逆行したので運命を変えようとしたら、全ておばあさまの掌の上でした

ひとみん

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クロエは祖母であるルナティアからの手紙を受け、城の奥深い会議室に前回と同じ面々に集まってもらった。
そして一同、うーん・・・と、唸り声を上げる。

「連合国、ですか」
宰相アランドが呟く。
その呟きに、机いっぱいに広げているリージェ国の地図を眺めた。
地図の上には国を十五等分するように線が引かれ、番号が振られている。そして、その地域の特徴、条件が簡単に書かれていた。
例えば、

一、王都。
王が住む城有り。貧富の差が激しく貴族街の反対側にスラム街がある。
特産物なし。
街の公共事業が進んでいないせいか、城の周りのみ道路は石畳で舗装。
スラムの地域が大きく、衛生管理がよくない。
条件・・・スラムを解体、衛生管理が出来る国に限る。

二、農村
王都に一番近い農村。領主は他の領主に比べれば比較的まとも。
ただし、宝石コレクター。隠し財産有り。
特産物、主に小麦。リージェ国一の生産量を誇る。
近くを川が流れているが、汚染されている。
その水を引いての小麦は質が良くない。
条件・・・衛生管理が出来、土地改良の出来る国に限る。



十、地方農村 
ミロの花栽培地域。
土地は広いが、二十世帯しか住んでいない。
全ての住民は広大なミロの花を管理。
特産物なし。
此処だけは肥沃な土地で、近くを流れる川は清水。
条件・・・ミロの花を殲滅。農業知識の豊富な国に限る。

十一、地方農村
ミロの花加工工場あり。
労働者の為の宿舎あり。地元住民は加工工場で働く人間の管理、商売をしている。
特産物なし。
土地も枯れていている。西側に鉱山あり。良質な宝石が採れるが国は気付いていない為、未開発。
条件・・・土地改良と隣国クルア国も領地として管理できる国に限る。



十五、地方農村
加工現場で亡くなった人間を処理する遺体捨て場。
北側に大きな山があり、その麓に穴を掘り埋めている。
山は鉱山で質の良い金銀がとれる。こちらも未開発。
土地も肥沃とは言えないが比較的ましな方。
条件・・・遺体を回収し供養、隣国アルル国を領地とし管理できる国に限る。


などなどなど・・・・
地図に記入されているのはこの程度。だが付属に付けられている別紙には一枚の紙にひとつの土地の、その内状と条件が事細かに書かれていた。
そして、その中でどこが欲しいか教えろと言うのだ。

過去の歴史を振り返っても欲しいと思った土地は問答無用、力ずくで奪ってきた国がほとんどだ。
だが今はルナティアの影響が大きい所為か、当然のように友好的且つ平和的に過ごすことが出来ていた。
それが、一国を解体し連合国を作る。そしてどこが欲しいのか協力国に希望を出させるなど、前代未聞の事だ。
ましてやまだその国は存続しているというのに。

「おばあ様・・・素晴らしいですわ!」

クロエの一言に、自分達がおかしいのかと、周りの者達が一瞬引いた事は言うまでも無い。
思考が似ているのだろう。蛙の子は蛙とはよく言ったものだと、周りは思わず身震いをした。
「だって、戦争にしても内乱にしても、大きな被害を被るのは何の力も持たない平民ですもの。被害を最小限にする為には、速やかに次の為政者に移行しなくてはいけませんわ」
そんな周りの反応などお構いなしに、クロエは嬉々とした表情でその土地の条件を書いた紙を捲っていく。
クロエにしてみれば、ルナティアとルドルフがそうと決めたのなら、反対する理由など無いのだ。
かといって言いなりになっている訳でもない。あの国を落とすならば、先を見据えそれに対し何が起きても対処できるよう進めていかなくてはならない。
ルナティア達の提案は、それに適っているものなのだから反対する理由が無いだけなのだ。
周りはまだ国を落としていないのにと言うが、これは落としてから考えたのでは遅い。
「あの国を落とす事は、既に決まっている事です。各国共それに向けて準備しているのですから。ならば私達は、一つ先を見なくてはいけません。でしょ?」
そう言って笑うクロエの後ろにルナティアの影が見えた気がして、一同頷くしか出来ないのであった。

気を取り直し、その土地の特徴と条件を書かれた紙に目を通す。
「しかし上手い事を考えるものだな」
元宰相のグラスが唸る。
「確かに。正直うまみのある土地は少ないですが、一番手を出したくない土地にはちょうど良く鉱山がある」
現宰相アランドが感心した様に紙に目を走らせた。
「しかも貧しくてどうしようもない隣国と抱き合わせだなんて、考えたもんだぜ」
前近衛のダレンが指で紙を弾いた。
「それよりも俺は、この情報網の正確さに度肝を抜かれたよ。どれだけ探ってもここまでは掴めなかったからな」
元暗部ベレニスが悔しそうに顔を歪めた。
「まぁ、年季が違うのですから仕方ありませんよ」
現暗部のユミルが肩を窄めた。
「所で、何処に決めるにしろ、誰を国王にするんだ?」
現近衛のジャスパーが「どこも大変そうだよな」と頭を掻気ながら「為政者も決めること」という文字をなぞった。
それに反応したのは意外にもクロエだった。
「私はエドリード様を推薦しますわ!」
「え?父上を?」
イサークはもとより、周りの側近達は目を剥いた。
現在エドリード夫婦は、ルナティアに骨抜きにされている国々を回っている。
元々、フルール国の花祭で知り合った親交の深い国々を訪れたくて、うずうずしていたエドリード夫妻。
譲位した事をいい事に、諸国漫遊しているのだ。
ただ遊んでいるだけではなく、時には有力な情報をもたらしてくれる時もある。彼等の最終目的地は勿論、シェルーラ国だ。
「確かにこれだけ問題のある国を治めるとなれば、エドリード様位の実績のある方の方が良いとは思うが・・・」
果たして頷くだろうか・・・と、グラス。
「それは大丈夫ですわ」
自信ありげに答えるクロエにイサークが、「何故そう言いきれる?」と不思議そうに問う。
「簡単なことです。各国から為政者を出すという事は、シェルーラ国からはおばあ様とルドおじ様が出てくるはずです」
その言葉に一斉に皆が「あっ」と声を上げた。
「サハド国からは王弟のアンリ様が名乗りを上げるはず」
そう言って十五カ国全ての、予想される人物の名を上げていった。
名を上げられた錚々たる顔ぶれに、一同納得した様に頷いた。そして、

みんな、ルナティア様の信者ではないか・・・・と。

そんな人達が集まった連合国を想像し、一同固唾を飲んだ。
きっと宗主権を持つのは、ルナティアが治める国になる筈。
そうなれば世界最強の連合国・・・いや、連合国とは名ばかりの強国が出来上がるのは火を見るよりも明らか。

そんな未来を想像し、何故かはわからないが悪寒が走り、一同無意識に腕を擦るのだった。
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