絶世のハンターは魔族に狙われ、情報屋に抱かれる

琴葉悠

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ダンピールのハンターと闇の城

二つの道

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 漆黒の闇でできていたと思われた城の内部は、普通の城よりも美しい色彩を放っていた。
「……これはどういう原理で……」
「口にすると面倒だからしねぇ、とりあえず『闇の力ぱねぇ!』と思っとけハニー」
「……ずいぶん雑な説明だな」
「いや、そういう説明が一番楽なんだ、細かく言うと術式があーだこーだってなるから」
「……なるほど」
 よほど面倒なつくりを構成をしているのがクロウの反応で理解できたのか、ディストはそれ以上問い詰めることはしなかった。
「それはともかく……」
 クロウが銃の引き金を引く。
 銃弾が放たれ魔物が消滅する。
「魔界に近いっていうのがよくわかったぜ、魔獣や魔物がわんさかいる。普通の人間にゃ近寄れない場所だ」
 魔獣や魔物が姿を現す。
「魔族よりは退治がしやすいが……数が多いな」
 ディストは剣で魔獣を切り伏せて、銃で魔物の頭部を撃ち、頭部を吹っ飛ばす。
「突っ切るか」
「ああ」
 二人は魔獣と魔物の群れに突っ込み、目の前の邪魔な魔獣と魔物だけ、剣で切り、銃を撃ち込んで消滅させた。

 しばらく突っ走っていると、魔物は居なくなり二手に分かれる道がでてきた。
「……よし簡単な方――なんだこりゃ?」
 通路の情報を解析したクロウが眉をひそめた。
「どうした」
「……この道両方行かないとだめらしい、片方ずつ開けようとしても無理らしい、二人がそろった時扉があくようになってるみたいだな」
「……」
 ディストは片方の道をじっと見つめていた。
「どうしたディスト?」
「俺はこっちの道を行く、お前はそっちの道を行け」
「……まぁ難易度的にはその方がいいと思うんだが、どうしてだ?」
「誰かが呼んでいる」
 ディストの言葉にクロウは首をかしげる。
「呼んでいるって……誰がだ?」
「分からん、だが誰かが呼んでいる、俺かお前かわからんが俺はこちらを行こう」
「まぁ、とりあえず無茶するなよハニー」
「その呼び名はやめろ」
 クロウは分かれた通路の右側を歩いて行った。
 残ったクロウはため息をついてから頭を掻き、それからもう片方の通路を歩いて行った。


 ディストは歩いていると水路らしき通路に出くわした。
「奇妙な構造だ……」
 ディストはそう呟き、歩き続ける。
 氷の精霊のような魔物が姿を見せて、ディストを手招きするがディストはそれを無視した。
 無視されたことに不機嫌になった魔物は氷の結晶を飛ばしてきた。
 ディストはそれを剣で砕くと、銃を取り出し魔物の顔を粉々に撃ち砕いた。
 撃ち砕かれた魔物は氷の粒となって消えた。
 ディストは再び歩き始めると、血の匂いに気づく。

 人間のものとは少し違う、匂い。
 自分と少しばかり近しい何かを感じる匂い。

 歩き続けると開けた場所にたどり着く。
 中央には磔にされた誰かがいた。
 金髪とも銀とも見える色の髪をし、手足に枷を付けられた男がそこにいた。
 ディストが彼に近づくと扉のような物が出現し、来た道と次に通るであろう道を塞いだ。
 磔にされていた男が解放される。
 剣がその存在の足元に突き刺さると、その男は剣を取り酷く悲しい表情でディストに襲い掛かってきた。
 剣を振りかざされ、ディストはそれを剣ではじく。
 ディストは少し戸惑った、攻撃をしてきている男からは攻撃意思が感じられないのだ。
 それを嫌がっているようにすら感じた。
 その為、ディストは攻撃を防ぐだけの手段しかとらなかった。

 剣と剣がぶつかり合う音が響く。
 相手をどうにかしない限り先には進めないそう感じた。
 だが操られているような相手は切りたくはない。
 ディストは攻撃を受け流しながら、相手をよく観察した。
 首筋の吸血痕に気づく。

――ならば――

 ディストは一気に距離を詰め、相手を押し倒した。
 そして牙を見せ、相手の吸血痕のある場所に牙を食い込ませた。
「あ、あ、あ……」
 男は手から剣を落とし、口から短い喘ぎ声をあげた。
 ディストの喉がわずかに上下する。

 ディストは吸血行為で、吸血された箇所を強引に上書きしたのだ。
 これによって吸血された男は、ディストのある意味眷族となった。

 男の手足の枷が全て砕け散った。
 吸血痕があった場所から口を離し、ディストは口を軽くぬぐう。
「……お前もダンピールか」
 ディストがそう言うと男は起き上がった。
「……貴方もダンピールか……? ああ、でもなんて美しさだ……」
「第一声がそれか」
 ディストは呆れたような雰囲気を纏った。
「……お前は何者だ……」
「……アレフィード……この城の城主の……息子だ……」
「噛まれたということは、お前はこの城の主に反抗したのだな、今回の件に抵抗しようとしたのだな」
「……ああ、だが父上は私の声はもう届かぬ状態だった……」
「俺はそれを止めに来た、場合によっては命を奪うかもしれん。お前は城の外に行くがいい」
「いや、私も行かせてほしい。そもそもここの通路の扉は私にしか開けられない」
「……なるほど、俺がこちらの道を選んで確かに正解だ。クロウなら扉を破壊できるが、俺はできるかわからんからな」
「クロウ……?」
「一緒に来たハンターの名前だ、別の道を行ってるが大丈夫だろう、それより扉を開けてほしい、俺は先に進まねばならない」
「……分かった」
 男は――アレフィードは扉の前に立ち、手を扉に当てると、扉が開いた。
「私が案内しよう……」
「……助かる」
 アレフィードに案内されるまま、ディストは道を進み始めた。


 クロウは無数の魔物や魔獣を剣と銃で滅ぼしながら歩いていると、広い場所にたどりつく。
 中に脚を踏み入れると魔石が道を全て塞いだ。
「あっははは! 人間がこんなところまでノコノコ来るなんて馬鹿じゃないの?」
「あーうるせぇ蠅の音すんな」
 クロウは耳を触りながら、声の主の存在を気にしてもいないようだった。
「ああ、これだから人間は嫌なんだ!! 下品で!! 身の程を知らない」
「うるせーなてめぇみたいな蠅の相手してやる程俺は暇じゃないんだよ」
 声の主は怯えもしない、恐れもしない、それどころか相手にしてすらいないクロウの態度に腹を立てて姿を現した。
「この僕を見てもそんな態度を取れるのかい? どうだい、僕のこの美しい姿! 人間では到底無理だろう?」
 姿を現したのは美しい少年の姿をしたヴァンパイアだった。
 確かに美しいのは分かる、だがクロウが心の底から愛してやまないディストの美しさとは比べたら霞むというレベルではない。
 ディストが美しすぎるので、クロウはそのヴァンパイアの姿を見ても何も思わなかった。
「ナルシストかよ、面倒くせぇ」
「お前何なんだよ!! 美的感覚おかしいんじゃないのか?!」
「わりぃけど、もっと美しい奴を毎日見てるんでな、それに比べたらお前は月と鼈……いや、月とゴミだな。……いやそもそも比べ物にならんわ、出直してこい」
 クロウは手ではらう仕草をすると、ヴァンパイアは血管を浮き上がらせた。
 怒り狂っているようだった。
 ヴァンパイアは無数の剣を出現させ、クロウに向かって飛ばした。
「串刺しにしてやる!!」
「へいへい」
 クロウは串刺しになる寸前で、剣を全て破壊し消滅させた。
「何をしたんだお前!!」
「破壊しただけだよ、お前じゃお話にならないからさっさとどけ」
 ヴァンパイアは更に怒りに任せて剣を投げつけてくるが、全てクロウに届く前に破壊され消滅した。
 クロウは飴玉の包みを開け、飴を口の中に放り込む。
 ガリガリと噛みながら、ヴァンパイアの様子を眺める。
 一向に近づいてくる気配がない。
 ディストは、近接ができないヴァンパイアと判断し、噛んでいる飴が口の中からなくなると、一気に詰め寄った。
 手を異形化させ、心臓をえぐり、握りつぶした。
「あ……が……」
 クロウが手を抜き取ると、ヴァンパイアは床に倒れた。
「僕が、死ぬ……? 嫌だ、まだ死にたくない、僕は僕は――!!」
「しいたげられたのは哀れむけど、その何百倍色んな連中しいたげて食い漁ってきたんだ、そのままくたばれクソガキ」
 クロウはそう言うと、先に進み道を閉ざしている魔石を脚で蹴り壊し破壊して先に進んだ。
 ヴァンパイアはやがて塵になり消えた。

 クロウは道を歩いていると、棘や拷問器具だらけの部屋についた。
 クロウは目を黒くし、部屋の情報を探る。
 部屋に入ると拷問器具が襲ってくる仕掛けになっているようだ。
 クロウは壊すのが面倒くさいと判断し、出口付近まで空間転移で移動し、そのまま部屋を後にした。

 様々な部屋を通り過ぎ、仕掛けを無視しして部屋を進むという行為をクロウは繰り返していた。
「こっちの道面倒だなぁ、ハニーにこっち行かせなくてよかったよ」
 ディストなら少々苦戦しそうな仕掛けが山ほどあるのだ、それを無視して進めるクロウは欠伸をしながら道を歩いていた。
 また広い場所に着くと、魔石が道を全て塞いだ。
「またかよ、面倒くせぇ」
 クロウは疲れてもいないのに、疲れたように肩を落とした。
「あら、ここに来たってことはレオンの坊やは倒されたのかしら」
 女の声がクロウの耳に届いた。
「さっきのナルシストのクソガキヴァンパイアか? 今頃塵になってるころだろうよ」
「あら、貴方残酷なのね」
「好きにいやぁいいさ」
 美しいほぼ裸体と言っていいような恰好の蝙蝠のような翼が生えた女が姿を現す。
「でも、嫌いじゃないわ、私」
「……淫魔か、そこまで上級じゃなさそうだなその様子じゃあ」
 女の――淫魔の実力を一瞬で把握したクロウはつまらなそうな欠伸をする。
「どいてくれないんだろう?」
「私達と遊んでくれたら――」

「「「「考えてあげる」」」」

 無数の淫魔が姿を現す。
 どれも美しい女達だ。
 しかし、クロウは嫌そうな顔をした。
 淫魔の相手をしろというのは性行為をしろということだ。

 クロウは正直、ディスト以外の相手を抱く気は全くなく、多分ディスト以外だと勃起もしないだろう。
 なのでクロウは威圧で近づいてきた淫魔達を吹き飛ばし、異形の姿を見せる。

「……破壊者クロウの相手をしたいってのか?」

 クロウは淫魔を脅した。
 淫魔の顔色が一瞬で青ざめる。
「そんな……破壊者……?! ……貴方様が何故ここに……!?」
 他の淫魔達の姿は消えて、最初の淫魔だけがその場に残った。
「アンタが取れるのは二択、素直に俺の前から消えるか、俺に存在破壊されるかのだ、さあ選べ」
「わ、分かりました、どうぞお進みください」
 淫魔はそう言うと、姿を消した。
 魔石が消え、クロウは元の姿に戻ると肩がこったのか少し肩を回してから、先に進んだ。
「全く面倒だな今回は……城を破壊すりゃあいいって話じゃねぇから面倒なんだよ……作りも魔力で作られてるからわけわからねぇ構造だしなぁ……ハニー大丈夫かね」
 ぶつぶつと文句を言いながら歩きつつ、近づいてくる魔物や魔獣を弾丸で吹っ飛ばして先を急いだ。


 この事態を引き起こした真祖の息子と行動を共にすることになったディストと、一人道を行くクロウ、再び合流した時果たして何が起こるのか――……





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