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クロエを乗せた馬車が目的地に到着すると、護衛についていた近衛騎士がドアを開けてくれた。
差し出された手を取り馬車を降りれば、地に足を着け屋敷を見上げグッと腹に力を入れる。
今世の猶予は一年・・・・
早めに行動を起こさなくては・・・
決意も新たに玄関へと足を運べば、脳裏をよぎる見慣れた内装を思い浮かべていたクロエ。
だが、一歩屋敷の中に足を踏み入れると王女らしからぬ、あんぐりと口を開け呆然としたように室内を見渡した。
「何これ・・・・え?」
呟くようなその言葉を拾ったのは、白髪が少し混じった髪を綺麗に後ろへと流した初老の男だった。
「ようこそいらっしゃいました、クロエ様。私、この屋敷の家令を務めさせていただいております、ロイドと申します。我々、使用人一同、心よりクロエ様にお使えさせて頂きます。どうぞよろしくお願い致します」
そう頭を下げれば、後ろに控えていた使用人も一斉に頭を下げた。
前の生ではこの屋敷を管理していたのは、たった二人だった。ケイト一家もいたから、それで十分だったのだが・・・
なのにこれはどういうことか。
決して大きいとは言えないこの屋敷にこれだけの人数が必要なのだろうか?
ざっと見ても、三十人位はいる。
挨拶を返すことも忘れつい、素が出てしまう。
「いや・・・何故、こんなに使用人の方がいるのですか?多くありませんか?」
前とは違い、今のクロエは自分の事は自分でできる。
正直、クロエとケイト一家だけで事足りる位なのに。
そんなクロエの疑問にロイドはこともなげに答えた。
「クロエ様は皇帝陛下の大切な婚約者様でございます。御身に何かあっては大変でございますので。これでも選び抜かれた先鋭で、最低限の人数なのです」
そう言いながらにっこりほほ笑む家令は、腹になにやら黒い物を飼っているのは一目瞭然。
クロエの警戒心はMAXになる。
前は、イズとキトナという四十代の夫婦がこの屋敷を管理していた。
実際は夫婦なのではなくクロエを陥れた他国の間者なのだが。
だからかなり警戒していたのだ。何とか裏をかかねばならないと。
だが実際はどうだ。家令を含め三十人以上の使用人。そして、外観はあの時と同じなのに、内装がまるっきり変わっており全く別物になっていた。
「・・・・改装、なさったのですか?」
不審に思われても、聞かずにはいられなかった。
「よくお分かりになりましたね。昨年から大々的に改装しまして、つい一月前に完成したのです」
嬉しそうに返してくる家令。
先が分からないって、こう言う事なのね・・・
クロエは自分が思っていた以上に緊張しているようで、思わず崩れ落ちそうになるのをグッと堪えた。
「挨拶が遅れ申し訳ありません。クロエ・フルールと申します。よろしくお願い致します」
スカートをつまみ優雅に挨拶をすると、使用人の間から「ほぉ・・」という感嘆の溜息が漏れた。
「どうぞお気になさらずに。ではお部屋へご案内させて頂きます」
ロイドの声に一人の女性が前に出た。
「これよりクロエ様のお世話をさせていただきます、エレナと申します。よろしくお願い致します」
「・・・・お世話に、なります・・・あの、皆さまはこちらに勤められて長いのですか?」
イズとキトナは私が帝国に嫁ぐ何年か前から勤めていたはず。
ならばロイドたちは?
「五年になります」
「・・・最近、なのですね」
「はい。この屋敷を管理していた前任者ですが、他国・・・リージェ国の間者だったことが発覚しまして、最終的に元々王宮勤めでした我々が管理する事になったのです」
リージェ国・・・・・
自分が死ぬきっかけとなった国の名前に、苦いものが込み上げてくると同時に、元凶である彼等が断罪されている事に驚きを隠せない。
二十才で死ぬ運命だった自分が、その年齢で嫁いできているのだから色々変わっているだろうとは思っていたが・・・まさか、捕まっていたとは。
普段は何があっても表情には出さないよう努めているが、目に見える大きな変化にこの時ばかりは素に戻ってしまった。
「いかがされましたか?」
ロイドの気づかわしげな問いかけに、一瞬で表情を戻し「いえ、大丈夫です。部屋へ案内していただけますか?」とにっこりとほほ笑めば、エレナをはじめとする使用人達は頬をほんのりと染めうっりした様に溜息を吐くのを、クロエは警戒するように見渡した。
あの時と同じ二人だと思ったから逃げる事が可能だと思っていたのに。
この人数じゃ、常に見張られてるって事じゃない。計算違いもいいとこだわ。何か考えないと・・・
すっかり変わってしまった屋敷内を見回しながら、エレナの後をゆっくりとついていったのだった。
差し出された手を取り馬車を降りれば、地に足を着け屋敷を見上げグッと腹に力を入れる。
今世の猶予は一年・・・・
早めに行動を起こさなくては・・・
決意も新たに玄関へと足を運べば、脳裏をよぎる見慣れた内装を思い浮かべていたクロエ。
だが、一歩屋敷の中に足を踏み入れると王女らしからぬ、あんぐりと口を開け呆然としたように室内を見渡した。
「何これ・・・・え?」
呟くようなその言葉を拾ったのは、白髪が少し混じった髪を綺麗に後ろへと流した初老の男だった。
「ようこそいらっしゃいました、クロエ様。私、この屋敷の家令を務めさせていただいております、ロイドと申します。我々、使用人一同、心よりクロエ様にお使えさせて頂きます。どうぞよろしくお願い致します」
そう頭を下げれば、後ろに控えていた使用人も一斉に頭を下げた。
前の生ではこの屋敷を管理していたのは、たった二人だった。ケイト一家もいたから、それで十分だったのだが・・・
なのにこれはどういうことか。
決して大きいとは言えないこの屋敷にこれだけの人数が必要なのだろうか?
ざっと見ても、三十人位はいる。
挨拶を返すことも忘れつい、素が出てしまう。
「いや・・・何故、こんなに使用人の方がいるのですか?多くありませんか?」
前とは違い、今のクロエは自分の事は自分でできる。
正直、クロエとケイト一家だけで事足りる位なのに。
そんなクロエの疑問にロイドはこともなげに答えた。
「クロエ様は皇帝陛下の大切な婚約者様でございます。御身に何かあっては大変でございますので。これでも選び抜かれた先鋭で、最低限の人数なのです」
そう言いながらにっこりほほ笑む家令は、腹になにやら黒い物を飼っているのは一目瞭然。
クロエの警戒心はMAXになる。
前は、イズとキトナという四十代の夫婦がこの屋敷を管理していた。
実際は夫婦なのではなくクロエを陥れた他国の間者なのだが。
だからかなり警戒していたのだ。何とか裏をかかねばならないと。
だが実際はどうだ。家令を含め三十人以上の使用人。そして、外観はあの時と同じなのに、内装がまるっきり変わっており全く別物になっていた。
「・・・・改装、なさったのですか?」
不審に思われても、聞かずにはいられなかった。
「よくお分かりになりましたね。昨年から大々的に改装しまして、つい一月前に完成したのです」
嬉しそうに返してくる家令。
先が分からないって、こう言う事なのね・・・
クロエは自分が思っていた以上に緊張しているようで、思わず崩れ落ちそうになるのをグッと堪えた。
「挨拶が遅れ申し訳ありません。クロエ・フルールと申します。よろしくお願い致します」
スカートをつまみ優雅に挨拶をすると、使用人の間から「ほぉ・・」という感嘆の溜息が漏れた。
「どうぞお気になさらずに。ではお部屋へご案内させて頂きます」
ロイドの声に一人の女性が前に出た。
「これよりクロエ様のお世話をさせていただきます、エレナと申します。よろしくお願い致します」
「・・・・お世話に、なります・・・あの、皆さまはこちらに勤められて長いのですか?」
イズとキトナは私が帝国に嫁ぐ何年か前から勤めていたはず。
ならばロイドたちは?
「五年になります」
「・・・最近、なのですね」
「はい。この屋敷を管理していた前任者ですが、他国・・・リージェ国の間者だったことが発覚しまして、最終的に元々王宮勤めでした我々が管理する事になったのです」
リージェ国・・・・・
自分が死ぬきっかけとなった国の名前に、苦いものが込み上げてくると同時に、元凶である彼等が断罪されている事に驚きを隠せない。
二十才で死ぬ運命だった自分が、その年齢で嫁いできているのだから色々変わっているだろうとは思っていたが・・・まさか、捕まっていたとは。
普段は何があっても表情には出さないよう努めているが、目に見える大きな変化にこの時ばかりは素に戻ってしまった。
「いかがされましたか?」
ロイドの気づかわしげな問いかけに、一瞬で表情を戻し「いえ、大丈夫です。部屋へ案内していただけますか?」とにっこりとほほ笑めば、エレナをはじめとする使用人達は頬をほんのりと染めうっりした様に溜息を吐くのを、クロエは警戒するように見渡した。
あの時と同じ二人だと思ったから逃げる事が可能だと思っていたのに。
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