正直、分かりません」
私はどうしてしまったのでしょう……
あんなに商人になりたかったはずなのに、今はこの暮らしがいつまでも終わらないで欲しいと思っています。リック様に、恋愛感情を抱いているわけではないと思いますが、この邸でリック様と暮らすのは居心地が良いのです。
「君の夢の邪魔をしてしまい、すまなかった。俺との結婚がなければ、好きな事をやれていたのだな」
それはお互い様じゃないですか。リック様も、私と結婚しなければ、今頃愛する人を見つけていたかもしれません。
「そうですね。最悪の結婚式でしたしね」
最悪の初対面だったのに、一緒にいる事がこんなに居心地良くなるなんて思ってもみませんでした。
「あれは……反省している」
まだそんなに時が経っていないのに、色んなリック様見て来た気がします。
「めちゃくちゃ反省してください! 」
本当はもう怒ってはいません。私って、素直じゃないですね……
「反省する。だから、明日は俺に付き合ってくれないか?」
付き合うって、どういう事でしょうか? 首を傾げる私に、リック様は微笑みました。
……リック様って、こんな風に笑うのですね。少しだけときめいてしまったのは内緒です。
「君を、連れて行きたい場所があるんだ」
連れて行きたい場所だなんて……何だか、恋人同士みたいです。
「楽しみです!」
思わず身を乗り出してしまいました。恥ずかしいです……
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