不死人になった私~壊れゆく不老不死の花嫁~

琴葉悠

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偽りの忘却

倍返しが基本!! ~追いつめられていない君は強かった~

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 ルリは枯れた花畑に倒れていた。
 酷い痛みが心をきしませる。
『だから思い出さないほうがいいと言ったのに……』
 柵の向こうの女性は嘆くようにルリに言う。
「ああ、確かにこれはキッツいわ、てか性行為の記憶がえぐすぎて吐いたわ、意識ぶっとんだわ」
 ルリは立ち上がり、胸を押さえながら言う。
『……かなり辛い記憶なのに、どうしてそうしてられるの?』
「……ねぇ、『私』忘れてない? 私は――」

「嫌な事されたら口より先に手が出る暴力女だってことを!? 私にも恐怖はある……でも……」

「泣き寝入りだけは絶対しないって決めてたじゃないか……!!」
 ルリは痛みに耐えながらニヤリと笑って女性を見る。
『――そうだ、そうだった……なんで、我慢してたんだろう……家族のため? 自分のため? 分からない……』
「じゃあ、分からなくていい、私が――」

「二人をぶん殴ってやる!!」
 笑みを浮かべて言うルリを見て、女性は少しだけ、笑った。


 ルリは目を覚ました。
 ネグリジェが着ていたものと違うものになっていた。
 だが、気にせず、とりあえず朝の日課のフェロモン抑制剤を飲む。
 飲み終わるとタンスから下着、靴下、服類を取り出し、着替える。
 ネグリジェはたたんでベッドの上に置き、ふうと息を吐き出す。
「おはようルリちゃん」
 ルリはターゲットではないが、此奴も一発殴っておくべき相手と認識した存在がやってきたのを認識し、振り向き笑顔になる。
「おはようグリース!」
「……ルリちゃん、どうしたの、何かいいこと――」
 ルリはグリースの傍に歩み寄り、服の襟をつかんで引っ張り真顔になる。
「一発殴らせろ」
「……へ?! ちょ、俺何かした?!」
「うん、ばっちり思い出した、アンタら三人と他の奴らが私にやった性行為の内容、えぐくて昨日ゲロ吐いて失神したわ」
 ルリはグリースに冷たい視線を向ける。

 グリースはルリの発言に凍り付いた。
 そう、思い出してほしくない記憶の筆頭にあたる内容をルリは昨日思い出してしまったと知らされたのだ。

――ヴァイスの野郎何しやがった?!――

 ルリに無理強いなどしないと安心しきって覗き見をしなかった自分の行動を後悔した。
「えっと……」
「うん、グリース、アンタのは他の二人みたく無理強いなんて全然なかった――けど」
 ルリは笑顔で喋ったが、最後の言葉から表情が冷たいものになる。
「その結果アルジェントに酷い目にあわされたからアンタも一部同罪だ、幼児退行した時の私には一切手を出さなかったから、一発で許す、殴らせろ」
 ルリの言葉に、グリースは観念した。
 全部事実なのだ、むしろ一発で済む自分はまだマシだと受け入れた。

――……ヴァイスとアルジェントはどうなるんだろう、絶対一発じゃすまねぇよな……――

 確実にルリの怒りが向かうであろう二名の事を想像する。
「へ、返答次第では?」
「10倍殴る」
「わ、わかった!! あの件は確かに俺が悪かった!! どうぞ殴ってくれ」
「うん、よろしい。じゃあ――」

「歯あ食いしばれ」

 鈍く重い音が部屋に響いた。
 ルリの一撃を頬に食らったグリースはその場に倒れた。
「よし、少しすっきりした」
「いでぇ!! いやマジで痛い!! なんなの?! ルリちゃんそういうキャラだったの?!」
 グリースは涙目になり、くっきりと拳の痕跡が残った頬をさすりながらルリに言う。
「うん、嫌がらせしてきた連中は老若男女問わずきっちり仕返してたからね、元の私はそれができない位精神弱まってたから、その分も込めてやり返すことにした」
「……た、逞しすぎじゃない?」
「そういう生き方してたからね、本来の私は――まぁ、色々あってできなかっただろうから、今の内私がやっておく――」
 ルリはそう言ってから、じろりと扉の方を見る。
「――アルジェント、姿隠してないで出てこい。アンタも私に相当なことしたの思い出したからね、幼児退行した時も一回だけだけど酷くしてくれたよね……でてこないなら、出てきたときに100倍にして返すよ、今から十秒以内――」
 ルリが最後まで言う前に、アルジェントが姿を見せた。
「……」
 顔に汗が伝っている。
 ルリはバキバキと拳を鳴らしている。
「いやぁ、アルジェント本当私に無理やり色んな事してくれたよねぇ」
 ルリは笑顔でいう、目は全く笑っていない。
「……罰は受けます」
 アルジェントは静かにそう言った。
「よし、覚悟はできたかじゃあお前も――」

「歯食いしばれ、後ゲロ吐く覚悟もしとけ」

 部屋に鈍く重い音が何度も響き渡った。
 アルジェントの苦鳴とともに。

 グリースは遠い目をしてルリがアルジェントにしている暴力現場を眺めていた。

――あーそう言えばそういうの経歴に書いてあったなぁ、友達脅したやくざ乗り込んで一人で組潰して警察に怒られたとか書いてた書いてた……――
――……相当我慢してたんだなぁ……抵抗しちゃだめって思わせてたんだなぁ……――

「――こんなんで勘弁しとくか」
 ルリはふうと息をついてベッドに向かい、腰をかけた。
 グリースはぼっこぼこにされたアルジェントに近寄りつつく。
「おーい、生きてるかー……?」
「ごほ……る、ルリ様にこのような暴力的な一面がおありだったとは……」
「あ、割と元気そう」
「ふ、ふふ……ルリ様からの罰と思えば褒美のようなもの……」
「あ、ダメだ此奴真正だわ、色々とダメな奴だわ」
 アルジェントは顔を青あざと鼻血、唇から血を流し、腹も殴られた――否踏まれたのか足の痕がついている状態で立ち上がった。
「マジで嫌だったんだからな!! アレもう一度やるっつーんなら玉潰す気で抵抗するからな次はいいか!!」
 ルリはアルジェントを見て怒鳴り声を上げた。
「無理なりな性行為ダメ絶対!! 性行為は合意無しじゃしてはいけません!!」
 続けてそう怒鳴る。
「あーあと、ヴァイスと、幼児退行した私に噛みついたりした吸血鬼集団と、この間の赤髪の男!! こいつ等もボコらんと気が済まん!!」
「あールリちゃん、ヴァイスはともかく、吸血鬼軍団は俺がこの世からおさらばさせたからそれはできない、あと赤髪の奴ヴァイスからの罰で拷問されたから近寄らん方がいい」
「……よし、じゃあ後はヴァイスだな、幼児退行する止め刺したのは重いぞ、あの野郎」
 ルリはバキバキと拳を鳴らした。
「……やべぇ、ルリちゃん怒らせるとマジで怖い」
 グリースは引きつった顔になった。

「さて、夜まで待つか、それとも乗り込むか、どっちにしよう」
「る、ルリ様、真祖様にはその……!!」
「あ゛?!」
 主にも今までやられた事の仕返しを行おうとするルリをアルジェントはやめさせようと声をかけたが、鋭い目つきで睨まれた。
 今まで見たことのない目つきだ。
「……あー思い出すだけでされた内容の酷さに腹が立ってきた!! 思い出してほしくないわけだよ!! 私だってこんなん思い出すのマジいやだったわ!! げろ吐いて失神するレベルのショックだったからなマジで!!」
 ルリは非常に不機嫌そうな顔をしていた。
「……ヴァイスー見てるんだろ、出て来いよ、多分時間経過すると怒りが悪化していくから早い段階にボコられた方が軽傷ですむぞー……」
 グリースが主に対して何かを言って居るのをアルジェントは耳にした。
「グリース!! 貴様!!」
「いや事実だろう、このまま夜まで時間経つと多分ルリちゃんの怒りのゲージはぐんぐん上がってくぜ?」
 グリースの言葉に、見るのが恐ろしいがルリを見る。
 ぶつぶつとつぶやいている、じわじわと怒りの度合いが増しているように見える。
「……」
 グリースの言葉通りの行動をするのが、被害が少なくて済むのが目に見えた。

 闇が現れる。
 それは人の形になった。
「……」
 重い表情をしたヴァイスが姿を現した。
「……」
「さて、ヴァイス昨日はありがとう、おかげでひっどい記憶を思い出したよ」
 ルリは嫌味たっぷりの表情と声でヴァイスに言葉をかける。

「……ヴァイス、お前昨日何しようとしたんだ?」
 グリースは重い表情をしたヴァイスに尋ねた。
「……かっとなって記憶を破壊しようと……」
「ばっかじゃねぇのお前?!」
 信じられない程馬鹿な行動をとろうとしていた事にグリースは驚きの声を上げる。
「その結果私はひっでぇ記憶思い出したんだけどな、いや頭痛は酷いは思い出した内容酷くてゲロ吐いて失神するわ、本当最悪だわ」
 ルリは非常に嫌味を込めて会話に入ってきた。
「一応処女だから気を使ってくれたのは考慮しよう、が、私が嫌がってるのにやったのはマイナスだ!! ついでに幼児退行する止め刺したのもマイナス!! 幼児退行した私にやったのもマイナス!! あと、本来の私が逆らえない精神状態にあるからって色々やらせたのもマイナス!!」
 ルリは立ち上がると、ヴァイスに近寄りながら、怒りをあらわにしている。
「……で、何か言いたい事は?」
「……すまぬ」
 多分言い訳をするとルリの怒りゲージが天元突破しかねないと感じ取ったのか、ヴァイスはその言葉しか出せなかったが分かった。
「じゃあ、聞くボコるからな、覚悟はできてるか?」
「……無論」
「よし、じゃあ部屋連れてけ、さすがに従者の前でボコられるのは主人の面目としてアレだろうしね」
「わかった……」
 ルリとヴァイスは闇に包まれて姿を消した。
「……相当ボコられると思うぞヴァイスの奴」
「……何故貴様が一発で済んだのだ!!」
「そりゃ日頃の行いだろ」
 グリースはけらけらと笑いながらも少しだけ考えていた。

――さて、次にルリちゃんを苦しめてた要求、これに君はどう答える?――
――自分を、「愛してほしい」という二人の男の願いに――




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