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10歳 その2
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「婚約……ですか?」
殿下の口から飛び出した予想外の言葉に、私は思わずぽかんと口を開けてしまった。
え? 婚約? 殿下と? 何で? このタイミングで?
頭の中にクエスチョンマークが飛び交い、この展開についていけない。
「ああ。その、すごく言い辛いんだけれども……侍医の話によると額に出来た傷痕は消えないらしい。年頃の君をこんな目に合わせてしまって、本当にすまない」
殿下の申し訳なさそうな瞳が私を見据える。
顔に傷痕が残る。それが貴族の令嬢として大変な瑕疵になる事は理解しているはずなのに、私の中では「やっぱりそうなんだ」と、それを当たり前のように受け入れる感情しか湧いてこない。
それよりも、婚約の打診の意味がわかった事の方が重要だった。殿下は私の額に傷痕が残ってしまう事に対して責任を取ろうとして下さっているのだ。
でも、今回のこの傷に関していえば殿下には何も責任はない。私が勝手に馬に近付いて勝手に蹴られただけの話で。殿下はその場にいただけの目撃者にすぎない。
「あの、殿下……傷に関して責任を感じていらっしゃるなら……」
「いや、それは違う。その傷に対して責任を取りたいという気持ちがないと言えば嘘になってしまうけれど……元々、君は私の婚約者候補だったんだよ。母上とシュタットフェルト伯爵夫人が私達を結婚させたがっていてね。君がお茶会に誘われていたのも、そこに私が顔を出していたのにも、そういう理由があったんだ」
続く言葉を察したのだろう。私が断りの文言を口にする前に、殿下がすらすらと言葉を紡いでいく。
というか王妃様とお母様は私達を結婚させたがってたのか。10歳の私としてはただお母様にくっついて遊びに行くくらいの気持ちしか無かったが、25歳の私として考えると確かにそういう事なんだろうなというのがよくわかる。
普通に考えたら大人同士のお茶会にそんなに頻繁に子供を連れて行ったりはしないし、多忙な王子様がそこに何度も顔を出すのもおかしな話だ。
「それに、私自身も君のことをとても好ましく思っているよ。だから、これを切っ掛けに婚約の予定が早まった位に考えてほしいな」
もう一度私の手を取りながら、殿下の青い瞳が真っ直ぐに私を捉える。
「殿下……」
私もその瞳を見つめ返し……そこで、はっと気付いた。
殿下は……リチャード様だ。
まだゲームの開始前の時間軸だからか、見知った姿よりは幾分幼いけれど、前世の私としての記憶の中では乙女ゲーム「貴方と私で幸せに」のメイン攻略キャラクターとして認識されているその人。
目覚めた瞬間に気付いていたはずなのに、自分のやらかし加減と馬の処遇に気を取られて、すっかり頭の奥に追いやっていたその事実に改めて直面して目を見開く。
今、私の目の前には前世の私の最推しのリチャード様がいる。
大好きで、焦がれて、でも絶対に届くはずのなかった人。
どうして? 何故? と、ぐるぐる頭の中を疑問が駆け巡る。
その疑問をいったん押さえつけて、冷静に成り切れていない頭の中で現状を整理しようと思考する。
目の前にいるのは、ここヴァレンシュタイン王国の第二王子、リチャード・ヴァレンシュタイン殿下。
そして私はシュタットフェルト伯爵家の長女エイミー・シュタットフェルト。
現状は額の傷が切っ掛けとなって婚約の打診を受けたところ。
そこまで考えを巡らせた結果、通常であればありえないと一蹴するような結論に達してしまった。
おそらく私は「貴方と私で幸せに」の世界に転生した。リチャード様ルートでのライバルキャラのエイミー・シュタットフェルトとして。
ありえないと思う気持ちはあれど、現状はそれ以外の可能性が考えられない。となれば、この先の身の振り方を考えなくてはいけない。
目下の懸案事項といえば一つしかない。殿下から頂いた婚約の提案に対するお返事。
「あの、申し訳ないのですが……少し考える時間をいただけませんか?」
そして、考えた末に出てきた結論は「保留」だった。
推しの婚約者。木崎絵美として普通に生きていれば、そんな立場は絶対に手に入るはずがなかった。本音を言えば喉から手が出るほど欲しいし、今すぐイエスと言いたい。
それでも私は、その言葉を安易に口にする事ができなかった。
エイミーはライバルキャラクターであれど、悪役令嬢ではない。
ざまぁな婚約破棄イベントは起こらないし、円満に婚約解消した後にリチャード様はヒロインと結ばれる。
私がリチャード様を好きになった一番の理由はその誠実さだった。
いくら私に傷痕が残ろうと、王妃様とお母様が望んでいようと、ただの伯爵家であるシュタットフェルト家との婚姻は王家にとって価値のあるものではない。
政治的な意図が絡んでいないこの婚約は、リチャード様が求めて国王陛下の許可が下りれば一方的に反故にする事もそう難しくないはずだ。
それでも、リチャード様は一方的に突き放す婚約破棄ではなく、話し合いの末の円満な婚約解消の道を選ぶのだ。
その誠実さゆえにリチャード様が苦悩する事を私は知っている。
妹のように可愛がっている婚約者に消えぬ傷痕を残してしまった負い目と、ヒロインに対して芽生えてしまった愛情。
二つの感情に板挟みになって、わざとヒロインを遠ざけ、すれ違い、傷付いて、苦しんで。
そんなシナリオを知っている私は、この婚約の申し入れを受けるべきではない。
私はリチャード様が好きだ。大好きだ。前世でも現世でも。
だからこそ、誠実なこの人には苦しんでほしくない。幸せになってほしい。いずれこの婚約がリチャード様の恋心の邪魔になってしまう事はわかっている。前世の知識として嫌というほどに知っている。
けれど、リチャード様を大好きだというその気持ちが、私の心を大きく揺るがすのもまた事実だ。
婚約してほしいと、好ましく思っていると、たとえ妹のようにしか思われていないとしても、そんな言葉を貰えた事が嬉しくてたまらない。
もしかしたら、ヒロインはリチャード様のルートを選ばないかもしれない。今は妹のようにしか思われていなくても、いつかは私に愛情を向けてくれるかもしれない。
そんな浅ましくてみっともない気持ちだって私の中には渦巻いていて、どうしたって消し去る事ができやしない。
結局、受け入れる事も拒む事もどちらも怖くて。ずるい私は返事を引き延ばす事しか選べなかったのだ。
殿下の口から飛び出した予想外の言葉に、私は思わずぽかんと口を開けてしまった。
え? 婚約? 殿下と? 何で? このタイミングで?
頭の中にクエスチョンマークが飛び交い、この展開についていけない。
「ああ。その、すごく言い辛いんだけれども……侍医の話によると額に出来た傷痕は消えないらしい。年頃の君をこんな目に合わせてしまって、本当にすまない」
殿下の申し訳なさそうな瞳が私を見据える。
顔に傷痕が残る。それが貴族の令嬢として大変な瑕疵になる事は理解しているはずなのに、私の中では「やっぱりそうなんだ」と、それを当たり前のように受け入れる感情しか湧いてこない。
それよりも、婚約の打診の意味がわかった事の方が重要だった。殿下は私の額に傷痕が残ってしまう事に対して責任を取ろうとして下さっているのだ。
でも、今回のこの傷に関していえば殿下には何も責任はない。私が勝手に馬に近付いて勝手に蹴られただけの話で。殿下はその場にいただけの目撃者にすぎない。
「あの、殿下……傷に関して責任を感じていらっしゃるなら……」
「いや、それは違う。その傷に対して責任を取りたいという気持ちがないと言えば嘘になってしまうけれど……元々、君は私の婚約者候補だったんだよ。母上とシュタットフェルト伯爵夫人が私達を結婚させたがっていてね。君がお茶会に誘われていたのも、そこに私が顔を出していたのにも、そういう理由があったんだ」
続く言葉を察したのだろう。私が断りの文言を口にする前に、殿下がすらすらと言葉を紡いでいく。
というか王妃様とお母様は私達を結婚させたがってたのか。10歳の私としてはただお母様にくっついて遊びに行くくらいの気持ちしか無かったが、25歳の私として考えると確かにそういう事なんだろうなというのがよくわかる。
普通に考えたら大人同士のお茶会にそんなに頻繁に子供を連れて行ったりはしないし、多忙な王子様がそこに何度も顔を出すのもおかしな話だ。
「それに、私自身も君のことをとても好ましく思っているよ。だから、これを切っ掛けに婚約の予定が早まった位に考えてほしいな」
もう一度私の手を取りながら、殿下の青い瞳が真っ直ぐに私を捉える。
「殿下……」
私もその瞳を見つめ返し……そこで、はっと気付いた。
殿下は……リチャード様だ。
まだゲームの開始前の時間軸だからか、見知った姿よりは幾分幼いけれど、前世の私としての記憶の中では乙女ゲーム「貴方と私で幸せに」のメイン攻略キャラクターとして認識されているその人。
目覚めた瞬間に気付いていたはずなのに、自分のやらかし加減と馬の処遇に気を取られて、すっかり頭の奥に追いやっていたその事実に改めて直面して目を見開く。
今、私の目の前には前世の私の最推しのリチャード様がいる。
大好きで、焦がれて、でも絶対に届くはずのなかった人。
どうして? 何故? と、ぐるぐる頭の中を疑問が駆け巡る。
その疑問をいったん押さえつけて、冷静に成り切れていない頭の中で現状を整理しようと思考する。
目の前にいるのは、ここヴァレンシュタイン王国の第二王子、リチャード・ヴァレンシュタイン殿下。
そして私はシュタットフェルト伯爵家の長女エイミー・シュタットフェルト。
現状は額の傷が切っ掛けとなって婚約の打診を受けたところ。
そこまで考えを巡らせた結果、通常であればありえないと一蹴するような結論に達してしまった。
おそらく私は「貴方と私で幸せに」の世界に転生した。リチャード様ルートでのライバルキャラのエイミー・シュタットフェルトとして。
ありえないと思う気持ちはあれど、現状はそれ以外の可能性が考えられない。となれば、この先の身の振り方を考えなくてはいけない。
目下の懸案事項といえば一つしかない。殿下から頂いた婚約の提案に対するお返事。
「あの、申し訳ないのですが……少し考える時間をいただけませんか?」
そして、考えた末に出てきた結論は「保留」だった。
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それでも私は、その言葉を安易に口にする事ができなかった。
エイミーはライバルキャラクターであれど、悪役令嬢ではない。
ざまぁな婚約破棄イベントは起こらないし、円満に婚約解消した後にリチャード様はヒロインと結ばれる。
私がリチャード様を好きになった一番の理由はその誠実さだった。
いくら私に傷痕が残ろうと、王妃様とお母様が望んでいようと、ただの伯爵家であるシュタットフェルト家との婚姻は王家にとって価値のあるものではない。
政治的な意図が絡んでいないこの婚約は、リチャード様が求めて国王陛下の許可が下りれば一方的に反故にする事もそう難しくないはずだ。
それでも、リチャード様は一方的に突き放す婚約破棄ではなく、話し合いの末の円満な婚約解消の道を選ぶのだ。
その誠実さゆえにリチャード様が苦悩する事を私は知っている。
妹のように可愛がっている婚約者に消えぬ傷痕を残してしまった負い目と、ヒロインに対して芽生えてしまった愛情。
二つの感情に板挟みになって、わざとヒロインを遠ざけ、すれ違い、傷付いて、苦しんで。
そんなシナリオを知っている私は、この婚約の申し入れを受けるべきではない。
私はリチャード様が好きだ。大好きだ。前世でも現世でも。
だからこそ、誠実なこの人には苦しんでほしくない。幸せになってほしい。いずれこの婚約がリチャード様の恋心の邪魔になってしまう事はわかっている。前世の知識として嫌というほどに知っている。
けれど、リチャード様を大好きだというその気持ちが、私の心を大きく揺るがすのもまた事実だ。
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