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一家皆殺しの押込強盗に遭遇した少女の話 ──『我衣』、『街談録』より
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つやは、戸口で倒れている要蔵を見ないようにして、足早に戸口をくぐった。もし顔でも見てしまえば、さっきの盗賊達のひとかけらのためらいもない、おそろしい殺害の景色を思い出してしまうよう思えたからだった。押し殺そうとしても湧き上がってくるあの景色をきしの笑顔でかき消して、だだただきしを思って足を出した。
開け放たれた戸口に入り込こむと、下男の小源治が、捕まえてきた鳥をさばくときの匂い、さっき要蔵の横を通りすぎてきたとき鼻をついた匂いが、あたりに立ちこめているのにきづいた。ここでも、きっと血がながされたのだ。射し込む月夜の光をたよりに土間の様子が窺うと、竈の反対側、男たちが寝床をつくるあたりの地面にころがる物の影が見えた。
──どうしよう。
あの影の正体を確かめる必要があるのか、つやはいっしゅん思い悩んだ。
なんの動きもないし、呻吟する声のひつともたてない。
つやはなつと下女部屋に下がる前に、下男達が休む場所に茣蓙をならべて、そのうえで小源治が要蔵となにやら語り合って笑っていたのを思い出した。
けっきょく、近くに寄って確かめることはしなかった。その時、のぼり框のむこう、主人一家の寝室となる座敷あたりから、騒がしい音が聞こえてきたからである。
つやはとっさに竈のそばに走りより、屈んで身をふせて、あちらから姿がみえないように隠れた。男二人が、市郎兵衛一家が寝ている部屋の扉をあけようとしているところだった。
──きっしゃん、危ない。
つやは思わず叫びそうになったが、なかからの動物の唸り声のような叫び声のあまりの凄惨さに、その声は押しとどめられてしまった。だすんだすとと重みのあるものが、壁なりなにかかたいものにぶつかり合う音、耳にささる高い女の悲鳴、どすんと床に響く音が、次から次から折り重なって聞こえてきた。
──ご主人様の声だった。
最初の男の唸り声の出元は分かったが、それから聞こえてくる音や声がなんなのかよくわからない。だが、もうこれ以上、ここでみているわけにはいなかいと、つやは意を決して、襖の方に近づいて、なかをそっとのぞきこんだ。
暗闇のなかで、匂いがいつもより強く鼻腔をついた。腹の底からせり上がってくる、酸っぱいものをぐっとこらえて、息をつめて、きしの姿、声を求める。
賊とおぼしき影、抜き身を振り回しているのは一人しか見えない。めったやたらに刀をふりまわして、床に伏している影のいくつもを薙いでいる。もう一人の賊はどうしたのかと視線をめぐらせると、続きの隣間の襖も開け放たれている。あそこは、大奥様のお休みになる部屋だと、わかるとつやはいてもたってもいられなくなり、中へと足を踏み入れた。
まさにその時、動く者がいなくなって、刀を振り回すのをとめたやせた賊が、そのつやに目を止めた。
開け放たれた戸口に入り込こむと、下男の小源治が、捕まえてきた鳥をさばくときの匂い、さっき要蔵の横を通りすぎてきたとき鼻をついた匂いが、あたりに立ちこめているのにきづいた。ここでも、きっと血がながされたのだ。射し込む月夜の光をたよりに土間の様子が窺うと、竈の反対側、男たちが寝床をつくるあたりの地面にころがる物の影が見えた。
──どうしよう。
あの影の正体を確かめる必要があるのか、つやはいっしゅん思い悩んだ。
なんの動きもないし、呻吟する声のひつともたてない。
つやはなつと下女部屋に下がる前に、下男達が休む場所に茣蓙をならべて、そのうえで小源治が要蔵となにやら語り合って笑っていたのを思い出した。
けっきょく、近くに寄って確かめることはしなかった。その時、のぼり框のむこう、主人一家の寝室となる座敷あたりから、騒がしい音が聞こえてきたからである。
つやはとっさに竈のそばに走りより、屈んで身をふせて、あちらから姿がみえないように隠れた。男二人が、市郎兵衛一家が寝ている部屋の扉をあけようとしているところだった。
──きっしゃん、危ない。
つやは思わず叫びそうになったが、なかからの動物の唸り声のような叫び声のあまりの凄惨さに、その声は押しとどめられてしまった。だすんだすとと重みのあるものが、壁なりなにかかたいものにぶつかり合う音、耳にささる高い女の悲鳴、どすんと床に響く音が、次から次から折り重なって聞こえてきた。
──ご主人様の声だった。
最初の男の唸り声の出元は分かったが、それから聞こえてくる音や声がなんなのかよくわからない。だが、もうこれ以上、ここでみているわけにはいなかいと、つやは意を決して、襖の方に近づいて、なかをそっとのぞきこんだ。
暗闇のなかで、匂いがいつもより強く鼻腔をついた。腹の底からせり上がってくる、酸っぱいものをぐっとこらえて、息をつめて、きしの姿、声を求める。
賊とおぼしき影、抜き身を振り回しているのは一人しか見えない。めったやたらに刀をふりまわして、床に伏している影のいくつもを薙いでいる。もう一人の賊はどうしたのかと視線をめぐらせると、続きの隣間の襖も開け放たれている。あそこは、大奥様のお休みになる部屋だと、わかるとつやはいてもたってもいられなくなり、中へと足を踏み入れた。
まさにその時、動く者がいなくなって、刀を振り回すのをとめたやせた賊が、そのつやに目を止めた。
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