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10歳 その6
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すっかりリチャード様の貞操を守る事ばかりに夢中になっていた私は、案内された部屋に踏み入れた瞬間立ち尽くす事となった。
「エミィ? 何か気に入らないところがあった?」
そんな私の反応を怪訝に思ったのか、リチャード様からこちらを伺うような声がかかる。
「不満があれば何でも言って。すぐに手配するから」
その声色はとても優しい。私の意思をどこまでも尊重してくれようとする心遣いが嬉しくてたまらない。
この部屋に対する不満は何一つない。ただ、私が失念していただけだ。
本来、王子妃が生活するためのこの部屋が、先ほどの客室とは比べ物にならないほどずっと豪奢な品物に囲まれ、贅沢にスペースを取られた空間だという事に。
「不満などありませんわ。リチャード様。素敵なお部屋にご案内いただきありがとうございます」
笑顔でリチャード様へ向き直る。多少引き攣っていたかもしれないけれどそれはご愛敬。
「そう? でも、気になる事があれば言うんだよ? ここはエミィの部屋なんだから」
「はい。何かあったらご相談します」
きっと相談する事は訪れないだろうけど。その気持ちだけは、私のものとして貰っておく事を許してほしい。
ゲームの中では知る事のできなかった12歳のリチャード様も、どこまでも優しくて誠実なお方だったと覚えておきたいから。
「今日は色々あって疲れたよね。食欲はある? もう休んだほうが楽かな?」
「可能であれば、今日はもう休ませていただければと思います」
食欲が無い訳ではない。けれど、それ以上に心身共にに疲れを訴えていた。
とにかく色々な事があり過ぎた。いつものように王城のお茶会に来ただけのつもりが、馬に蹴られて意識を失って、前世の記憶を取り戻して、リチャード様との婚約が決まって。
あまりに濃い一日だった。状況を整理するためにも体を休ませるのは急務のように思える。
「それじゃあ、侍女を呼んで支度させようか」
「お願いいたします」
「さっきも言ったけれど私の部屋と繋がる扉は開け放しておくよ。何かあったら直ぐに声をかけるか、枕元のベルを鳴らしてね」
こくり、と小さく頷く。
心配性のリチャード様と一緒に寝るのは避けたい私との妥協点。
とにかく一人にしておくのが不安だから誰かを傍につけておきたいというリチャード様の主張と、誰かがいると気になってゆっくり休めないという私の主張の攻防の末、問題があった場合にすぐに気付く事ができる備えをするというところで落ち着いた。
突然ふわりと温かいものが私を包み込んだ。
遅れる事数秒、リチャード様が私の体を優しく抱きしめてくれている事に気が付いて、一気に体が硬直する。
そんな私のパニックなどお構いなしに、頬にそっと柔らかいものが触れた。
「おやすみ、エミィ。いい夢を」
その一連の流れをごく自然にやってのけたリチャード様は、最後に私の体をきゅっと抱きしめてから隣り合った部屋に去っていく。
突然の事に硬直した体は、寝支度をするためにやってきた侍女が来るまで立ち尽くしていた。
当然のことながら、ベッドにもぐりこんだ後も推しの甘すぎる行動を反芻してしまい、なかなか眠れない夜を過ごす事になるのであった。
「エミィ? 何か気に入らないところがあった?」
そんな私の反応を怪訝に思ったのか、リチャード様からこちらを伺うような声がかかる。
「不満があれば何でも言って。すぐに手配するから」
その声色はとても優しい。私の意思をどこまでも尊重してくれようとする心遣いが嬉しくてたまらない。
この部屋に対する不満は何一つない。ただ、私が失念していただけだ。
本来、王子妃が生活するためのこの部屋が、先ほどの客室とは比べ物にならないほどずっと豪奢な品物に囲まれ、贅沢にスペースを取られた空間だという事に。
「不満などありませんわ。リチャード様。素敵なお部屋にご案内いただきありがとうございます」
笑顔でリチャード様へ向き直る。多少引き攣っていたかもしれないけれどそれはご愛敬。
「そう? でも、気になる事があれば言うんだよ? ここはエミィの部屋なんだから」
「はい。何かあったらご相談します」
きっと相談する事は訪れないだろうけど。その気持ちだけは、私のものとして貰っておく事を許してほしい。
ゲームの中では知る事のできなかった12歳のリチャード様も、どこまでも優しくて誠実なお方だったと覚えておきたいから。
「今日は色々あって疲れたよね。食欲はある? もう休んだほうが楽かな?」
「可能であれば、今日はもう休ませていただければと思います」
食欲が無い訳ではない。けれど、それ以上に心身共にに疲れを訴えていた。
とにかく色々な事があり過ぎた。いつものように王城のお茶会に来ただけのつもりが、馬に蹴られて意識を失って、前世の記憶を取り戻して、リチャード様との婚約が決まって。
あまりに濃い一日だった。状況を整理するためにも体を休ませるのは急務のように思える。
「それじゃあ、侍女を呼んで支度させようか」
「お願いいたします」
「さっきも言ったけれど私の部屋と繋がる扉は開け放しておくよ。何かあったら直ぐに声をかけるか、枕元のベルを鳴らしてね」
こくり、と小さく頷く。
心配性のリチャード様と一緒に寝るのは避けたい私との妥協点。
とにかく一人にしておくのが不安だから誰かを傍につけておきたいというリチャード様の主張と、誰かがいると気になってゆっくり休めないという私の主張の攻防の末、問題があった場合にすぐに気付く事ができる備えをするというところで落ち着いた。
突然ふわりと温かいものが私を包み込んだ。
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「おやすみ、エミィ。いい夢を」
その一連の流れをごく自然にやってのけたリチャード様は、最後に私の体をきゅっと抱きしめてから隣り合った部屋に去っていく。
突然の事に硬直した体は、寝支度をするためにやってきた侍女が来るまで立ち尽くしていた。
当然のことながら、ベッドにもぐりこんだ後も推しの甘すぎる行動を反芻してしまい、なかなか眠れない夜を過ごす事になるのであった。
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